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第606話

Author: 雪吹(ふぶき)ルリ
茜は赤い唇を吊り上げ、勝者の笑みを浮かべた。

迅と茜は再び牧師の前に立ち、牧師が改めて尋ねた。「古川迅さん、あなたは桜井茜さんを妻として迎えますか?貧しくても、裕福でも、健康でも、病気でも、永遠に共に歩んでいくことを誓いますか?」

迅は牧師を見つめながら答えた。「はい、誓います」

誓います、と、迅は言った。

その言葉が佳子の耳元で炸裂し、彼女の頭の中は真っ白になった。

逸人「見ただろ?古川は本当に桜井と結婚したんだ。彼は君のことなんて好きじゃなかった。君がずっと一人で勘違いして、一方的に追いかけてただけなんだよ!」

佳子の涙が止めどなく溢れ落ちた。中では牧師は宣言していた。「儀式は終了しました。これより、古川迅さんと桜井茜さんが正式に夫婦であることを宣言します。では、指輪の交換を」

フラワーガールがダイヤの指輪を運んできて、茜はその指輪をゆっくりと迅の指にはめた。

迅も同じように、指輪を茜の指にはめた。

正隆が率先して拍手し、周囲も一斉に祝福の声を上げた。「お似合いの夫婦だ!ご結婚おめでとう!」

「すぐに子宝に恵まれるように!」

今日が人生で最も幸せな日だと感じた茜は、手を伸ばし、迅を抱きしめた。

外にいた佳子は、中で抱き合う二人の姿を見つめ、心が粉々に砕けた。そしてゆっくりと背を向け、その場を離れた。

佳子は、去った。

逸人がすぐに佳子の後を追いながら言った。「これでもう諦めがついただろ?古川はもう既婚者なんだ。もう関わるのはやめろよ!

俺は確かに堀田舞と付き合ってた。でも今は目が覚めたんだ。君と古川は終わったんだし、これからは俺と一緒にいよう。絶対に君を幸せにするから」

その瞬間、佳子の視界が真っ暗になり、彼女はそのまま倒れ込んだ。

逸人はすぐに彼女を抱きかかえた。「佳子!佳子、大丈夫か!」

一方その頃、迅と茜は式を終えて降壇していた。正隆は上機嫌で言った。「これで君は俺の婿だ。これからは茜としっかり家庭を築けよ」

迅は胸の痛みを堪えながらうなずいた。「はい、ボス……分かりました」

茜が笑いながら口を挟んだ。「迅、まだボスなんて呼んでるの?もうお父さんって呼ばなきゃ」

迅はそれに従って口を改めた。「……お父さん」

正隆は満足げにうなずいた。「うむ、いいだろう」

迅は続けた。「お父さん、そろそろ鬼爺に会わせてもらえない
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