夫が奨学生に200万円を送金してバッグを購入する

私は道端に崩れるように座り込んで、頭がブンブンと鳴り響き、何も考えられなかった。

普段はまったく友達の投稿をチェックしないけど、今日森安正輝からの振込の備考を見て、特に確認しないと見なかった。

まさか、待っていたのはこんなに惨めな光景だったとは。

板谷雪は8年前、森安正輝が提案して支援した大学生だった。当時、私は意外な流産を経験し、森安正輝は私に功徳を積み、赤ちゃんのために祈福するという名目で支援をしていた。

ずっと私は、自分が十分でないから赤ちゃんが去ってしまったのだと思っていた。

これが心の傷となり、今でも子供を授かることができないでいる。

板谷雪のラインのプロフィール写真を見ると、それが私と全く同じであることに気づいた。森安正輝はおそらく間違えたのだろう。

深く息を吸って、彼女の最新の投稿にコメントを書いた。【そんなに愛してるなら、早く結婚したら？】

わずか30秒も経たないうちに、森安正輝からビデオ通話がかかってきた。不機嫌そうな顔で、開口一番怒鳴りつけられた。「森安悦子、お前マジでどうかしてるんじゃないか？！何を騒いでるんだ？！」

「今日は俺の誕生日で、雪ちゃんが前もってプレゼントをくれたんだ。俺はお返しをしただけだ、それが何だっていうんだ？！」

ビデオに映る自分を見つめる。まだ30歳にもなっていないはずなのに、すでに老け込んでしまっていて、確かに笑ってしまうほどだ。

少し間を置いてから尋ねた。「あなたの誕生日には、私だって仕事を休んで誕生日の食事を用意したじゃない？」

彼は苛立たしげに眉をひそめた。「たった六千円の料理？それも食材代を俺に頼んできたくせに、それが俺のためだとでも言うのかよ？！」

私は自嘲気味に笑った。

結婚して十年、彼はいつも会社の経営が厳しい、昇進できない、住宅ローンや車のローンが重い、お金がないと言っていた。

だから私は普段、仕事が終わって家に帰ってからも、夜更かししてネット小説を執筆する副業をしていて、毎月の給料のほとんどを彼に渡していた。

私にお金がないのは、この家のためじゃないの？

でも彼は……

今日はあっさりと私に二百万円を送金してきた。

バカでもわかる。この何年もの間、彼はずっと私を騙していたのだろう。

本当に自分を貧しくしていたのは、私自身だけだった。

私が黙っているのを見ると、森安正輝は声のトーンを少し和らげ、どこか適当な口調で言った。「悦子、もういいよ。お前も俺のためを思ってやったんだってわかってるからさ」

「今日は外で食べよう。雪ちゃんも呼ぶから、お前も直接彼女に謝ってくれ」

「食材は買わなくていい。その二百万円、俺に返してくれ」

私は深く息を吸い、目の奥の熱さをぐっと堪えた。

彼を信じる？無理だ。

感情を整え、喉を詰まらせながら尋ねた。「その二百万、板谷雪のバッグを買うために送ったんでしょ？」

彼は一瞬黙り込んだあと、軽薄で無関心な口調で言った。「彼女に送ったのは、単にインスタの投稿でキャラを立てるためだよ。雪ちゃんは最近ブロガー活動してて注目を集める必要があるんだ。お前にはわからないだろうから、言わなかっただけだ」

「彼女が受け取ったら、すぐに返してくれるから」

「それに、このお金は俺のものじゃない」

そう聞くと、何かおかしいと思い、わざとビデオの画面を切り、マイクを遠ざけた。「聞こえない、ちょっと待って」

そう言いながら、私は録音機能をオンにし、その後でビデオを再びつけた。「さっきは電波が悪かったんだけど、何て言ったの？」

彼はすぐに続けて言った。「金は俺のものじゃない。お前も知ってるだろ、俺には金がないって。これは会社の金だ。使ったら返さなきゃいけないんだよ。お前だって俺が刑務所に行くのは嫌だろ？！」

私は思わず笑ってしまった。その笑いには苦味が混じっていた。「つまり、横領したってこと？板谷雪に見栄を張るためだけに？」

電話の向こうは沈黙したまま、しばらくしてから聞こえてきたのは脅しだけだった。「森安悦子、俺は今日中に金を返せって言ってるんだ。返さなかったら、離婚だ！」