両親の再婚で義理の兄妹になった二人、しかし義妹は父の愛人で、それを知る義母は義妹を寝取ってほしいと言ってくる しかし、性の経験のない主人公にはそれは難しい。義母は主人公にセックスレッスンを始めることになる
View More――お願い、蒼君。茉莉を、直人さんから寝とってほしいの。
芹香さんはそう言った。
――寝取る。ネトリ。NTR。
「それは倫理に反する行為ではないとあたしは思うわ」
と芹香さんは言う。
「これは非難することはできない。純粋な愛、純愛だと思うわ。だけどそれを、好ましいと思っていない人間もいるわ。あたしと、蒼君。そしてその二人が手を取り合ってその愛を勝ち取ることも誰からも非難されるようなことじゃない。それもまた純愛よ。
要するに茉莉がこの世で誰よりも好きな人が蒼君になればいい事なの。
すべては倫理に反しない、純粋な愛の結末」
――純粋な愛。純愛。
そうだ。それこそが純愛なのだ。愛する人がいて、その人を振り向かせるための努力をする過程。それもまた純愛。
「俺に、できますかね」
そんな言葉の裏には、当然君ならできるというような励ましの言葉を期待していたし、当然もらえると思っていた。だけど……
「たぶん、今の蒼君には無理ね」
芹香さんは厳しい言葉を言い放つ。
「あ、ええっと」
「じゃああえて聞くわね。蒼君は直人君に何だったら勝てるの? 包容力だって経済力だって足元にも及ばないわ。強いて言えば若さかしらね。でも若さっていうのは強みかな? 経験の低さを物語っているだけじゃないの? それに茉莉はそれなりに経験を積んでいるわ。蒼君はどうかしら? 茉莉を寝取ろうとしたところで、蒼君のテクニックで満足できるかしら? ふふふ、厳しいことを言ってごめんなさいんね。でも、寝取るということはそういうことなのよ。蒼君、そういう経験はあるの?」
立て続けに浴びせられる辛辣な言葉に心はすでに折れそうになっていた。俺に勝てる要素なんてない。それに俺は童貞だ。壁に耳をあてて遠くの茉莉の声に一人自慰をすることが関の山の情けない人間だ。
「俺には……」
自信を無くしかけてうつむく俺を芹香さんは優しく抱きしめてくれた。
「だいじょうぶよ。だいじょうぶ。誰だって初めから上手にできるわけじゃないわ。安心して、あたしがちゃんと教えてあげるから」
言っている意味が解らなかった。いや、それは嘘だ。言っている意味が解らないことにした。わからないから、不可抗力としてそうなってしまったのだと自分自身に言い訳をするためだ。俺の頭の中を占めているちんこがそうささやいたのだ。
だから俺は、自分のパンツの中に滑り込んでくる芹香さんの手を振り払おうとはしなかった。『騙された』『そんなつもりはなかった』を言い訳にできるようにあえて遠くを見つめ、されるがままにその手を受け入れた。
芹香さんは下着の中で俺のものを握り軽く上下に動かす。ものの数分もしないうちに我慢の限界を迎えた俺は下着の中に、芹香さんの手の上に精液を勢いよく放出してしまった。
「あらあら、さすがにこんなじゃあ、茉莉を満足させてあげることはできないわよ」
「す、すいません……」
「いいのよ。誰だって初めからうまくできるわけじゃないんだから」
芹香さんは俺をベッドの上に押し倒し、精液でべとべとになってしまった下着をずり降ろした。そして枕元のティッシュを数枚抜き取り俺の下半身を拭いた。それは恥ずかしいことではあったものの、どこか安らぎを感じるものでもあった。言い訳をするのであれば、それは母親の愛情だったと言っていい。俺の記憶に母親はほとんど残っておらず、想像上の優しい母親というものはきっとこうであったのではないかと解釈することにした。その安らぎの中で、射精を終えたばかりの俺の下半身は再び反応を起こした。
芹香さんは、それをやさしく口に含む。ベッドの上で頭を上下に動かしながら、芹香さんは器用に衣服を一枚ずつ脱いでいった。すべての衣服を脱ぎ終わるころに俺は一度芹香さんの口の中に射精し、芹香さんはそれをティッシュの中に出した。
そうするとまた何事もなかったように芹香さんは口に含む。そして俺もまた、何事もなかったように反応を起こす。
「これくらいやってちょうどいいくらいかもね。でも、さすがにすごいわ。若さ、というものはそれなりに武器にもなるものよ」
こんなところで終わるはずがない。それを理解している俺は自分だけがまだ着ている上半身の衣服を全部自分の意志で脱ぐ。俺の頭の中は、完全にちんこに支配されてしまっていた。
何が正しいのか。何が間違っているのか。
誰を愛しているのか。誰を憎んでいるのか。
そんなことはどうでもよかった。
俺の頭の中を占めているその物質がもっと先を、もっと先をと求めている。
ただ一つ言えることは、これはすべて愛する茉莉を手に入れるための努力の過程なのであり、それは純粋な愛。純愛に他ならないのだ。
芹香さんが俺を根元まですっぽりと飲み込み、なされるがままに成した。
それが良かったとか、悪かったとか、気持ちよかったとかそうでもなかったとか、そんなことは大した問題などではなく。脳みそが支配するままにそれはなされたに過ぎない。
「ねえ、それって浮気なんじゃないの?」「ちがうよ。これはひとつの生理現象みたいなものだから」 美和の言葉を必死で否定する。 学校の昼休み。渡り廊下の影で美和と同じ弁当を並べて食事をする。茉莉が学校に行かなくなってからは美和と二人で昼食をとるようになった。以前は俺と茉莉が同じ弁当であることを見抜き、二人の関係を疑った美和が、今では俺と同じ弁当を並べて食べているというのだから数奇なものだ。 無論二人は恋人でもなければ、将来的にそうなる可能性もない。美和は俺の妻の親友だし、今となっては俺の家族であると言っても過言ではない。 弁当を食べながら、昨晩見つけた面白い動画を保存しておいたものを美和に見せている時に、つい間違えて別に保存しておいたえっちな動画を開いてしまったのだ。 それを美和は、浮気だと言ってくる。「だって蒼は茉莉じゃない女の裸を見て、エッチなことをしているってことなんでしょ?」「いや、男にとってそれは生理現象みたいなものだから、定期的に抜いておかなきゃいけないんだよ。茉莉とセックスするわけにもいかないだろ?」「それはわかってるわよ。でもさ、それなら茉莉の裸を写真にとって、それで処理すればいいでしょ。なんでほかの女でしちゃうかな」「いや、だってそれは罪悪感にさいなまれるだろ。その、茉莉をそういうことには使いたくないんだよ」「そういうことって?」「つまり、性の処理っていうか……恋愛感情の伴わない性欲のはけ口に好きな人を使いたくはないんだよ」「その考え方は理解できないなあ。アタシだったら、恋人がエッチな妄想するなら、自分をオカズにしてほしいと思うんだけどな」「茉莉も、そうなのかな?」「さあ、それはどうだろ?直接本人に聞いてみれば?」「聞けるわけないだろそんなこと」「まーそーだよねー」 美和はつぶやきながらウインナーにかじりつく。黙って咀嚼しながら、思いついたように言う。「じゃあ、アタシをオカズにする?」 思わずむせ返り、慌ててお茶を流し込む。「それこそ罪悪感がヒドイだろ。できるわけがない」「なんでよ。その理屈じゃ、アタシのことが好きみたいになるでしょ?」 正直なことを言えば、美和をオカズにしたことは今まで何度だってある。美和ははっきり言って可愛いし、だからと言って恋愛感情を向けている相手ではないから気兼ねなくオカズにできる
俺がベッドに入ったのは深夜をずいぶんすぎてからだ。 俺と茉莉は同じ部屋の同じベッドで寝ている。 ずっと寝ていたという茉莉も、体調がすぐれずにいたために眠っていたのだから、俺がベッドに入る時に一緒に布団に入った。隣りに眠っている茉莉の体温が、吐息が、時折少しだけ触れる肌が、俺の心を落ち着けてくれない。 妊娠初期にセックスができないというわけではないらしい。だが、もちろんそれなりに負担もかかることは事実だ。当然茉莉だって妊娠の経験なんて初めてだろうし、不安もあるだろう。だから、どちらから言うわけでもなく、互いにセックスはしないという取り決めが交わされていると言っていい状況だ。 ネットを調べてみる限りでは、女性の体は妊娠中にはセックスをしたいと思う気持ちは少なくなる。あるいはまったくと言っていいほどなくなるらしい。 だが、男である俺として、それは関係のないことだ。 いや、そもそも、茉莉のおなかの中にいる子供は俺の子供ではない。 マウスの実験では、オスのマウスは子育てをしているメスのマウスを見つけると、子供のマウスを殺してしまうという。それはどうやら、子育て中のメスのマウスは、目の前にオスのマウスがいても発情しないからだという。 人間のオスにも、この感情が全く働いていないわけではないと思う。義理の父が、子を虐待するという事件は極めて多く、そのことを考えれば自分だってその可能性がないわけではないとは言い切れない。だが、そんなはずではないとは思いたいが、いったい俺は何を考えているのだろうと頭の中を振り払う。 いや、振り払わなかったほうがよかったのかもしれない。 振り払ったことで、今度はさっき見た美和の裸を思い出し、頭から離れない。 そうだ。たぶん自分は溜まっているんだと思う。 こんなつまらないことで頭の中が猥雑な思考に占領されてしまうというのだから男と言う生き物は実にくだらない。 所詮俺の脳みそはちんこでできているようなものなのだ。 いくらきれいごとを並べても、自然と頭の中はそれに支配され、理性を失い、支配されてしまう。 ――なんだったらアタシがヌいてあげようか? 美和の言葉が頭の中を駆け巡る。 情けない。 いつの間にか俺の下半身が充血している。 気が気でいられない。 茉莉の寝息を聞きながら、そっとベッドを立ちあがる。 いったんトイレに行って、ヌくものを抜ヌなければな
「ごめん、今日つわりひどくて……」 いつもはみなの朝食を作り、弁当までを持たせる茉莉が体調不良を理由にベッドから起きてこなかった。「いいよ、気にしなくて。アタシに任せてよ」 美和の言葉に「たすかる」とだけ言い残し、もう一度毛布をかぶった茉莉を部屋に残し、朝食と弁当の準備をする美和の手伝いをすると申し出た。 元々は家で料理をしていたのだし、アルバイトで飲食店で働いたことだってある。足手まといになるとまではいかないだろう。 美和に対しては感謝の気持ちと申し訳なさから手伝うと言ったのだが、「そう言うセリフはさ、普段茉莉が家事をしている時に言うもんだよ。健康なアタシになんて気を遣わなくていいんだからさ、気を遣うなら、つわりと戦いながらも家事をこなしてくれているいつもの茉莉に気を遣いなよ」 確かに美和の言うとおりだった。茉莉は妹として家にいた時からずっと家事をしていて、そのスキルだって自分よりも高い。アルバイトをしている自分に対してしていないけれど、お小遣いをもらうからという理由で茉莉が家事全般をこなしていたことを受け入れていたのだが、今となってはその理由は全く関係ない。にもかかわらず、かつての生活の慣れで、つわりを押し殺してまで家事をこなしてくれていたというのに、感謝をするどころか手伝うとも言わなかった自分に情けなさを感じた。 とはいえ、今手伝うと言い出した美和の手伝いをしないという選択肢はない。茉莉の手伝い(いや、手伝いというのもおこがましいのかもしれない。自分の食べる朝食に、自分の食べる弁当の準備だ)をしながら、朝の準備をすませる。家を出る直前に起きてきた碧さんに、朝食と弁当を渡し、美和と二人で家を出て、学校へと向かう。「中西はまだ休んでいるのか? 体調、そんなに悪いのか?」 山岸の質問に「うん、ちょっと風邪をこじらせているだけだよ。もうじきよくなると思う」 とだけ返事をする。 本当のことを言うのはまだまだ先伸ばしするべきだろうとは思う。いや、いっそのこと本当のことを言う必要なんてあるのかどうかもわからないけれど、ともかく今はまだ、そんなあやふやな状態ですませている。「アオ、お昼いこーよ」 と美和がやって来る。「なんで、中西が休みだからって、いつもお前が一緒に飯を食うんだよ」 という山岸の疑問はもっともだ。「これは茉莉からの言いつけなの、茉莉が休みの間にアオが誰かと
「碧さん、これからしばらくパパの部屋使わせてもらうから。客室として。いいでしょ?」 そう言いながら義娘の斎藤美和が言った。 訳ありの友人をしばらくこの家に住まわせるそうだ。「住まわせてもらっている身のアタシがとやかく言うことじゃないわ」 その言葉を聞いて美和は友人を孝之の部屋へと通した。 斎藤孝之はアタシの二番目の夫だ。孝之はアタシと同じで離婚歴がある。美和は前妻の娘で、二年前に孝之が亡くなった際にその遺産のすべてを相続した。後妻であるアタシに一円の財産も残さなかったことに不満はない。きっと孝之は妻という存在を信用していないのだ。つまなんて言うものは所詮血のつながっていない赤の他人で死かなと考えているのだろう。 だから遺言書には前妻にも一円たりとも残すことなくすべてを美和に託した。 前妻は一度遺産を分けろと怒鳴り込んできたこともあったが、それは美和が追い返した。「今更どの面下げて帰ってきたんだ」と激しく罵声を浴びせた。 だけど美和は居場所をなくし、路頭に迷うはずだったアタシをこの家にずっと住んでいいと言ってくれた。アタシは家事もろくにできないダメな妻で、美和にすればここに置いておくメリットなんてないはずだ。 それなのに、血のつながった実の母を追い返し、血のつながっていないアタシにここにいることを許したのは、どういう考えなのだろうかと思うことはある。もしかすると実の母に対して、アタシをここに置いておくことがひとつの見せしめなんじゃないかと思うこともある。 まあ、そんなことはどうでもいい。アタシとしてはここにおいてもらえているというだけで美和には感謝しているくらいだ。 美和の連れてきた友人、中西茉莉。どうやら彼女は妊娠しているらしい。一緒にやってきた男がその子の父親なのだろう。 中西茉莉という子はなかなかにいい子のようだ。料理もうまいし美人でもある。 その子をはらませてしまたという男の子、彼らの話を聞いて息が止まりそうになった。 その男の子の名前は『折田蒼』というらしい。 とても偶然だとは思えない。 今から約二十年前、アタシの一度目の結婚は社内恋愛でそのまま結婚し、子供を産んだけれど、どうにも家事や育児と言ったものに向いていない性格らしく、育児ノイローゼにかかってしまい、生まれて間もない子供を置き去りにして離婚した。それからもう十五年間、一度も会っていない。 そ
バイトを終えて家に帰り、茉莉と手紙のことについて話し合った。 芹香さんが俺にあてた手紙の中で、俺と芹香さんの関係について触れていなかったことは意図的だろう。おかげで手紙と通帳をそのまま渡すことができた。そしてこのとは、今の家主となっている美和にも相談しないわけにはいかないだろう。 リビングの隅には美和の義母でもある碧さんがいたが、話はそのまま進めることにした。 同居人となっている碧さんにも話を聞く権利があるし、聞いておいてほしい話でもある。「つまり、お金の心配はないから早々にここを出て行く、ということなの?」「なるべく迷惑をかけるわけにはいかないから、早いうちにそうするべきだとは思っているんだ。だけど、高校生の俺たちの名義でアパートを貸してくれるところはなかなかないだろうから、すぐにはむつかしいと思う」「あのさ、そりゃあふたりが新婚生活をイチャイチャしたくて二人きりになりたいという気持ちはわかるよ」「いや、別にそういうわけでは」「ごめん。それはちょっとした厭味なんだけどね。でも、あたしとしては、できることならもうしばらくは、いや、ずっとでもいいからここで一緒に住んでもらったほうが嬉しいとは思うのね。前にもいったけど、あたしは一応天涯孤独で寂しい立場でもあるんだ」 奥の方で話を聞いていた碧さんが口を挟む。「ちょっとおばさんに口出しさせてもらうよ」 そう言いながらカウンター席を立ちあがり同じダイニングのテーブルにつく。「まあ、そんなに急いでここを出て行く必要はないんじゃないかなってアタシも思うよ。まだ学校に通うならいろいろとやることも多いだろうしさ。それに何よりまつりちゃん、だっけ? 子供育てたことないでしょ? 案外大変なのよそれがさ。助けてくれる人は一人でも多い方がいいわけ。だからさ、少なくとも子供が生まれて、落ち着くまではここにいてもいいんじゃないかな」 たしかにそういわれれば一理あるように思える。そしてその言葉に美和が反応した。「あれ、そういえば碧さんって子供育てたことあるの?」「子供なら生んだことあるよ。でも、子育てはしていないかな。あまりにも過酷すぎてね、アタシは投げ出しちゃったんだよ。まつりちゃんにはそうはなってほしくないからね」「はっはーん。ちょっとわかったかも」「なにが解って言うのよ、美和ちん」「よ―するにあれでしょ。碧さんは子育てがしてみたいんじ
香ばしい匂いに目を覚ました。隣を見ると茉莉はいない。日曜の朝だからと言って少々眠りすぎてしまった。眠い目をこすりながらリビングのほうへ移動すると。美和と茉莉がキッチンのところにいた。茉莉はテンション高めに俺に手を振ってこっちへ来るように呼んでいた。 そこには何やら茶色い大きな物体があった。香ばしい匂いの正体はこれだったのか。「ねえねえ、見てよ蒼。美和んちさあホームベーカリーがあるんだよ」「昔ね、一時期そういうのにはまった時期があったんだけど、それからしばらくずっとしまいこんでいたんだ。また使ってくれることになってこいつも喜んでいるよ」 美和はそう言いながら白くて角ばった保無ベーカリーの天蓋をなでる。「なんか、ペットをなでているみたいだな」 俺がふとつぶやいた。「やめてくれよ。それじゃああたしがずっと長い間ペットをほったらかしにしていた悪い飼い主みたいじゃないか」「いやごめん、そういう意味で言ったんじゃなくて、なんか、かわいいなって」「か、かわ……」 俺としては決して変なつもりで言ったのではないが、美和は思いのほか照れてしまった。そしてそれを見た茉莉が、「あー、蒼君、今の発言は浮気だよー」と冗談めかして言う。こういうの、悪くないなと思ってしまった。 茉莉が焼きあがった食パンを手で割いていく。真っ白でふわふわとした生地が湯気を上げる。食べる前からそれがおいしいということがわかる。 つい先日に人生の修羅場のような窮地を経験したばかりなのに、美和のうちに来た途端に打って変わってほほえましい状況が続く。たぶんこれからの生活は大変なものになるだろうけれど、きっと幸福に違いないと思えた。「なあに、蒼。さっきからにやにやして」「いや、なんかさ。こういうの新婚生活みたいでいいなって」「えへへ」「ちょっと、あたしがいること忘れないでよ。なにいちゃついてんだか」「なあに、美和。妬いちゃってるの? 何なら美和を第二婦人にしてあげてもいいのよ。やったね、蒼。ハーレムだよ」「おい、なに勝手なこと言っているんだ」 朝食から談笑が絶えない朝だった。 しかし、楽しんでばかりはいられない。親の庇護から逃げ出した俺たちには、現実が突き付けられるのだ。 朝食を終えると、アルバイトへと向かう。 おそらくこれからはアルバイトの量を増やし、生活を支えて行かないといけないだろう。高校も、中退するしかないとい
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