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第5話

Author: ジャスミン
真里が病院に運ばれて三日が経った。

その間、時々来るのは一人の実習看護師だけで、消毒と薬を塗るくらいの世話しかされていない。

薬を塗ると言っても、実際は傷口を軽く拭いて赤チンをつけるだけで、治療としての効果はほとんどなかった。

その実習看護師の手つきは乱暴で、真里は何度も痛みに震え、全身汗びっしょりになっていた。

彼女はシーツをぎゅっと握りしめ、痩せた指の関節が白く浮き出ていた。

そんな姿を見た巧は、思わず薬瓶を取り上げ、自分で手当てを始めた。

「痛いなら、言えよ」

「前は……すぐ甘えてきて、慰めろってうるさかったくせに」

もし以前だったら、真里は間違いなく甘えた声で彼にわがままを言っていただろう。

だが今は、歯を食いしばって、必死に耐えていた。

巧はわざと優しく話しかけた。彼女が少しでも歩み寄ってくれれば、自分も許すつもりでいた。

何だかんだ言っても、真里は自分の婚約者で、自分のものだと思っていたからだ。

だが真里は顔を背け、彼の方を見ようともしなかった。そして淡々とした口調で言った。

「これまで迷惑かけて、ごめんなさい」

「これからはもう大丈夫。婚約が邪魔なら、おじいちゃんに話して取り消してもらう」

その言葉に、巧の眉が一気にしかめられた。

「は?川崎、また駆け引きをしてるのか?」

「いい加減にしろ!お前のそういうとこ、ほんとに面倒なんだよ!」

まるで怒れる獅子のように、彼は手にしていた物を放り投げ、勢いよくドアを叩きつけて出て行った。倒れた薬瓶だけが、静かに床に転がったままだった。

真里は虚しく笑った。何も駆け引きなんてしてない。ただ、ありのままを伝えただけなのに。

翌日、病室の入り口に巧の祖父が現れた。

彼は実の家族以上に彼女にとって大切な存在だった。その姿を見た瞬間、真里の目に涙が浮かんだ。

山中で遭難していたとき、死の恐怖以上に心を占めていたのは、この優しいおじいさまのことだった。

両親を亡くしたあの日、おじいさまが彼女の手を握り、阿久津家に連れて行ってくれた。そして衣食住を整えて、「辛いときは、いつでもおじいちゃんのところに来なさい」と言ってくれた。

どんなことがあっても、彼女の味方になってくれる。

その優しい笑顔を見て、真里は胸の苦しみを飲み込んだ。

どうせもうすぐ出ていくのだ。せめておじいさまに心配はかけたくない。

だが、おじいさまは彼女の足の傷を見るなり、顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。

「ここの医者は役立たずか!」

「うちの可愛い孫嫁にこんな仕打ちをして、飯食ってるだけの役立たずどもめ!」

そう言いながら、杖を床にドンと突き立てた。

若い頃は商界を駆け回っていた人物だけあり、その威厳ある一声で、健太の背中には冷や汗が流れた。

「お、お怒りにならないでください!俺は専門医なので、診断を間違えるはずがありません」

「川崎が治療に協力的でなかったから、同情を買おうとしてわざと……」

おじいさまは言い訳など聞き入れず、杖で彼を転がり回させた。

「このクソガキ!わしを騙せると思ったか!やかましいわ!」

騒ぎを聞きつけた美都が慌てて病室に飛び込んできた。「どうしたんですか?」

「おじいさま、また真里が何か言って怒らせたんですか」

「怒らないでください、あの子は昔からわがままで……」

その瞬間、おじいさまが彼女の頬を容赦なく殴りつけた。

「また?真里がわしを怒らせたことなんて、一度もない!」

「お前とお前の兄のこと、見抜けないとでも思ったか?」

「詐欺まがいのろくでなしどもが、よくもわしを騙そうとしたな!今日こそお仕置きだ!」

その迫力に誰も止められなかった。その一撃は美都の顔に直撃し、美都の口元には、血がにじんでいた。

ちょうどその時、巧が駆けつけた。

美都はその場を利用して彼の胸に飛び込むと、泣き崩れた。

「巧兄、ごめんなさい。真里姉がおじいさまに何を吹き込んだのか、私がこんなに嫌われて……」

「おじいさまの怒りが収まるなら、私はどうされてもいいの……」

巧の顔は冷え切っていた。彼女を抱きしめると、こう言い放った。

「あいつがお前と比べものになるか?

俺が守ってやる。誰にも手は出させない」
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