翌日から、俺としては余計なお世話だと思っていた剣術、武術、ナイフ術、暗殺術、狩りの仕方を教えてくれる日々が続いた。初めは嫌々習っていたが、この体は肉体の基本能力が異常に高く、面白いように体が動き、覚えも早くて楽しかった。気にして不安に思っていた魔法も適性があり、基本を教わると、勝手に実験をして狩りに取り入れたりもした。
「ちゃんと毎日練習をしないと、いざという時に体が動かないからな!」
「ボク、いつサボった? 楽しく練習してるよ?」
言われなくても、面白くて勝手に練習をして過ごしていた。体を動かすのが、こんなに楽しいなんて知らなかった!
「少しは、親らしいことを言わせてくれ!」
トリスタンが頭を、いつものようにガシガシと撫でてくる。まだ1ヶ月も経っていないのに、俺たちは仲良く暮らしている。
「でも、剣術は敵わないな……」
残念そうに言うと、トリスタンに大笑いされた。むぅ……大真面目に言ってるのにぃ~。
「剣術を始めて1ヶ月の坊主が、数十年剣術をしてる者に剣術で勝てるわけないだろ。それに、体格も力も違うしな」
「むぅ……明日は、お父さんに勝つ!」
あっ。思わず……「お父さん」って言っちゃったよ。トリスタン……気づいてる……?
ゆっくりと振り向くと、ニターと微笑むトリスタンが俺を見つめていた。
「さ、昼食にするか!」
また、余計な気遣いかな……? あまり、こういう話はしないんだけどね。親子関係とか……俺は、すでに父親だと思ってるけど。トリスタンも息子のように接してくれるし、怒ってもくれる。それに、この世界の常識をいろいろと教えてくれた。
お父さんと呼んだのがバレているし、喜んでいるトリスタンの表情を見てしまったので、この日を境にトリスタンをお父さんと呼ぶようになった。
――衝撃の狩り 週に一度くらいのペースで狩りに同行し、狩りがどんなものか見せてくれた。俺が想像していた常識とはかけ離れていた。普通さ……弓とか遠距離の武器を使うじゃん? 魔法とかさ? なんで、剣術や暗殺術が得意なのに……拳!?「この辺りは、巨大イノシシの縄張りだから気を付けろよ。あいつらは縄張りに敏感だから気づかれたら襲ってくる。そこが良いんだがな! 探す手間が省けるしな。お前はここで気配を消して見学してろな」
そう言うと、スタスタと森のけもの道を歩き出した。
ガサゴソと音が大きく聞こえ、獣の息遣いも近くなってくる。獣が通るたびに木や草が大きく揺れ、メシメシと木が折れる音も聞こえるほど巨大なイノシシに似た違う生物が現れた。イノシシの大きさじゃないだろ……あれ。見た目を小さくすればイノシシだけど……。
現れた巨大イノシシが、興奮し威嚇しているのが伝わってくる。トリスタンをじっと見つめ、鼻息を荒くしながら土ぼこりを舞い上げ、威圧的なオーラを放ちドカッと音を立てて突進してきた。体がデカいとは思わせないスピードが出ている。まるでダンプカーが突っ込んでくるような迫力だった。
「お父さん! 逃げてっ! あぶない!!」
俺が叫ぶが、トリスタンは反応せず、腰を低く落として体術の構えを取った。その拳の周りがゆらゆらと歪んで見えてきた。
巨大イノシシが目の前まで迫ると、トリスタンも合わせて一歩踏み出し、巨大イノシシの頭に拳を叩き込んだ。ドゴォーン!と轟音が響き渡り、辺りが静まり返った。二人の動きが止まり、巨大イノシシが横にドーンと倒れた。
これ……狩りなの? どちらかと言うと魔獣やモンスターの討伐じゃないの? 狩りってさ……潜んで静かにして獲物に気づかれないようにして遠距離攻撃をして仕留めるものだと思ってるんだけど。何度も言うけどさぁ。
「どうだ? これが狩りだぞ!」
この、うそつきっ! こんなの狩りじゃないってば!
「……なんで拳なの? お父さんって剣やナイフが得意でしょ?」
「あぁ……。あいつに効かないんだよ。剣やナイフが負けて折れるんだわ」
ん!? それって、鉄より強い拳なんだ……? トリスタンに、げんこつされたら死ぬな。……こわっ!
「お父さん、拳大丈夫?? ちょっと見せてー?」
トリスタンの手を掴むと、拳に血が付いている。
「わっ。血、血が出てる!」
慌てた俺を見て微笑み、優しく頭を撫でてきた。
「あはは。人に心配されるのは嬉しいもんだな! これは、俺の血じゃなくて獲物の血だぞ」
拳を自分の服で拭うと、改めて見せてくれた。……うん。無傷だね! 焦らせないでよね……。
「ボクが、大きくなったら……お父さんに武器を買ってあげるから、それを使ってよ。お父さんは……そうだなー大きなハンマーとか似合いそう!」
「ユウからのプレゼントは嬉しいんだが……ハンマーは、持ち手が折れたり、曲がったりするんだ」
ガッカリした表情で言ってきた。
「そ、そうなんだ……気を付けてね」
もう、それしか言えない。
「でも、そのうちユウもできるようになるだろ」
トリスタンが呟くように言った。いやいや……ムリです。突進してくるダンプカーを殴るような自殺行為はしたくないってっ!
そう思っていたら数か月後に、自分も同じように普通サイズのイノシシを拳で倒せるようになっていた。
「あ、あれ? ……なんで??」
自分でもよくわからなくて首を傾げていたら、トリスタンが説明をしてくれた。
「ユウは、無意識に身体強化を扱えるみたいだからな。自然と使えてるぞ。今度から意識して使う練習をするのも良いと思うぞ!」
と、いつものように頭をガシガシと撫でられた。
だんだんとトリスタンの常識が、俺の常識になってきていた。だって、周りに人がいなくて、俺にとっての常識がトリスタンだったから……。
「……すべすべで、柔らかくて……良い触り心地だな」それしか言えないが、むにゅむにゅと柔らかな頬を自分から触っていた。「あの、私も……いいですか? ユウさんの頬を……お触りしても?」戸惑いと恥ずかしさが入り混じった声で聞かれた。 ……断る理由がないし、俺も触らせてもらってるし。「俺も触らせてもらってるし、好きにすれば良いんじゃないか? イヤじゃないしな」正直に言った。「わぁ……どんな感じなのでしょうか。私も……とうとう異性の男性に触れちゃいますよ……えいっ」と可愛く気合を入れた声を出して触ってきた。 柔らかな手が、俺の頬に触れられたのを感じた。エリーの指が、俺の頬を優しく撫で感触を確かめるように、むにゅむにゅと摘んできた。「ユウさんの頬……触っちゃいました!」嬉しそうに報告してきたが……知っているぞ。目の前にいるし、触られている感覚もあるしな。「ユウさん……幸せです。ユウさんも……抱きしめてきて良いのですよ? いつも……私からばっかりです」とエリーが言いだした。 いやいや……王女様だしダメだろ!? 良いのか?「いや、王女様だしな……ダメだろ……」思ったことを言った。「違いますっ。……今は……その違うのです! むぅ……ただの同居人なのです! ですので、お好きに触っても良いのですよ」と言ってきた。だが、ただの同居人だとしても……ダメだろ。恋人同士ならば良いとは思うが…… エリーが俺の手を掴むと胸元まで持ってきた。「あの……わ、私は……ここまでしか持ってこれませんが、男性の方なら……触りたいと聞いたことがあります……。その……どうぞ……」恥ずかしさから声が震えているのがわかる。きっと真っ赤な顔をしているんだろうな……。恥ずかしさか、緊張からか手も震えている。 握られていた手の力が緩み、その手は俺の腰に移動をさせてきた。「そ、そんな……事をしたら……触るだけじゃ済まなくなるぞ」いろいろと、しちゃうだろ……「え!? はわわ……。えっと……触る以外ですか!? 私は、なにを……されちゃうのでしょうか……? あ、男性の方は……エッチなことを考えると……ムズム
顔を赤くした俺は、何も言えず。「え? もう、好きにしてくれ」内心は嬉しく思っていたけど、恥ずかしすぎる……。 ……一緒に寝てる感じがするって……一緒に寝たいってことだよな? それって……俺に……好意を持っているって事だよな? ただ……寂しいってこともあるし。「はい! えっと、向こうを向いていてくださいね」嬉しそうに部屋の隅に行き、服を着替えだした。「俺は、もう寝るから……」と言い、布団に入って着替えている方向とは逆を向き、横になった。 エリーが部屋の明かりを消し、もぞもぞと同じ布団に入ってきた。 えっ!? 布団2枚用意してたよな? ……なんで? その疑問をエリーに聞いてみた。「お前、布団を2枚用意してたよな?」疑問をそのまま口に出した。「え……? はい。用意しましたよ?」とエリーが平然と可愛らしく首を傾げて答えてきた。 聞いている俺の方が、まるでおかしな事を言っている気がしてきた。俺、何かおかしな事言ってるか?「なんで、こっちに入ってくるんだ? 自分の寝る布団を用意していたよな?」と言い方を変えて確認をした。「一緒に寝たいので……ダメでしたか? 昨日は安心して、ぐっすり眠れましたし……」暗くて表情は見えないが、声の感じで笑顔で話しているのが伝わってくる。「じゃあ、なんで布団を2枚も用意したんだ?」そう、疑問点はこれだ。「ユウさんに、安心してもらうためですかね?」俺に安心? どういうこと? 布団を2枚並べて……安心させるって……? 別々に寝ると思わせておいてってこと!?「それ逆じゃないか!? 男がすることじゃないのか?」大胆なエリーの行動に驚きつつ、エリーに想われているのかも? とドキドキしてしまう
「そ、そう、くっつくな……って……」ユウは半ば困惑しながらエリーに言った。「可愛いって言ってくれた子にくっつかれて嫌なのですか? 喜んでくれないのですか? プレゼントのお礼……です。うぅ……お礼になっていませんか……? これでも、勇気を出して……抱きしめているのですが……」 エリーはユウに甘えるように言い、その表情には真剣な思いが込められていた。 ユウはエリーには勝てそうにない……と、心の中で思った。「嫌ではないが、恥ずかしいぞ」と言うが、内心嬉しくてずっとこのままでいたいとも思っていた。「嫌ではないのですね!? プレゼントのお礼です。受け取ってください……」それを聞いたエリーは、ニコッと微笑むと、さらにぎゅっと抱きしめて密着してきた。「ありがとな。十分だぞ」顔が真っ赤になっているのを感じる。恥ずかしがっている顔を見られたくない……「もう少しこのままで、いさせてください」と言うエリーに負け、俺も心地よかったので抵抗をするのを諦めた。「もう、好きにしてくれ」そう言うと、ユウは微笑んだ。「はい。勝手にしますね」エリーは、ユウの背中に頬を着け、ユウの背中の感触を味わうようにしばらく抱きしめた。「ユウさんの背中……いい匂いです。これ、好きです……」とエリーがつぶやいてきた。「い、いや……汗臭いだけだろ!」俺は、恥ずかしくて強い口調で言ってしまったが、気にしてる様子はなく抱きしめたままだった。それに、背中に頬ずりをしている感触もしているのだが?? 何だこの状況!! エリーの雰囲気がかわってるぞ!? 髪形が変わったからか? いや、雰囲気っていうより性格が変わってるぞ。積極的というか……俺に懐いてる!? 10分ほど経過した。「うん。落ち着きました! ありがとうございます」落ち着いた? お礼じゃなかったのか? 寂しかっただけなのか?「俺は、夕飯の準備をするけど……?」手伝うと言ってくるか?「私は……大人しく待ってます。すみません」珍しく、大人しく待っていると言ってきた。最近、頑張っていたから疲れたのかもな。「明日は、狩りに行かないとだな。そろそろ肉の補充をしないと」最近は、エリーを一人にしておけなくて……ずっと側にいた。 それを聞いたエリーが、寂しそうな表情をした。「そうなんですか。一緒に居られないんですね……」 小物の狩りなら一緒に行け
「それじゃ皿洗いでもしてもらうか。出来るか?」ユウは心配そうな表情で言った。王女に皿洗いをさせて良いのか、そもそも皿洗いが出来るのか、という不安が入り混じっていた。「頑張ってみます!」とエリーは自信に満ちた表情で答えた。 私が皿洗い……かぁ。王城でお皿を洗ったら、周りが驚いて慌てる姿が思い浮かび、きっと見た人は卒倒するだろうなぁ……と思い、おかしくて笑ってしまう。 しばらくすると、エリーのいる場所から声と音が聞こえてきた。 …………「きゃっ!」パリンッ!! …………「ひゃっ!!」パリンッ!!「あぁ……もう……。ううぅ……ぐぅすんっ……」と、泣き声も聞こえてきた。 結果、昼食で使った皿がすべて割れてなくなってしまった。木のお椀は無事だったので食事には困らないが、焼いた肉は森で採れる木の葉に乗せることになるだろう。 開始数分で数枚の皿を手を滑らせて割ってしまい、「ごめんなさい……」と、完全に自信を喪失した表情に変わっていた。 まあ、想定内のことだ。「ケガが無くてよかったな。そんなに落ち込まなくても良いんだぞ」これは本心だ。ケガをされたら俺が動揺してしまう。 ユウも打ち解けてきたのか、口調が変わってきたが本人に自覚はない。しかし、エリーはその変化に気づいた。 エリーは、腹の探り合いが行われる環境で生まれ育ち、常に最前線で戦ってきたため、無意識に相手の表情や仕草、口調などを探る癖、つまり防衛本能が働いてしまうのだ。 そのことに気づいたエリーは、心が温かくなり、嬉しさが込み上げてニヤけてしまった。 家事を積極的に手伝うようになっていたエリーを見ていると、髪が短くなったといってもセミロングなので、まだ邪魔そうに見えた。 さらに家事を手伝ってくれるので、俺にも時間の余裕ができた。 手作業をしていると、気になってチラチラと見ていたエリーが近づいてきて、「何を作ってるんですか?」と覗いてきた。 サプライズで渡したかったので隠して、「まだ秘密だ」とエリーを見てニコッと笑った。 エリーは俺の返答に、不満そうな表情をした。「秘密ですか……」俺の答えを復唱し、ムスッと頬を膨らませた。いつもなら、ここで終わるのだが。「そうだ、秘密だ」俺も同じことを言った。「私に秘密ですか。そうですか……」いつもとは違い、食い下がってきた。 あれ? 珍しく食い下
手渡した物に、エリーは喜んでいた。「ありがとうございます……」とお礼を言ってきたが、少し不満そうな表情をしていた。「庶民の服で悪いな。ドレスは、目立つし売ってないからな」エリーの反応だと、やはりドレスじゃないと嫌だったのか? 抵抗もなく、エリーが庶民の服に着替えた。エリーが着替えが終わると、声を掛けてきた。「着替えましたよ。どうですか?」と嬉しそうにエリーはくるりと回った。思ったよりもスカートがふわっと捲れ、彼女は恥ずかしそうに手で押さえた。 ユウはその様子を見て、可愛さに胸が高鳴った。 髪型も服装も変わったので、絶対に気づかないだろうと思うが、普通の庶民とは違うオーラを感じる。王女様のエリーと同一人物だとは思わないだろう。王女様が村娘の格好をするはずがない。変装をするならば、貴族の娘かお金持ちの商家の娘だろう。 しばらく見とれてボーっとしていると、エリーも同じく見つめてきた。座りながら腰をかがめ、膝に手をつき、じっと見つめ返されて我に返った。 俺が慌てていると、「……なにか言うことは、ないのでしょうか……?」とエリーが不機嫌そうに言ってきた。「か、可愛い。すごく似合ってるよ。あ、庶民の服だけじゃなくて、ドレスでも何を着ても似合ってるぞ」 ユウは照れながらも、エリーに褒め言葉を伝えた。 褒められると、不満そうな表情は消え、「ありがとうございます」と言い、頬を赤くして顔を逸らし照れていた。 俺に誉められたくらいで大げさじゃないのか? お城で飽きるほど誉められていたんじゃないのか? こんなに美しく可愛らしいんだからさ……。とユウは心の中で思った。 再びエリーの仕草をぼんやりと眺めていると、やはり王女としての仕草が目立つ。優雅で見とれてしまう美しさと惹きつけられる魅力を感じる。「……さん、ユウさん? ゆーさーん!?」 名前を呼ばれているのに気付かなかった。 エリーがムスッとした表情で俺の頬を指で突っついてきた。「えいっ! ユウさん! 聞こえてます?」とエリーは隣で膝をつき、俺の横顔をじっと見つめていた。 驚き横を振り向くとエリーの可愛い顔が近くにあり「わっ!? な、なに? どうした?」と声を上げた。 俺が慌てている様子を見て、エリーはクスクスと楽しそうに笑っていた。その表情は、今までの作られたような笑顔の笑いではないと感じた。心から笑
あまり眠れずに朝になってしまい、少しずつ外が明るくなってきた。 隣を見ると、朝日に照らされ金髪がキラキラと輝く美少女が、俺のぶかぶかの服を着て寝ていて、俺を抱きしめているというあり得ない状況だった。……しかも、再びお互いの頬をくっつけて寝ている。このまま振り向けば、昨夜のように柔らかなエリーの頬にキスができる状況だ。それも……さっき、その美少女の太ももで射精をしてしまったんだぞ……。嬉しい感情と共に、罪悪感も感じていた。 すると、エリーが恥ずかしそうに目を覚ました。「……昨夜は、ありがとうございます」エリーが、眠そうな表情をして、密着している俺に驚くこともなく頬をゆっくりと離して言ってきた。 昨日も思ったけど、ドロワーズって下着なんだよな……見られるのも恥ずかしいよな? 俺は、意識しないようにただのハーフパンツだと思うようにしていた。 まだ朝早く、朝日が昇ってきたばかりで時間がある。「向こう向いてるから、着替えていいぞ」と平静を装い言った。「いえ、もう少しこのままでいても良いでしょうか?」と同じ枕で横になって見つめてきた。「ま、まあ……特に急ぐ予定は、ないし……。好きにしたらいい」と言うが、その服装じゃ俺の目のやり場に困るんだが……。 しばらく二人で布団の中で話をしていたが、エリーが起き上がると……日が昇り、部屋の中も朝日が差し込み明るくなっていた。エリーの姿がはっきりと見えるようになっていて……色白の綺麗な肩や、服からはみ出しているドロワーズよりも、服にできた二つの膨らみ、その膨らみに小さくポチっと膨らんだモノが見えていた。「ユウさん……見過ぎですよぅ……。恥ずかしくなってしまいます」とエリーは、頬を赤く染め、照れているような表情に変わっていた。昨日は、恥ずかしそうに隠していたんだがな。「明るくなったから、目のやり場に困るんだ。着替えてくれたら嬉しいんだが」「はーい。では、着替えてしまいますね」エリーが素直に返事をした。これでも王女様なんだよな……。王女様に指示や命令をしている俺って……侮辱罪とやらで、何回処刑されるんだ? と恐怖心が一瞬襲ってきた。 エリーがボロボロのドレスに着替えた。いつ見ても……目が切り裂かれたドレスの隙間に吸い寄せられる。エリーもそれに気づき、恥ずかしそうにしていた。 朝食の用意をしながら、「俺は朝食を食べたら