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第1403話
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夫の元カノが帰国！妊娠隠して離婚を決意した私 第1411話
西也が出かけるときは、いつも大勢のボディガードを連れていた。どこかで誰かに命を狙われるのではと、常に警戒している。ここは西也にとって「とても安全な場所」のはずなのに、まったく安心できないのだ。山のふもとには護衛の部隊が、山の頂上にはヘリコプターがパトロールしている。西也はナナを腕に抱え、もう一方の手で若子を引き連れ、山のふもとに立った。「さあ、これから家族三人で山登りだ」見上げると長い階段が続いている。この山は本来階段などなかったが、西也が資金を出して階段を作らせた。「若子、ナナ、行こう。三人で始めよう」「ナナ、君が先頭だ。ママは真ん中、パパが最後から二人を守るよ」そう言いながらナナを軽く前に押した。ナナはうれしそうに階段を上り始めた。若子は仕方なくその後についていく。西也は最後尾。三人で二十分ほど登ったところで、若子はもう疲れてしまい、額の汗をぬぐった。ナナも疲れてしまい、その場に座り込んで、そっとママの手を引いた。「ママ、疲れてない？」本当はナナのほうがもう限界なのだが、パパには言えず、まずママにこっそり聞く。ナナはとても賢い。若子は、顔を真っ赤にして息を切らしているナナを見て、西也に言った。「私、もう少し休みたい」「いいよ」西也は階段に腰を下ろした。「じゃあ、少し休もう」バッグから水のボトルを取り出し、若子に渡す。若子は受け取って一口飲み、すぐに横にいるナナのことを思い出し、ボトルを差し出した。ナナは両手でボトルを抱え、ゴクゴクと何口も水を飲んだ。若子は慌ててボトルを引き上げて、「飲みすぎると後で苦しくなるよ」とやさしく注意した。ナナは素直にうなずいた。ナナの目はあまりにも澄んでいて、きらきらと光っていた。まるで光そのもの。こんな純粋な天使みたいな子どもに、若子が情を持たないはずがなかった。ただ、この子の登場自体が間違いだった。西也が無理やりこの子を「家族」に引き入れてしまった。もしかしたら、ナナ自身は今を地獄と思っていないかもしれないが、やがて大きくなったとき、この家庭の異常さに気づくだろう。西也は黙って、母娘の様子を見ていた。それから若子の肩をそっと抱いた。「そのうち、もっと仲良くなれるさ」若子は水のボトルを階段に置き、膝を抱えて足元の階段を見つめた
夫の元カノが帰国！妊娠隠して離婚を決意した私 第1410話
ナナは、ママが元気ないのを見て、パパの言葉を思い出した。ママを元気づけるように、と言われていたから、思い切って尋ねてみたのだった。 若子はナナの言葉に少し戸惑い、五歳の子どもにも自分が元気ないことが伝わっていると知って、しばらく何も言えなかった。 そして本を閉じて、「別に元気がないわけじゃないの。ただ、私はもともとあまり笑わないだけ。ナナは自分で遊んできて。ママは少し本を読むから」と静かに言った。 どうしても、この子を娘として受け入れることはできなかった。それが実の子かどうかという問題ではなく、西也が一方的に押しつけてきたものだったからだ。 若子はもう一度本を開いて読もうとしたが、一文字も頭に入ってこなかった。 ナナは素直にソファから降りたが、少し寂しそうだった。「ママ、私のこと、嫌い？」 若子は驚いて、「どうしてそう思うの？」 「だって、ママは私のこと嫌いみたい。あんまり話してくれないし、抱っこもしてくれないから」 若子は静かにため息をついた。「ナナ、ママはナナのこと嫌いじゃないよ」 嫌っているのも、憎んでいるのも、西也だけで、この子には何の罪もない。 「パパが、ママを元気づけてあげなさいって言ったの。でも、ママが全然元気なくて......もしかして、私のせいでママが元気ないのかなって思ったの」 「違うよ、ナナ。ナナは悪くない。自分を責めちゃダメ。それは全部、ママとパパの大人の問題だから」 できるだけやさしく、若子はナナに語りかけた。この子にまで西也への憎しみをぶつけるつもりはなかった。 本当は、この子の本当の親がどこにいるのか、若子にはわからない。 西也は「孤児」だと言っていたが、もしかしたら本当の親はすでにこの世にいないのかもしれない。 この子がこんなに臆病なのも、きっと何かつらい思いをしてきたからだろう。 「ママ、パパはね、ママとすごく仲良しで、毎日ママの首に小さい赤いのをつけてあげてるって。そうすると、ママが元気になるって言ってたけど......本当？」 あどけないナナは、悪気もなくそう聞いてきた。 若子は、西也がどんなことまでこの子に話しているのか、想像もつかなかった。あの男は本当に恥知らずだ。 「ナナ、もう遊んできて。ママはちょっと一人になりたいの」 「うん、わかった」ナナ
夫の元カノが帰国！妊娠隠して離婚を決意した私 第1409話
突然、五歳の娘ができた―若子には何も言うことがなかった。 これはすべて西也が決めたこと。若子に「母性」なんて芽生えるはずもなかった。 女の子は可愛らしく、何の罪もないが、それでも本当のママのようにこの子を抱きしめることはできなかった。 「この子の本当の両親は？」 西也の残酷さを思えば、この子の親がどうなったのか心配でならなかった。 「若子、この子は孤児だ。俺がちゃんと選んだ。これからは俺たちが彼女の両親だ」 西也は立ち上がり、ナナを抱き上げた。「見てみろ、三人家族っていいものだろ？お前が慣れてきたら、もう一人、いや、もっと子どもを養子にしてもいいぞ」 ナナはまるで壊れた人形のように怯え、周囲に不安げなまなざしを向けていた。大人を怒らせまいと、どこまでも小さくなっていた。 あまりにもおとなしいその姿は、若子の胸を締めつけた。ただ、この子は来る場所を間違えたのだ。 「若子、どうして黙ってるんだ？」 「......少し疲れたから、部屋に戻るわ」 今や若子は完全な操り人形、生気のない抜け殻のようだった。そのまま家の中に入っていった。 西也は止めようとせず、抱きかかえたナナに言った。「ナナ、これからこの人が君のママになる。お利口にして、ママを楽しませるんだよ。わかった？」 ナナはおとなしくうなずいた。 「本当にいい子だ。ナナ、パパって呼んでみて」 「......パパ」 「そう、俺のかわいい娘だ」 西也はナナの頭をやさしく撫で、頬にキスをした。「パパもママも、ずっとナナを大切にする。ここがナナの家だよ」 西也のその態度は、本当のパパのように愛情に満ちていた。彼の本当の姿を知らない人なら、きっと彼を優しいパパ、善良な男だと信じてしまうだろう。 さらに数日が過ぎた。 ナナは徐々に周りの環境に慣れていったが、ママがまったく楽しそうにしていないことに気づいた。 ナナは、ママが笑っているのを見たことがなかった。 ときどきパパがママに近づけと命じるが、そのたびにナナは怖くてできなかった。 ママは自分のことが好きじゃないのかもしれない―そう思っていた。 夜になると、ナナはなかなか眠れず、廊下を歩くことがあった。 両親の部屋の前を通ると、中からときどき奇妙な音が聞こえた。 ママの叫び声や泣き
夫の元カノが帰国！妊娠隠して離婚を決意した私 第1408話
修はメールアドレスを徹底的に調査したが、そのアドレスには高度な暗号化技術が使われていて、突破は困難だった。 あらゆる手段を使ってIPアドレスを追跡し、メールの発信元を分析したが、相手はすでに十分な対策をしていたらしく、残された痕跡はすべて偽情報だった。通信には匿名ネットワークやVPNが用いられ、発信元の特定はほぼ不可能だった。 修はプロのハッカーにも協力を求めたが、相手の痕跡は完璧に消されており、ハッカーたちでもどうにもできなかった。 結局、そのメールアドレスはまったく意味がなく、西也の居場所を突き止めることはできなかった。 今、若子がどんな生活をしているのか、修には想像もできなかった。彼女はまるでこの世から消えてしまった。景行も無事ではいないはずだ。もし生きていれば、きっと若子を守っているはずなのに。 修は村崎家に連絡を取った。成之は真面目な男で、若子も村崎家の一員だと知ると、全力で若子を探し始めたが、まったく手がかりはなかった。 彼らは高峯にも頼った。 父親である高峯は、自分の息子のことは何も知らないと答えた。 本当に何も知らないのか、それとも知っていて黙っているのか―それは誰にもわからなかった。 高峯は「西也はもうずいぶん前から行方不明で、連絡も取れない」と言う。 修たちはもちろん信じていない。高峯は監視され、24時間体制で見張られていた。もし西也から連絡があれば、すぐにわかるはずだった。だが、何日経っても、高峯は何事もないようにふるまい、息子とは一度も連絡を取らなかった。 みんながまるで深い霧の中に迷い込んだかのようだった。西也は地球上から跡形もなく消えた。 ...... 別荘の庭。 若子はブランコに座っていた。 その肌は白玉のように透き通り、ほのかな気品をたたえている。 長い髪は夜のように幻想的で、そよ風に揺れている。目は空虚で、顔には憂いが浮かんでいた。 庭には静かな秋の気配が漂い、橙色の落ち葉が風に舞う。弱い陽ざしが木々の間から若子に降り注ぎ、うっすらと金色の輝きを描く。時は静かに流れていく。 ここに来てまだ半月も経っていないはずなのに、まるで永遠のように長く感じられた。魂がここに閉じ込められ、永遠に出られない気がした。 あまりにも長い時間が過ぎて、自分が誰だったかさえ、もう忘
夫の元カノが帰国！妊娠隠して離婚を決意した私 第1407話
縄を解かれた若子は、そっと手首を揉んだ。 西也はベッドに腰掛け、背中をヘッドボードにもたせ、期待に満ちた目で若子の次の行動を見守っている。 若子の全身は震えていた。唇を強く噛みしめたまま、彼のほうに這い寄り、自らその膝の上に座った。 西也の指が若子の顎を持ち上げ、「おとなしくしてろよ、絶対に変なことするな。さもないと、お前の子どもは父親を失い、その後でお前の子どもも死ぬことになるぞ」とささやいた。 若子は両手を彼の肩に置き、目を閉じて唇を重ねた。 ...... すべてが終わった後、西也は満足げにベッドに横たわり、大きく息を吐いていた。額には汗がにじんでいる。 最初は若子が自分から動いていたが、途中で力尽きてしまい、後は彼が主導した。 若子は全身を震わせ、毛布で身体をしっかり包み込んで、背中を向けて泣いていた。指を噛みしめて、静かに涙を流す。 西也は背後から若子を抱きしめ、汗ばんだ背中にキスをした。「そう、それでいいんだ。今度は新しい遊びをしよう。藤沢や冴島とは経験できないことを、俺が全部教えてやる」 彼は肩にキスをし、時おり軽く噛みつく。「泣くなよ。これ以上泣くと俺は怒るぞ。俺を殺そうとしているんじゃないかって思うから」 若子は目を閉じて深く息を吸い、涙を拭った。顔を西也のほうに向け、そのままじっと見つめる。まるで「これで満足か」と問いかけるような目だった。 西也は微笑み、親指で彼女の唇をなぞる。 「女の子を養子にしたい？それとも男の子がいい？」 若子は突然養子の話をされるとは思わなかった。 「若子、俺はパイプカットしてるから、これからは養子をもらおうと思ってる。一人でも二人でも三人でも構わない」 「赤ちゃんがいいか、何歳くらいがいいか、どんな子が欲しいか教えてくれ。ただし、十代はダメだ。十代は扱いが難しいからな」 「もう疲れた、寝たい」 若子の声は本当に弱々しかった。すべてを吸い取られて、もう何の力も残っていなかった。 「いいぞ、寝よう」 西也は若子の額にそっとキスをした。「この話はまた今度な」 ...... B国。 ドンという音とともに、一人の男が手足を縛られたまま修の前に放り出された。 その男のスマホには、盗撮された動画がぎっしり入っている。 修はそのスマホの動
夫の元カノが帰国！妊娠隠して離婚を決意した私 第1406話
若子はもう何も言い返さなかった。今、この身体は完全に西也のもの、どうされようが抗うことなんてできない。 「若子、お前がそんなふうに言うことを聞かないなら、こうやって毎日縛るしかない。また俺を傷つけようとしたら困るからな」 「西也......あの人たち、どうして私があんたを殺そうとしたことがわかったの？」 あの黒服たちは、まるで事前に知っていたように突入してきた。若子が手を下す前から分かっていたに違いない。 西也は静かに笑い、若子の顎をつかんで顔の向きを変えさせた。 天井の隅に、極小さな監視カメラが見えた。 その瞬間、若子は全身を剥き出しにされたような気持ちになった。世界中に晒されているみたいだった。 「ここに監視カメラを付けてたの？」 「つけたのは、お前が自傷行為しないようにって思ったからさ。でも、結果的に俺を殺そうとしたんだから、がっかりだよ」 「西也、最低。ベッドの上で私にしたこと、全部あんたの部下に見られてたってこと？！」 若子は激しい嫌悪と憎しみで震えた。まさか部屋にカメラを設置して、部下に監視させているなんて―自分の身体まで、誰かに見られていたなんて。そんな状況で、よく「愛してる」なんて言えたものだ。 「怒った？」西也は笑いながら言う。「怒るなよ、これも全部お前を守るためだし、今は俺を守るためでもある。監視カメラを見てるのは女だから、男がお前の身体を見てるわけじゃない。俺が他の男にお前を見せるわけないだろ？」 若子は鼻で笑った。どんな理由をつけようと、監視されていること自体が異常だった。相手が女だろうと男だろうと関係ない。西也はやっぱり最低の変態だ。 「若子、お前がちゃんと素直になれば、こんなことしなくて済むんだ。でも、素直じゃないから、俺もこうするしかない。お前が俺をこうさせるんだぞ」 西也はいつものように悲しげな顔で、若子を抱きしめた。「こうするしか、お前が言うことを聞かないからな」 若子はすべてを諦めて、静かに目を閉じた。どうやら、もうずっとこうやって縛られて生きていくしかないらしい。 「若子、じゃあ、こうしよう。俺ともう一度取引しないか。お前に、もう一度チャンスをやる」 西也は若子の耳たぶを軽く噛んでから、スマホを取り出す。 画面を何度かタップすると、若子の目の前に動画が映し出
