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第105話 シルフィーネ村の一大事 ~フォルトナサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-09-16 19:28:36

アグリたちがボクの家に入っていった。

ただボクは母さんのところへ行きづらくて、玄関先で待つことにした。

ボクの家なのに、なんだかなー。

ギクシャクしているのを見られたくないと言うかなんというかー。

散々愚痴を言っておいて……

そのもの自体は見られたくないんだよなー。

「まぁ、いっかー。

 母さんとの話が終わったら、アグリたちも出てくるはずだしー」

誰も聞いていないのはわかりつつ、声に出して言ってみた。

誰も居ないので当然なんの反応もない。

自分で声に出しておいて、ちょっと虚しさがこみ上げてきた。

母さんのことや村のことをいろいろ考えながら……

玄関先で座って、みんなが出てくるのを待っていた。

そんな時……

――ボンッ

村の中心地から大きな爆発音が聞こえた。

ボクは立ち上がって爆発音がしたところを見た。

いくつかの煙が立ち上がっているのが確認できた。

「なんだなんだー

 なんかあったのかなー」

いつもならカルムさんたちに何が起きているのか確認していたのに……

その前に、音がした方へ走り出していた。

尋常じゃない事態を感じたのもあるけど、身体が勝手に動いていた。

村の中心地に近づくにつれ、慌てて逃げる人が増えていった。

「キャーーーー」

「魔物がーー

 魔物がーー」

現場にいた人たちだろうか。

悲鳴を上げて、村の中心地から離れていく。

ボクはその人波をかき分けながら、村の中心地に向かっていった。

「グガガガガーー」

「そうだ、もっと暴れろ!

 こんなところなんて壊してしまえ!」

村の中心地に近くなると、そこから魔物の雄たけびと誰かの叫び声が聞こえてきた。

急いでその声が聞こえる場所に行くとそこには1匹のマーナガルムと男が立っていた。

「誰だー、お前はー。

 ここで何してるんだー」

ボクはその男に大きな声で問いただした。

男はボクの方を向いて

「何をしようとお前には関係ない。

 もう何もかも消えてなくなればいい。

 俺もお前たちもだ!」

錯乱している男は、虚ろな目をしながら大声で叫んだ。

それに呼応して

「ガルルルルゥ……」

マーナガルムも低い唸り声を響かせる。

「ここはボクの……ボクたちの村だ。

 ボクたち村で勝手なことは許さないんだからー」

ボクは携帯している小刀を抜くと、その男を取り押さえようと走り始めた。

だけど、その男の前にマーナガルムが立ちふさがった。

「そ
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