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2.リンドウの報告書

Auteur: satomi
last update Dernière mise à jour: 2025-05-11 11:47:18

う…うーん、私は確か路上で倒れて……。ん?ここはどこなの?ふかふかのベッド。天蓋付きだし。そこらに無造作に置いてある調度品もおそらく一つ一つが高級品。いったいここはどこなの?

「目覚めましたか?お嬢様。こちらはダマスス公爵家となります。私はそこの侍女のサーユと申します」

ダマスス公爵家……ひえぇーっ、私なんかが足を踏み入れるようなおうちじゃない。超名門じゃない!確か、現当主様は銀髪で緑眼。二つ名が“氷に生きる新緑の貴公子”。

早くお暇しないと…あ、私は帰る場所がないんだ。―――ここで雇ってもらえないだろうか?

「目覚めたかな?」

うわー!本物現る!!噂に違わぬ美貌!肖像画はないの?

「俺の名前はクリスデン=ダマスス。この屋敷の当主をしている」

「はい。私は…ギジマクス伯爵家の長女のリンドラ……だったんですけど……お父様から出ていけと言われ、着の身着のまま放り出されました」

「雨にさらされなくて運が良かったな。雨に当たっていたら、肺炎などにかかっていたやもしれんぞ」

ギクッと体がこわばった。のを公爵様は見逃さなかった。

「雨に当たらなかった理由でもあるのか?」

―――この人なら大丈夫!―――

「実は、私はスキルで降水量を調節できるのです」

「ほう」

「これは自然の摂理に逆らっているので、多用するべきではないと亡くなった母に言われていて、私はスキルを持っていないことにして今まで生活してきました。私のスキルを悪用しようとする輩がいるかもしれませんから」

「なぜ、俺に話したのだ?」

「何故でしょう?公爵様は私のスキルを悪用するような方ではないと思ったからです。路上で倒れている私を親切にも屋敷内に入れてくれましたから。スパイの可能性だってあったでしょう」

ボロボロの服でお腹を鳴り響かせているスパイっているのかな?

「今日のところはここまででいい。体力も落ちているだろうし、食の方はまずはお粥からだな。突然固形物をお腹に入れるのはお腹に悪いからな」

私は少しづつ体力を回復させていった。その間にどうやら公爵様はギジマクス伯爵家での私の扱いを探偵に調べさせていたみたい。

「報告書を寄越せ」

【ギジマクス伯爵家では数年前に連れ子付きでの再婚をした。それからというもの、妹のナターシャが家族に可愛がられ、姉のリンドラは虐げられていた。理由は「ナターシャはスキル持ちだから」。リンドラは自分のスキルの事は家族に言っていなかったのだろう。自分を利用しようとする輩だから。リンドラの扱いは使用人のようなもの。

一応、リンドラにも婚約者はいた。ルー侯爵家のスティール。嫡男だがツメが甘い。この間リンドラに婚約破棄を言い渡し、妹のナターシャと婚約した。最近ナターシャが妊娠しているという噂も耳にする。ナターシャのスキルは“緑化”。これも自然の摂理に逆らっているから、多用すべきではないのだが、わかっていなさそうだ。】

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