LOGINShare
第125話
Latest chapter
秘書と愛し合う元婚約者、私の結婚式で土下座！？ 第198話
「それで決まりだ。僕が彼を送っていく。君も一日疲れただろう、早く帰って休んで」そう言うと、ほむらは結衣に断る隙も与えず、拓海の方を向いて言った。「僕の車は路肩に止めてある。行こう」「待って……」結衣は止めようと口を開いた。拓海は彼女の方を振り返った。「結衣先生、お……ほむらさんに送ってもらいますから。先生も早く帰って休んでください。また明日」結衣は信じられないとばかりに目を見開き、その瞳には戸惑いが浮かんでいた。拓海は普段、こんなにおとなしい性格ではなかったはずだ。しかし、彼女が我に返った時には、二人はもう遠くへ歩き去っていた。家に戻り、結衣はソファに座って休んだ。三十分ほど経った頃、向かいから暗証番号を入力する音が聞こえ、結衣はすぐに立ち上がってドアを開けた。「ほむら」男は振り返り、その目に意外の色を浮かべた。「まだ寝ていなかったのか？」「ええ……今夜はありがとうございます。また今度、食事でもご馳走させて」ほむらの視線が一瞬止まり、結衣の方へ向き直って歩み寄った。彼の足取りは落ち着いており、二人の間の距離もそれほど離れていなかったため、すぐに結衣の前にたどり着いた。結衣は彼を見上げ、その目に戸惑いを浮かべて言った。「どうしたの？」「結衣、君に食事を作ったり、拓海を送ったりしたのは、君にご馳走になるためじゃない」「え？」結衣の脳裏に何かが一瞬よぎったが、速すぎて掴むことができなかった。深く考える間もなく、ほむらの低い声が頭上から響いた。「君を口説いているんだ。気づかなかったか？」彼は本来、もう少し待って、二人がもっと親しくなってから、機会を見つけて結衣に自分の気持ちを伝えようと思っていた。しかし、今夜拓海が自分の前で言ったあの言葉で、もうこんな生ぬるいやり方ではいけないと気づかされた。さもなければ、自分が告白する前に、結衣が他の誰かと付き合ってしまうかもしれない。結衣の頭は一瞬真っ白になり、数秒間呆然としてから、ようやく我に返った。彼女の顔が「カッ」と赤くなり、心臓の鼓動も無意識に速くなった。慌てて目を逸らし、結衣はしどろもどろに口を開いた。「わ、私……急に思い出したんだけど、まだ仕事が……終わってなくて……また明日……」言い終わると、彼女は二
秘書と愛し合う元婚約者、私の結婚式で土下座！？ 第197話
「今は帰宅ラッシュで道が混むから、三十分早く出てきたんだ」「ええ、私たちもさっき十数分前に出たんですけど、それでも少し渋滞にはまりました」結衣はほむらの隣に腰を下ろし、店員を呼んで注文を始めた。何人かが注文を終えると、結衣は化粧室へ立つために席を立った。個室のドアが閉まるやいなや、拓海はほむらを見た。「おじさん、結衣先生と知り合いだったなんて、思いませんでした」彼女を「結衣先生」と呼ぶのを聞いて、ほむらは眉をひそめた。「ああ、彼女を口説こうと思ってる」拓海の表情が固まった。彼がこれほど直接的だとは思ってもみなかったのだ。数秒間黙った後、彼はようやく勇気を振り絞ってほむらを見た。「おじさん、俺も結衣さんが好きなんです。諦めません。正々堂々、勝負しましょう」彼は朝陽法律事務所でのチャンスを捨てて結衣のそばに来たのだ。彼女の事務所を大きくするのを手伝うだけでなく、彼女を射止めるつもりでもあった。相手が叔父であろうと、諦めるつもりはなかった。ほむらは眉を上げた。ここまであからさまに言ったというのに、拓海が引き下がるどころか、自分に宣戦布告してくるとは思ってもみなかった。「お前と彼女は釣り合わない」「じゃあ、おじさんは釣り合うとでも？おじさん、知らないわけないでしょう。おじい様とおばあ様が、もうあなたの婚約者候補を探し始めていることを」その言葉が終わるか終わらないかのうちに、個室の空気は一瞬にして凍りついた。「僕の結婚は、あの人たちが決めることじゃない」「少し自信過剰じゃないですか」祖父母がほむらをどれほど大切に思っているかを考えれば、彼らが結衣をほむらの妻として受け入れるはずがない。彼らがほむらの妻に求める条件を、拓海は以前見たことがあったが、それは苛酷としか言いようがなかった。第一条の「京市出身であること」だけで、結衣は条件を満たしていなかった。「俺のことはお前が心配する必要はない。お前は彼女のそばで、アシスタントとしての仕事さえしっかりやっていればいい。余計な考えは今すぐ捨てるんだな」拓海の顔色が変わった。「おじさん、俺は諦めません。それに、結衣さんがあなたを好きになるとは限りませんよ」ほむらは眉を上げ、その漆黒の瞳は冷たい光を宿していた。「なら、試してみるがいい」彼
秘書と愛し合う元婚約者、私の結婚式で土下座！？ 第196話
「ええ」電話を切り、結衣はレストランを予約し、その住所と時間をほむらに送った。夕方、拓海は結衣の車でレストランへ向かった。レストランへ向かう途中、結衣は今夜、友人が一人、食事に加わることを彼に伝えた。「結衣先生、どんなご友人ですか？男性ですか、女性ですか？もしかして、この間一緒に食事をした時に会った、あの高校の同級生の方ですか？」拓海にそう言われ、結衣は少し考えて、彼が佑介のことを言っているのだと思い出した。「ううん、違うわ。別の友人よ。男性で、あなたは会ったことがない人」「男性ですか？！」拓海は思わず声を張り上げ、その顔には信じられないという色が浮かんでいた。今日は自分の就職祝いで結衣が食事に誘ってくれたのだ。女性の友人ならまだしも、男性が来るなんてどういうことだ？！彼の大きな反応を見て、結衣は口を開いた。「最近、ずっと仕事のことで忙しくて、ほとんど毎晩、彼にご飯を作ってもらっているの。だから今夜、ちょうどお礼にご馳走しようと思って」その言葉に、拓海の心に危機感がこみ上げてきた。以前、結衣がまだ朝陽法律事務所にいた頃、二人は毎日一緒に仕事をしていたが、彼女に毎日夕食を作ってくれる男性がいるなんて、聞いたこともなかった。結衣が事務所を辞めてまだ一ヶ月しか経っていないのに、もう彼女のそばに別の男が現れるなんて。「その方は本当に親切なんですね。でしたら、これからは俺の夕食もついでに作ってもらう、というのはどうでしょう？」嫉妬心から、拓海の口調にはどこか棘があった。結衣は面白そうに彼を一瞥した。「彼、プロの料理人じゃないのよ。私が毎日ご馳走になっているだけでもう十分申し訳ないのに、あなたまで連れて行ったら、明日の夜から私の夕食がなくなっちゃうかもしれないわ」「そうですか……」どうやら、時間を見つけて料理を習いに行かなければならないようだ。絶対に他の男に先を越されるわけにはいかない！拓海は闘志を燃やし、今夜こそ自分の魅力を存分に発揮して、相手を諦めさせようと心に決めた。しかし、その決意は、個室のドアを開け、中に座る男の姿を見た瞬間、跡形もなく消え去った。個室にいるその男を見て、彼は信じられないとばかりに瞬きし、幻覚を見ているのではないかと疑った。踏み出した足は無意識に後ずさり、そのままド
秘書と愛し合う元婚約者、私の結婚式で土下座！？ 第195話
拓海は断られたくなかった。結衣が事務所を辞めてから、彼は自分の気持ちをはっきりと伝えなかったことをずっと後悔していた。そして、彼女が最も困難な時期に、両親に連絡して助けてもらわなかったことも後悔していた。この間、彼は毎日仕事に身が入らず、いつも結衣のことばかり考えていた。彼女を忘れようともしたが、どうしても忘れられなかった。結衣はまず眉をひそめ、やがて口を開いた。「拓海くん、私のところでアシスタントをするより、朝陽法律事務所に残った方がいいと思うわ。朝陽は総合的で、発展性もある良い事務所よ。私の事務所は登録したばかりで、いつ倒産するか分からない。あなたの将来を無駄にしたくないの」拓海は彼女の目を見つめた。「結衣先生、俺は先生を信じています。先生の事務所が倒産するなんて思いません」彼の真剣な眼差しを見て、結衣は唇を引き結び、心の中で少し感動した。何しろ、彼女自身でさえ未来に確信が持てないのに、拓海はこんなにも自分を信じてくれているのだ。「私の事務所に来たら、朝陽にいるよりずっと大変よ。色々な雑用をこなさないといけないし、残業も頻繁にあるかもしれない。もし私があなただったら、朝陽に残り続けるわ」大きな法律事務所にいる方が、設立されたばかりで前途も定かではない個人事務所にいるより、ずっといい。「結衣先生、先生が俺をアシスタントとして受け入れてくれるかどうか、それだけを教えてください。他のことは全部考えました。もし覚悟が決まっていなかったら、今日、先生に会いに来たりしません」その言葉を聞いて、結衣は残りの言葉を飲み込んだ。彼女は口元に笑みを浮かべ、拓海に手を差し出した。「私の個人事務所へ、ようこそ」彼女の白く細い指先を見て、拓海も微笑み、その手を握った。「結衣先生、俺をアシスタントにして、絶対に後悔はさせません」拓海が来てくれたおかげで、結衣はもうアシスタントを募集する必要がなくなった。当面は、経理と清掃員を一人ずつ募集するだけでいい。午後、拓海は退職手続きのために朝陽法律事務所へ戻った。結衣は少し考えた後、やはり渉に電話をかけ、拓海をアシスタントとして迎えることを伝え、ついでに謝罪した。何しろ朝陽は彼女の古巣だ。この件で気まずくなれば、今後顔を合わせる時に気まずい思いをするだろう。
秘書と愛し合う元婚約者、私の結婚式で土下座！？ 第194話
玲奈は慌ててドアを押さえ、動揺した表情で彼を見つめた。「社長……あたし……妊娠、しました……」……汐見家。満が寝ようとしていた時、突然メールが一件届いた。メールを開き、添付ファイルをダウンロードして開く。そこには数枚の写真があり、夜にほむらと結衣がスーパーで買い物をしている場面が写っていた。盗み撮りのため、ほとんどが横顔か後ろ姿だった。満はほむらの横顔をじっと見つめ、眉をひそめた。以前、和光苑でほむらを見かけた時、どこか見覚えがあるような気がしていたのだった。今回、彼の横顔を見て、その感覚はさらに強くなった。この男には、どこかで会ったことがあるはずだ。しばらく考えても思い出せず、満は直接メールに返信し、相手にほむらのことを調べるよう指示した。スマホを閉じると、満の口元に冷笑が浮かんだ。結衣が持っているものすべて、必ず奪ってやる。あの子は永遠に負け犬よ！翌朝早く、結衣が起きた途端、詩織から電話がかかってきた。「結衣！さっきお兄さんからメッセージが来たんだけど、あのクズ男の長谷川が、篠原を連れてお兄さんの病院へ妊婦健診に行ったって！長谷川、昨夜SNSで感傷的な投稿をしてたかと思えば、今日はもう愛人と産婦人科ですって。本当に、二人して疫病神だわ！」その言葉を聞いて、結衣は目を伏せ、低い声で言った。「彼のことはもう私には関係ないし、気にもしていないわ」「八年も付き合って、やっと実を結ぶところだったのに、他の女に横取りされるなんて、本当に腹が立つわ！」「奪われるようなものは、最初から私のものじゃなかったのよ。たとえ篠原さんじゃなくても、別の誰かだったでしょうし。もう気にしていないわ」あの関係が惜しくて、涼介に三年間も無駄にしてしまった。これからは、ただ自分のために努力して、昔、叶わなかった夢を叶えたい。「はぁ……それもそうね。結局は、あのクズ男の涼介が悪いのよ」「もういいわ。あなたも彼のことを気にするのはやめて。価値がないもの。この後、面接があるから、これで切るわね。バイバイ」電話を切り、結衣はスマホを置いて身支度を整えると、直接事務所へと車を走らせた。午前の面接を終えると、結衣は疲れ果てて動く気にもなれず、出前を頼んで少し休むことにした。「トントン」ドアをノックする音がした。
秘書と愛し合う元婚約者、私の結婚式で土下座！？ 第193話
ほむらは眉を上げた。「君、最近は大学院入試と法律事務所の開業準備で忙しいんじゃないのか？両立できるのかい？」「事務所に応募してくる人たちが、どうもピンとこなくてね。募集要項と給与を見直そうと思っています。大学院の勉強は、少し後回しにしても大丈夫ですから」なにしろ、来年の試験に申し込むつもりなので、時間はまだ十分にある。ほむらはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。「やっぱり、夜に無理して料理の時間を作ると、君が疲れてしまうと思うんだ。もし気が引けるなら、食後に一緒にスーパーへ行って、君が食材費を出して、僕が料理するっていうのはどうかな？」結衣はその提案に心惹かれたが、それではほむらの方が疲れてしまうのではないかと思った。「でも、それだとあなたの時間をすごく取ってしまうんじゃないかしら」「大丈夫だよ。ちょうど今、仕事がなくてしばらく休んでいるところなんだ。一人分作るのも二人分作るのも、大して変わらないから」「分かりました。じゃあ、しばらくはほむらにお願いします。ほむらが仕事を見つけたら、今度は私がしばらく料理を作りますよ」「ああ」食事を終え、食器を食洗機に入れて片付けると、二人は一緒にスーパーへ買い物に出かけた。彼らが住むマンションの近くには大きなチェーンのスーパーがあり、歩いて行くことにした。スーパーに入ると、ほむらは手慣れた様子でカートを一台押し、結衣と一緒に店内へ進んだ。「最近、何か食べたいものはあるかい？」結衣は首を横に振った。「何でもいいわ。好き嫌いは特にないです」「じゃあ、まず野菜コーナーから見てみようか」「ええ」二人は野菜コーナーへ行き、それぞれ一つずつ野菜を選ぶと、鮮魚と精肉のコーナーへ向かった。その時、誰かが後ろから携帯電話で、二人が一緒に買い物をする姿を撮影していることには、誰も気づかなかった。買い物を終え、二人は家に戻った。結衣は夜、まだ処理しなければならない仕事があったので、家に着くとすぐにパソコンを開いて作業を始めた。……一方、清澄市のとある高級住宅街にある一軒家では――涼介はソファに座り、リモコンを手に、無表情で、かつて結衣と付き合っていた頃に撮った動画を見ていた。動画の中では、二人が十年後の未来について語り合っていた。彼は、十年後
