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第1部 一章【財前姉妹】その11 第六話 狙撃

作者: 彼方
last update 最終更新日: 2025-06-30 22:00:00

144.

第六話 狙撃

 今日は女流リーグ第2節。

 ミサトのことを新人王だと知った飯田ユキが今日は観戦に来ていた。

(えーと、井川さんはどこかなー。あ、いたいた)

 ミサトの卓を見てみると、もう南2局だった。ミサトは25000点持ちの二着目。

(あれ、開始15分でもう後半戦になってるんだ。早いな。ていうか井川さん25000点持ちってもしかして一度も点数動いてないの?)

 そうなのだ、この卓はロンの応酬で進んでおり連荘もなく、ミサトは持ち点を動かさずに南2局まで進めていた。しかし、そのように仕向けたのはミサトであり、この展開はミサトが作り上げたものだったのである。

 この日のミサトは手が悪かった。なので威嚇するように仕掛けをしておいてその実テンパイしておらず、ミサトばかりを気にして警戒した結果、他の人に放銃。それの繰り返しで南2局まで失点ゼロに抑えたのだ。そのような芸当が出来るのは新人王というタイトルがあればこそ。ミサトは自分のタイトルホルダーという立場を目一杯利用した戦略を選んでいた。さすがの対応力である。

 そして今、ついにミサトに勝負手が入る。

ミサト手牌

二三三四伍六七八九⑥⑥45 6ツモ ドラ⑥

 一萬は三着目が3巡目と5巡目に捨てていて2枚切れ。

 ユキは思った

(これは絶対リーチ! 最高の仕上がりです! 一気通貫目指して全力で曲げましょう!)と。

 しかし、ミサトはトップ目が前巡に少考して捨てた二萬に目をやっていた。トップ目はそれ以前に5索も捨てている。

ミサトの思考

(5索を先に捨てていながら一萬二萬とあり、さらにそれを結局中盤で払うなんてこと、あまりないな。一萬はあと2枚しかない

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