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last update Last Updated: 2025-09-12 06:00:36

「いい嫁だと思っている。頑張り屋だし、料理もうまいし」

「あ…そ、そうですか。それはありがとうございます……」

 なんか、思っている答えじゃなかったけど、褒めてもらえて嬉しいな…。

「それがなにか?」

「いえっ、なんでもありません!! お味噌汁とご飯、入れ直しますねっ」

 誤魔化すように慌ててご飯を入れ直した。「どうぞ」

「ありがとう。いただきます」

 小食なのかと思っていたのに、結構がっつり食べるのね。焼き魚も綺麗に食べたし、玉子焼きも気に入っているみたいだし。

「蓮司はいつもご飯はなにを食べていたのですか?」

「食べないな」

「今は食べているじゃないですか」

「ひかりのご飯はうまいから」

「そ…そうですか」

「なんだどうした。さっきからおかしな質問ばかりして」

「なんでもありません!! いろいろ考えていたら、聞きたくなっただけです!!」

「そうか。別に隠すことはなにもないし、気になることがあれば聞いてくれ。質問は随時受け付ける」

 人間味があると思ったら、急にビジネスモードになる。冷徹な部分があるのは否めない。

「真白の家の修行のことだが、適当でいいぞ」

「そういうわけにはいきません」

「まあ、母さんがついてるから変なことはしないだろうがな。もし、おかしなことをされたら、すぐ俺に言えよ?」

「大丈夫です。返り討ちにしてやります。黙ってやられるタマじゃありませんから」

「ははっ。俺の嫁は強いな。最高だ」

 ドキっ――!

 し、ししし、心臓に悪いッ!!

「それより、昨日怪我させられた手は大丈夫か?」

「蓮司が買ってくれた湿布のおかげで、すっかり良くなりました」

「そうか。よかった。朝食うまかった。差支えが無ければ明日も作ってくれたら嬉しい」

「お母さまと約束しましたし、作りますよ」

「義務的だな」

「契約ですから」

「それもそうか」

 わかんないっ。いったいどういうつもりなの!?

「食べたいものがあれば、リクエストをください。作りますから」

「なんでも作れるのか?」

「まあ、一通りは。そんな難しい料理はできませんけど…インピタ映えするようなキラキラご飯は無理です」

「そういうのは求めてない」

 うん。だよね。

「じゃあ、なにが?」

「ハンバーグ」

「えっ…」

「やはり難しいのか?」

「あ…別に……できますけど……」

「そうか」ぱっと顔が輝いた。「会社の近くで
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