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1万メートルの空から、愛は墜ちた
1万メートルの空から、愛は墜ちた
Author: 流星群を抜け出したら

第1話

Author: 流星群を抜け出したら
【2人とも、おめでとう】

そう書き込むと、祝福のコメントが次々と流れてきた。

【大勢の人を救った機長さん、幸せになってほしい】

【男の子が駆け寄って「パパ!」って呼んだところ、ほんと泣いた】

私の書き込みも、あっという間にその中に埋もれてしまった。

誰の目にも留まらないまま。

そのとき、スマホが鳴った。

透也からだった。

電話に出ると、向こうは騒がしかった。空港のアナウンスに混じって、子どもの泣き声も途切れ途切れに聞こえてくる。

けれど、透也の声はひどく冷たかった。

「今日は見てる人が多いんだ。こんなときに騒がないでくれ。

小春と子どもはもうカメラの前に出てしまった。あの2人に恥をかかせるわけにはいかないんだ」

スマホを握る手に、少しずつ力がこもる。

「じゃあ、私は?」

透也は答えなかった。

長い沈黙のあと、疲れたようなため息が聞こえてきた。

「夏葉、俺たちのことはまた今度話そう。

でも、星真はもう全国の人に顔を知られてるんだ。

小春とあの子には、ちゃんとけじめをつけないといけない」

星真(せいま)。

その名前を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。

透也と付き合って間もない頃、2人で山の上へ星を見に行った。

私は彼の肩にもたれ、笑いながら尋ねた。

「ねえ、いつか私たちに子どもができたら、何て名前にしようか?」

透也は私を見下ろすと、そっと額にキスをした。

「星真。星空の『星』に、真心の『真』。

夏葉も、いつか生まれてくる子も、俺にとっては神様からもらった一番大切な贈り物だから」

けれど、その後、私のお腹に宿った3人の子どもは、誰1人生まれてこなかった。

それなのに透也は、あの名前を小春の息子につけたのだ。

画面の中では、小さな男の子が大勢の人に囲まれていた。

その姿を見つめていると、胸の奥がずきりと痛んだ。

私が思い描いていた未来まで、あの2人の家族の幸せになっていた。

そのとき、家族のグループチャットに母からメッセージが届いた。

【夏葉、もう見たのね。それなら、お母さんもこれ以上隠しておけないわ。

小春がずっと止めてたのよ。夏葉には言わないでって。

透也のことをあんなに愛してるんだから、本当のことを知ったら耐えられないんじゃないかって心配してたの】

画面に並ぶ文字を見つめたまま、体が固まった。

すぐに父からもメッセージが届いた。

【ここ数年、小春はずっとお前に気を遣ってくれてたんだぞ。

あの子が優しかったからこそ、透也も今までお前と別れずにいてくれたんだ】

続けて、母からもメッセージが届いた。

【小春は本当に優しすぎるのよ。

本当に愛し合ってるのは小春と透也なのに、ずっと夏葉を傷つけたくないって気にしてたんだから。

夏葉ももういい大人なんだから、少しはわかってあげなさい】

思わず声を出して笑ってしまった。

笑っているうちに、涙がぽろぽろとスマホの画面に落ちていった。

そうか。

みんなで私に隠していたのは、裏切りなんかじゃなく、私のためだったんだ。

小春が私の恋人を奪い、彼の子どもまで産んだことが、両親には「優しさ」に見えるらしい。

ほどなくして、母から音声メッセージが届いた。

再生すると、母のひそめた声が聞こえてきた。誰かに聞かれるのを気にしているようだった。

【夏葉、つらいのはお母さんもわかってるわ。

でもね、せいちゃんは小さい頃から私たちにすごく懐いてるの。ついこの前も、じいじとばあばに会いたいって言ってたのよ。

まだ3歳なの。そんな小さな子と張り合うのはやめてちょうだい】

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