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第2話

Author: 冷凍梨
楽しそうな雰囲気の中、私は早めに退場した。

家に戻った時、もう深夜だった。

窓の外を見れば、いつの間にか雨が降り出した。曇った窓ガラスには、薄い結露ができた。その中に反射しているのは、寂しくて孤独な私の姿だった。

この家は、川辺に建てられた40坪以上の広い一軒家で、優れた生活環境に恵まれている。そう広くない東市では、市民みんなの夢のような住宅である。

しかしこのような立派で暮らしやすい家で、常に私一人しかいなかった。

時計の針がそっと0時に回った。ということは、今夜八雲はまた帰らないだろう。

そう思った瞬間、ドアが開けられた音がした。

困惑の目でドアの方を向いたら、ふらふらしてここに近づいてくる男の姿が目に入った。

八雲はまさかお酒を飲んだの?

鍛えられた男の腕が私の腰に回って、その体で私に押してきた。

侵略しているように。

私はよろよろと後ろに2歩下がったが、掃き出し窓の前まで押されて、逃げ場もなかった。雪の中に立っているヒマラヤ杉の匂いと八雲の身についている独特な匂いが混ざって、鼻に入って、もやもやさせられてきた。

「紀戸先生はかなり飢えてるね?」

自分の口調から皮肉さと、悔しさが聞こえた。

良く考えたら、私たちが前回やったのは、もう半年以上前のことだ。

八雲が今夜いきなりやる気満々になった原因も、明らかだった。

「久しぶりなのに、恋しく思わないのか?」

その吐息混じりの低い声が私の耳元に響いた。まるで耳周りの肌がアリに噛まれたように、くすぐったかった。

結婚初夜に、自分がこの一見クールな男に布団の中でめちゃくちゃにされた光景がつい頭に浮かんでしまった。そこで私は、一瞬で弱気になった。

その瞬間、八雲は片手で私に顎クイして、帝王のように強制的に私の唇を開かせた。無反応な私を見て、キスしながら、「優月、大人しくしろ」と言った。

深くて焦りを感じるキスだった。普段バリバリのあの姿がまるで幻のようだった。

ものすごい独占欲が感じられた。

発した声にも、宥めているような甘さがあった。

愛されていると錯覚させた。

私の誕生日すら覚えていないくせに。

「よそ見するな」

私の唇は強く塞がれて、淀んだ息が耳元で漂っていた。突然、八雲は更に力を入れた。

「抱きしめて」

目の至るところに、私たちの影が掃き出し窓の横に重なって、ぼやけながら揺れていた。

やり終わった後、男はまたいつものクールな感じに戻った。

私が風呂場から出てきた時、八雲は窓の横で誰かと通話していた。その時、その人はすでにスーツに着替えた。白いシャツにスーツパンツ、肩幅が広く見えて、腰が細く見える格好で、更に体格がよく見えた。

声質も相変わらず低くて強気だった。

「お義母さん、そんなに焦らないでください。子どもの件はスケジュールに入れたから」

まさか私の母、加藤(かとう)さんからの電話だとは。

母は私たちの子どものことになると、いつも誰よりもうるさかった。

昼夜を分かたずに。

でも、「スケジュールに入れた」とはどういうこと?もしかして、八雲は子作りの予定ができたのか?

話しに割り込もうとしたら、ふと視線が男の眼差しと合ってしまった。

たった一瞬だったが、その目から溢れ出る嫌気が見えた。

しばらくしたら、八雲は電話を切った。

私は横に座っている八雲と見つめ合っていた。先程の電話のことについて、母の代わりに謝ろうと思ったら、八雲が先に口を開いた。

「明日の朝に会議があるから、先に病院に帰る。それと......」

八雲は一瞬だけ話を止めて、ドレッサーのほうをちらっと見た。そして淡々と「薬を忘れるな」と言った。

言い終わったら、すぐに寝室から出て行った。ようやくその言葉に意味に気づいた私はドレッサーのほうを向いて、目に映ったのは避妊薬だった。

兆しもなしに、心臓が一瞬止まった。それから激しくドキドキしてきた。それに連れて、鼻の奥もツーンとなってたまらなかった。

分かるべきだった。強制的に私と結婚させられた八雲は、私と紀戸家の子供を作るわけがないって。

それに契約期限は3年間。最後の3ヶ月しか残っていないのだ。
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Comments (1)
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おすがさま
薬飲まないで子供作っちゃえばいいのに…… でも、早く別れた方がいいからちゃんと避妊薬飲んだ方がいいよ。
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