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第490話

Penulis:
洵にバレるのは、家に遊びに来た時だろうと思っていたのに、まさか結衣の家の前で会うなんて。しかも、さっき洵が言ったこと、家の前で起きたんだから結衣も聞いていたに違いない。だから、ここで洵に弁解するわけにもいかない。とにかくその場を離れよう。

あとで結衣が何か勘ぐるかどうかは、隼人に任せればいいのだ。

ただ、今のところ、結衣は何も気づいていないようだ。

月子はこんなにうまくいくとは思ってもみなかった。結衣の鋭い目をごまかせるなんて。

同棲しているという事実は、確かに説得力がある。ただ、結衣と面と向かうのもある種の試練でその結果が良好だったから、月子もこのまま恋人の振りを続けられたのだ。

それに、結衣がいる時だけ隼人と恋人同士のフリをすればいい。結衣がいなくなったら、普通のルームメイトに戻ればいいだけの話なのだ。

だから、月子は洵にはどう説明しようかずっと考えていた。彩乃には話しても、洵には内緒にしておこうと決めたんだ。

しかし月子も洵がここまで隼人を嫌っているとは思わなかった。そんな彼にもし恋人の振りをしているなんて教えたら、今すぐにでも家に乗り込まれて隼人の荷物を全部外に放り出しそうだ。

そう考えると、洵をひっぱたきたくなるくらい腹が立つけど、なぜそんなに不安がっているのかも気がかりなのだ。

……

千里エンターテインメント。

月子は洵を連れて社長室へ向かった。

通りすがりに、明日香が「綾辻社長」と声をかけた後、洵に気づいた。契約する予定のタレントかしら、と思った。確かにスター性のある顔立ちだし、ただ、顔色が悪くて近寄りがたい雰囲気だった。

そう考えていると月子は彼女にコーヒーを淹れてきてくれるように頼んだ。

そして、月子は洵を連れて社長室に入った。

鞄を机の上に置くと、月子は応接用のソファに座った。一方で洵は何も言われなくても、自然と彼女の向かいに座った。

洵はずっと我慢していたようで、月子を睨みつけながら言った。「さあ、話してみろよ!」

「コーヒーが来るのを待ってから」

「お前は……」

「いいから。とりあえず、会社を見て回ってきたら?」と月子は言った。

こんなことがなければ、洵の性格からして、新しい会社に来たからには隅々まで見て回っただろう。だけど、今の彼はとてもそんな気分になれなかった。

それを見て、月子はまずこう言って慰
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