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62.姑想いの凛

last update 最終更新日: 2025-06-20 18:03:21

「実は、啓介がこの前実家に来たの……。」

まだ未練があるという凜に佳奈のことを話すのは酷だと思い、佳奈が来たことは話さずに啓介が子どもを望んでいないこと、そして女性は結婚したら家庭を優先すべきという価値観に苦言を言われたことなどをポツリポツリと打ち明けていった。凛は、私の話を真剣に、時折悲しそうな表情で聞いてくれた。

「そうだったのですね…啓介さん、そんな風に…」

凛の声はまるで自分事のように震えていた。表情は、啓介の無責任さを嘆き私の苦しみに共感しているかのようだった。

「先生は家庭優先で過ごされてきたのに、そのことを悪く言われたら悲しいですよね……。啓介さんは、そんなつもりで言ったわけではないと思います。だから、先生の悲しさや苦しいお気持ち痛いほど分かります」

凛は私の手を取った。その手は温かく私の心に安堵をもたらした。

「私、啓介さんのことを支えたい、そう思って先生の料理教室に通い始めたんです。先生がおっしゃるように、啓介さんの奥様になる方には、もっともっと啓介さんのことを考えて支えるような家庭を大切にしてくれる人であってほしいです。」

凛の言葉に私は深く頷いた。

(この子なら私の気持ちを理解してくれる。この子こそ私の理想の嫁だ!!)

「私、先生のお力になりたいです。啓介さんには

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