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last update Last Updated: 2025-10-02 06:00:44

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  • 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!   66

     散歩は川沿いの遊歩道まで。朝の冷気はきりっとしていて、シリウスの足取りも軽い。信号で止まると、私の顔を見上げて尾をふわり。はいはい、わかってる。今日は蓮司が帰ってくるからね。いい日になるよ。 最後は軽くランニングして戻った。シリウスにご飯をあげて、お水を替えて、ペットシーツも取り替えた。 私は簡単にトーストを焼いてかじる。あと、今日は考えていることがあるから、夜ご飯を仕込んだ。 帰ったらさっと炒めるだけ。野菜を切って、ご飯をセットする。後は簡単な野菜スープ。それからお手製のソース(簡易版)。「よしっ」 手際よくやればすぐできる。主婦やってたから、ご飯造りはお手のもの。 今はそれしか取り柄が無い。もっと蓮司と肩を並べても見劣りしないようなレディになりたいけど…もとが庶民だからムリかなぁ。 頑張る前から諦めるのはどうかと思うけれど…。「シリウス、行ってくるね」「ワンっ」 シリウスにバイバイして会社に向かった。出社してからは、いつも通り。ただ、蓮司がいないというだけ。午前はメールの返しと段取り確認、午後は見積の詰め。余計な噂話はまだ漂っていたけれど、亜由美がうまく壁になってくれているのが分かる。昼休み、スマホが震えた。《15時半 新大阪発。戻りは18時》《了解です》 今日はぜったい迎えに行きたい。 仕事は根性で終わらせる!! だって私が会いたいんだもん!! サンドイッチをかきこみ、昼休み返上。午後は時計とにらめっこしながらフルスロットル。タスクを一つずつ潰して、やれるだけのことはやる。亜由美に「定時ダッシュする!」と宣言。すぐ親指スタンプが返ってくる。蓮司と結婚したからには、ちゃんと夫婦になっていきたいから、まずは

  • 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!   65

     朝、いつもの時間に目が覚めた。カーテンの向こうに薄い光。枕元のスマホを見て、しばらく迷う。こちらから電話、してもいいかな。忙しい時間を邪魔しないかな。  親指が通話のところで止まったその時、画面がふっと震えた。発信者の名前に、胸がやわらかくほどける。「もしもし」『起こしたか?』 まだ朝の匂いがする、低くて落ち着いた声。思わず笑ってしまう。「いえ、今ちょうど起きたところです。おはようございます」『おはよう。こっちは午前の打ち合わせを済ませたら戻れそうだ。恐らく夕方には戻れるだろうな。遅くても15時の新幹線には乗るつもりだ」「ほんとですか。よかった……」『今日は家でひかりのご飯が食べたい。なにか作って欲しい』「わかりました。用意します」『じゃあ――今夜は一緒に食べよう』 胸の内側で、小さく灯りがともる。たったそれだけの約束なのに、世界が一段明るくなる気がした。「うれしいです。気をつけて帰ってきてくださいね」

  • 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!   64

  • 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!   63

  • 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!   62

  • 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!   61

     給湯室の蛍光灯が彼のスーツの肩で冷たく光る。「本部長、僕は――」「勤務中に私的な詮索はやめろ、坂下。ここは会社だ。業務に関係のない“質問”は不要だ」 ぐっと一歩、近い。私と坂下くんの間に割って入るみたいに立って、真正面から射抜く。「それに――」視線が一瞬だけ私に落ちて、すぐ戻る。「彼女は俺の妻だ。話があるなら、上司であり配偶者である俺を通して欲しい。この件に関して文句や異議申し立てがあるなら、俺がすべて受けると皆には伝えてある」 はっきり言った。給湯室の奥にいた総務の先輩が、そっとカップを持って退散していく音まで聞こえる。やめて…。この場に走る緊張感がすごい。「……失礼しました。本部長。中原さん――じゃなかった、御門先輩に、ご結婚の件を確認しただけで」「確認は済んだ。以上だ」 言い切ってから、私の背に軽く手を添えた。その触れ方が独占っぽくて、心臓が跳ねる。やば、ここ会社だって。「あの、本部長…」「……悪い。語気が強かったな」 すぐ、坂下くんへ向き直る。「誤解させるつもりはない。彼女はチームの一員で、そして俺の妻だ。その事実は変わりない」「承知しました。個人的に引き留めて申しわけございません」 彼は深く頭を下げて、出ていった。残った熱だけが、給湯室に漂う。私は小さく息を吐いて、蓮司の袖口をちょん、とつまんだ。「あんなに言わなくてもいいじゃないですか」「……いや、ひかりが責められているのかと思ったら、つい」 間髪入れず。目を逸らさないの、ずるい。「業務上、不適切だ。分かっている。だが、男として、配偶者に向けられたあいつの好意的な目線は無視できなかった」 直球がきた。「お気持ちは嬉しいです。ありがとうございます」「わかってくれたらいい」 即答して、低い声をほんの少し落とす。「社外でこんなことがあったら、今みたいに遠慮はしないからな」「っ……承知しました」 顔、近い。熱い。やめて、ここは会

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