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第1046話 甘やかしたのは私だ、責任も私が取る

作者: 栗田不甘(くりた ふかん)
三井鈴はにこにこと微笑みながら受け取り、唇に当てて一口飲んだ。

搾りたてのオレンジジュースは甘く、口の中にオレンジの香りがいっぱいに広がった。「田中さんのジュースはやっぱりひと味違うわ。すごく美味しい」

田中仁は思わず笑みを浮かべ、彼女の鼻先を指でそっとつついた。「気に入ったなら、これからもいっぱい絞ってやる」

三井鈴はおどけたように笑った。「じゃあ、田中さんに感謝しなきゃね」

「どこ探しても二人がいないと思ったら、ここで二人っきりの時間を楽しんでたのか」

三井助はドア枠にもたれて腕を組み、からかうように言った。「仁くん、最近この子を甘やかしすぎだろ?甘やかしすぎてダメにしたらどうする」

「お兄ちゃん!」

三井鈴は少しむくれたが、隣の田中仁は当然のようにかばった。「私が甘やかしてるんだ、責任も私が取る。何か文句あるか?」

三井助は慌てて手を振って降参した。「いやいや、とんでもない。この子にちゃんと守ってくれる人がいてくれるなら、私としては願ったりだよ!君がそばにいるなら安心だ」

「うん、それが一番いい」

ちょうどその時、三井鈴のポケットで携帯が鳴った。画面に表示されたのは田中陸の名前で、三井鈴の表情が警戒に変わった。

「二人で話してて、ちょっと電話に出てくるね」

三井鈴が出ていったあと、三井助は田中仁の肩を軽く叩き、ふざけた表情を引っ込めて真剣な顔つきになった。

「聞いたぞ、君の家最近穏やかじゃないらしいな。田中おじさんの外の女がなんか動いてるって」

田中仁は三井鈴が残したオレンジジュースをひと口飲み、視線はずっと廊下の外にいる彼女を追っていた。「長年の愛人が正妻の座を狙うなんて、別に珍しくもない」

三井助は眉をひそめた。「田中おじさんもあの女を甘やかしてるってことは、かなりの切り札を溜めて勝負に出る気なんだな」

田中仁の声は一片の揺らぎもなかった。「ただのギャンブラー心理だ。勝てばもっと勝ちたくなる、負ければ取り返したくなる。棺桶を見るまで泣かないってやつだ」

「東南アジアの一支部なんて、野心家が納得するはずがない」三井助ははっきり言った。「どうせ目的を果たすまで引かないつもりだろう」

田中仁は鼻で笑い、軽蔑を隠そうともせず言った。「それも実力があればの話だな」

三井助は田中仁のやり方をよく知っていた。敵に対しては一切容赦しな
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