Home / 恋愛 / Load of Merodia 記憶喪失の二人 / 12.王都 グリージオのエルとレイ

Share

12.王都 グリージオのエルとレイ

last update Last Updated: 2025-05-15 17:00:00

「これにサインを……」

 グランドグレー地大陸の心臓部、王都 グリージオ。

 その城内の執務室で、久々に帰還したエルンスト王は執務に追われていた。

「……」

「サイン……」

「……もう逃げたい」

 溜まりに溜まった書類の海。『後は、王からGOサインを貰うだけです』となった物だ。

 自慢の長い金髪は乱れに乱れ、上着も乱雑に着崩し白いシャツ一枚の姿で額に手を当てる。

「はぁ〜。気が遠くなるな」

 まさに外見だけは、皆がイメージする地位も名誉も美も兼ね揃えた王……なのだが、その生活は実に一般的なのであった。

「こんなのお前がやればいいよ。許可するよ。代理で『レイがサインしてもいい』って……」

「それをやってお爺様が失敗してたろ」

 そばにいる男はエルンスト家に代々仕える側近でレイルと言う。王にとって早くに亡くした両親の寂しさを紛らわせてくれたのは、幼馴染だったレイルのお陰でもあった。

「気がおかしくなりそうだ……」

「はい次 ! 」

 二人ともリラと並べば見下ろす程背が高い。レイの黒髪と、本人が好んで身につけるモノトーンの衣服を見た王都の民は、レイを『王より出しゃばらない立場をわきまえた男』と認識している。

 残念ながらそれも誤認で、単純に個人的趣味な上に王に対して横暴である。

「前科があるんだから、お前がやらなきゃ駄目だろ」

「前科ぁ ? 前例って言え。

 レイの祖父が、抵当に読まずにサインしまくったからバレたんだろ。同じ敷地に二軒もギルドが出来たり、輸入品を二重購入したり。……飢饉の時に、一羽でいい生け贄の鶏が、二羽死んだから聖堂が騒いだとか……」

「俺の家系に罪を擦り付けるな。当事者が騒がれるような事をしたんだから……仕方ない

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   12.王都 グリージオのエルとレイ

    「これにサインを……」 グランドグレー地大陸の心臓部、王都 グリージオ。 その城内の執務室で、久々に帰還したエルンスト王は執務に追われていた。「……」「サイン……」「……もう逃げたい」 溜まりに溜まった書類の海。『後は、王からGOサインを貰うだけです』となった物だ。 自慢の長い金髪は乱れに乱れ、上着も乱雑に着崩し白いシャツ一枚の姿で額に手を当てる。「はぁ〜。気が遠くなるな」 まさに外見だけは、皆がイメージする地位も名誉も美も兼ね揃えた王……なのだが、その生活は実に一般的なのであった。「こんなのお前がやればいいよ。許可するよ。代理で『レイがサインしてもいい』って……」「それをやってお爺様が失敗してたろ」 そばにいる男はエルンスト家に代々仕える側近でレイルと言う。王にとって早くに亡くした両親の寂しさを紛らわせてくれたのは、幼馴染だったレイルのお陰でもあった。「気がおかしくなりそうだ……」「はい次 ! 」 二人ともリラと並べば見下ろす程背が高い。レイの黒髪と、本人が好んで身につけるモノトーンの衣服を見た王都の民は、レイを『王より出しゃばらない立場をわきまえた男』と認識している。 残念ながらそれも誤認で、単純に個人的趣味な上に王に対して横暴である。「前科があるんだから、お前がやらなきゃ駄目だろ」「前科ぁ ? 前例って言え。 レイの祖父が、抵当に読まずにサインしまくったからバレたんだろ。同じ敷地に二軒もギルドが出来たり、輸入品を二重購入したり。……飢饉の時に、一羽でいい生け贄の鶏が、二羽死んだから聖堂が騒いだとか……」「俺の家系に罪を擦り付けるな。当事者が騒がれるような事をしたんだから……仕方ない

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   11.互いへの賛美歌

     雪山の村から出発して二日目の夜。 旅に慣れない二人でも何とか魔物に遭遇すること無く麓の村に辿り着いた。「えっと……雪……」「雪国 アリアへようこそ……だな」 一応、半分まで読めたけど……文字もあやふやだな。「セロに比べて、わたしの方が記憶が抜けてるよね ? やっぱり個人差はあるかな……。文字とか読めないのは困る」「その時は俺が目になるだけだ」 うぐぐ。何その……。 昨日も思ったけど、無意識に殺し文句言い過ぎじゃない ? これから酒場のステージを回るんだよ ? これじゃ記憶が戻んないうちから女の子を勘違いさせそう ! ……そして女性に絡まれて、倒れてわたしが介護する──までセットで見えるようだわ……。「この時間だとお店はやってないね」「そうだな。武器屋より、お前はギルドに行きたいんじゃないのか ? 付き合う」「あ、ありがとう……」 大事にはしてくれるんだけどな。DIVAを持ってるからって本人は言い張るけど、あんな山賊ののさばる場所に単身探しに来てくれるんだもん、感謝しなきゃね。 多分セロは自分で思ってるほど冷酷では無いんだ。 それに宮廷楽長を目指すだけなら、歌い手なんていなくても問題無さそうだと思うけどな。 アリアの村は栄えてるとは言えないけど、雪を被った建物がどれも頑丈で、窓の灯りが暖かく見える。 村の大きな十字路に来ると、レンガ造りの建物を挟んで大きな木造建築がギルドだった。結構、人が多い。村全体は静かなのに、明らかにギルドだけが騒音レベルで騒がしい。「すごい人……」「雪山へ向かう為の入山手続きだな」 人を掻き分けて掲示板まで進む。 貼られてるメモはそんなに多くない。

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   10.西と北

     グランドグレー大陸の最西端。 モモナと言う巨大な船が立ち入る港町がある。 モモナ港はギルドの定期船や輸出入の行商が乗り付ける為、多くの人が集まる上、町には城がそびえ建っている。城下町は観光も冒険者も多く、眠らない街として存在する。 そんな賑わうメインストリートの武器屋。リラのメンバーの一人が立ち寄っていた。中背で程よく筋肉質な身体に、燃えるような赤い髪の男だ。 現在リラとセロは、グランドグレー大陸の中央部からやや北部にいる。リラが振り落とされた際、ゴールドドラゴンの飛行速度は予測より早かった。シルバードラゴンに残ったメンバーもその戦闘に手こずった後、バラバラになっていたのであった。 リラと一つ違うところは、『彼ら』は有事の際、どこに再び集合すればいいのか覚えている事だ。 男は武器屋をしばらく眺めた後、鍛治職人に声をかけた。「すんません。あの双剣、いいなって思うんですけど、改造お願いします」「ん。素材、見せてみな」 荷袋からゴロゴロと武器の素材をカウンターに転がしていく。「ほう、兄ちゃん。やるねぇ」 どれも高級素材。こんな大きな武器屋でなければ、鍛治職人も目に触れる機会の無いだろう希少な物ばかりだった。「へへー ! でしょ !? 」 調子に乗ってヘラヘラと笑う辺りが、派手な外見に似合わず素直というか、単細胞で根が素直な男なのだ。年齢は成人であるリラの一つ下、17歳。 この男が双剣の持ち主、カイである。「属性の追加と、グリップもこの素材でカスタムして欲しいんすけど……。あとは残りの素材で予備も作った方がいいかなぁ〜」「それなら結構、値が張るけど大丈夫かい ? 」「メインで使うから惜しまねぇっす。今まで使ってた相棒がさぁ、パーティのメンバーに貸したんだけど、帰って来なくて…… ! 」「そいつぁ、マナー違反だなぁ。ちゃんと返して貰いな」「あー違う違う。『返らない』じゃなくて『帰らない』んす」「…&h

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   9.狂曲

     セロの弓が滑る。 音が………… !! 次々に身体を抜けて行く。 スピードナンバーなのにちっとも嫌らしい早弾きに感じない爽快感。 これに合う歌を……。 いける。無理に伴奏に合わせなくても歌が始まりさえすれば主旋律を握れる。 大きくブレスをし、第一音をロングトーンから始める。 鳥が飛ぶような颯爽感とぴょこぴょこ歩く様な可愛らしさ。「〜〜〜っ !? 」 セロの狐弦器が転調した。 理解しろ ! 大丈夫。このメロディも決して奇抜じゃない王道。 なんなの、この歌いにくさ ! さっきまでのユニークなイメージが無くなった。 イメージして ! 遥か遠くへ。いずれは飛び立ち、知らない国の空を優雅に飛ぶ、力強い自然生物。その眼に映る景色はどんなに美しいだろう。「はぁ……っ ! 」 何とか間奏まで歌いきる。 どこまでが休符 ? 演奏はまだまだ進んでるし、止まる気配も無い。間奏だって決めているのはわたしだけ。 次に入るタイミング……急げ ! 「……」 セロの鋭い視線が怖い。 自分の手元を見てはいるけれど、わたしの様子を伺ってるのは言うまでもない。 早く再開しないと。分かっていても目紛しく変わる旋律。違和感が無い、完璧に研ぎ澄まされ、練られたメロディ。この分だと尺もありそうだし、歌いきるよりも分けてシーンを作れば良かった。 また一度に歌いきったら次こそ、どん詰まりになるのは言うまでもない。「……」 どこから入る ? いえ、それはDIVAが教えてくれるはず。 流れていく旋律を聴き続け、その瞬間が来た。「っ……… !! 」 声が

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   8.魔銃の戸惑い

    「リラ !! 」 薄らと意識が戻る。い心配そうに覗き込むセロの顔が見えた。「セロ……わたし……」 なんだっけ ? どうしてここにセロがいるの ? そうか……後からわたしを見付けに来てくれたんだ……。「怪我は !? 」 怪我 ? 凄い剣幕……頭が追いつかない。 わたし、寝てたんだっけ…… ? なにかの不快感で自分の手を見る。そこには見慣れない銃が握られていた。「きゃっ !! 」 思わず放り投げ、そして周囲の異常に気付く。 頭蓋や胴体の吹き飛んだ人の残骸。「…… !! ち、違う ! わたしじゃない ! 」「いや、お前が銃を手に……」「わたしじゃないんだってば !! 」 そうだ ! 何かが !! 誰かがわたしの中にいた !「リラ、もういい。出よう」「セロ……でも……」 セロは狐弦器を背負ってた。そういえば、最後にそれを見た記憶がある。その後、記憶が途切れ途切れに……。「山賊……よね ? これ、人だよ ? わたしが…… ! わたしがやったの !? 」「多分そう」 わたし、人を殺したの ?「山賊の根城に女一人誘拐された。正当防衛だろ」 本当はそんな簡単な問題じゃないよね。 でもセロはわたしの肩を持とうとする。「覚えてない ? 」「途切れ途切れなの。 テントにいたら物音がして、頭を出したら捕まっちゃった。

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   7.混濁

    「呪文無しで魔法を…… ? 」 焚き木を目の前に、なかなかお肉に手が伸びない。 でも結局、セロに内緒にする訳にはいかないと思った。「わたし……魔族だったりするかも……」「かもな」 セロは頷いて、焼けたウサギにかぶりつく。「そんな簡単に…… ! 」「だって。今、悩んでも仕方ないだろ。それに魔族って見た目は人と同じらしいじゃん。言わなきゃバレないし、なにか不都合あるの ? 」「……ち、違う。そうじゃなくて ! セロは魔族かもしれない人と旅するようになるんだよ !? 」「魔族ってなにかやばいのか ? 」「え…… ? 」 だって魔族だよ ? 魔王のお膝元として栄えた黒魔術を使う一族。そんなのが道中、王国なんかで身バレしたら……死刑に……。「魔族って精霊魔法も使うのか ? 」 言われて見れば、わたしは火の水の魔石を持ってるから、精霊と契約してるって事だよね。 魔法石を手に取り確認する。 魔力を感じるし、契約してなかったらただの石に見えるはず。「使えると思う……」「魔法の使い方をはっきり思い出した訳じゃないんだし、考え込むのは早いんじゃない ? 」 そうかも。 もしわたしが魔族だったとしても、魔王の住む地に帰ろう ! とは、ならないもんね。「歌出来ればそれでいい」 安易な……。でもちょっとホッとする自分がいる。「そうだね。考えすぎも良くないかも」 焼けた肉を火から外し頬張る。「美味しい ! セロは弓使いなんだね。結構上手いの ? 」「どうかな。狙った時、いつ矢を摘んだ指を外

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   6.詠唱

     太陽が雲にかかり、白く光る。  雪の反射でチカチカしなくて、このくらいが歩きやすい。  手付かずの綿のような雪が真ん丸と河原の岩に乗っている。  温薬樹と言う木を煎じた物を持たされて来た。その煮出す前の物も。これは人間の体感温度を調整するもので、雪国では重宝されている。飲むだけで寒さを体感しにくくなるほど体温維持が出来る。わたし、こういう知識は残ってるんだよね……。他の雪国にも、旅した事……あったのかもな。  セロは相変わらず無言モード。  でもこれが彼の普通だから、もう既に慣れてきた。さっきの会話もそうだけど単純に不器用なんだな。「出発が昼過ぎだったし、今日は早めに場所を考えないとね。きっとこの雪山じゃあ、暗くなるのも早いもん」「ああ。麓の村まで早い人でも一日はかかるのらしいからな。  そういえば、魔法で焚き木に火とか……出来る ? 」「無理無理。魔法の使い方覚えてないもん」「あ、そうか……。大丈夫だ。火打ち石は持ってるし。食料は ? 」「遭難してもこれ一本みたいなクッキーをね。村長の奥さんに貰ったよ」 袋から取り出して見てみるけど、どうにも成人のわたしたちが満足するような量じゃない。  そばの清流を見ると薄氷の隙間から魚影が見える。「あの魚……釣れないかな ? 」「前にジルがやってたけど、釣りは慣れないと難しいらしい。一日粘って釣果は一匹だったよ。レオナが勝ち取って……あの時はすごく怖かった……」「あの二人って……」「多分、網か何かで仕掛けを作らないと無理だ。素人の垂らした餌なんか見向きもしない。  俺、なんか食えそうなもの探してくる」「え、最強クッキーじゃ駄目かな ? 」「それはいざと言う時の物だろ ? 」 いざと言う時……に、なりたくないけど。「分かった。じゃあ、わたし火を起こしておく。火打ち石貸してくれる ? 」「そうしてくれ。戻る時も目印になってありがたい」 セロはわたしに剥き出しの火打ち石を渡すと、藪の中に入ってい

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   5.DIVA

     まず通常の魔法石の知識よね。同じならちょっと安心。「魔法使いは『魔石』……地方によっては『魔法石』を六つ持つ。六芒星の紋の上に、契約した精霊から魔石を貰って使う。  合ってる ? 」「俺もそう聞いてる。でも魔法石、見た事なかった。ギルドでも魔法使いって週に一人見かければ運がいい方ってジルが言ってた」「確かに、あのギルドにも魔法使いっていなかったな。  わたしはベルトに付いてるよ。コレ」 インナーを捲ってベルトの六芒星を見せる  た。「ヒッ !! 」 セロは清流沿いの道中、巨大な岩石に手を付いて震え出した。 何もしないよ ! 「……ねぇ。会話の流れ的にちゃんと見ようよ」「急に腹を出すから何事かと……」 何事でも無いの ! 「続けるね ?  武器屋のおじさんに聞いたら、タリスマンが一つに、四個が火属性、一個が水属性なんだって。火に全振り状態なのが意味わかんないけど……まぁ、この六芒星が無いと魔法は発動しない仕組みだよね ? 」「ああ。そう。  なんで歌の魔石は単体で使えたのかって聞きたいのか ? 」「分かってんじゃん。教えてよ」「……。見てもいい ? 」「うん」 わたしは首からネックレスを取り出すと、その石をセロの手に乗せる。「……〜〜〜」「え !!? なんか首とか顔……急に湿疹出てるけど…… ? 」「石が体温で生暖かくて、ゾッとした」「……そう」 わたしだって生きてるんだから、仕方ないよ。  直接触れた訳でもないのに……。た、確かに今の今まで胸の間にあったけど……。「これは希少石で『DIVA』って呼ばれてる。名前のまま、歌姫の石」「ディーヴァ……」「産出地不明。ただ伝承は残ってて、石が採掘された時、その国は極めて不安定だった。最初はなんでもない石だったけど、採掘場の男の一人が持ち帰り、研磨すると綺麗な青色の輝石だった。男は自分の娘に石を持たせると、娘は突然次の日から大人たち全員を歌一つで魅了し、やがて王家の人間まで上り詰めた。  この石は……持ち主を意のままに歌人にし、聴く全てを虜にする呪いがあるらしい。  そんな伝承がある」「呪い…… ? こないだ聴いてたお客さんはなんともなかったけど……暗示みたいな事なのかな ?  それにしても、おとぎ話みたいな伝承だね……。セロはそういう話、他にも覚えてる

  • Load of Merodia 記憶喪失の二人   4.雪原の旅立ち

     無理なんじゃないかな。  どちらかって言うと無理じゃなくて、絶対無理なかって。「よし、村長の紹介状持ったな ? 」 天気は晴天 !  降り積もった雪が真っ白で、目がチカチカするくらい日光を浴びている。すぐ側には砕いた氷のような雪山が連なってる。  村を出て道を川沿いに歩けば麓の村に着く。 とは言え、記憶のないわたしにとって初心者の雪中行群だよ。しかも問題はそれだけじゃない。「う……。あの……流石に今日から急に二人きりって無理があるんじゃないかと思うの」 レオナの勢いに乗せられて、今日からセロと二人で旅をする事になった。  なんで ?  いえ、わたしが知りたいくらい。「一箇所に留まってるより、あちこち動いた方がいい ! 掲示板に張り紙して仲間を探した方が絶対早いって。  掲示板の情報は、まとめて情報屋が各ギルドに配り歩くシステムなんだから、いずれ仲間が見たら気付くだろ ? 」 聞きたいのはそっちじゃない。「セロとあの夜の後、一度も話してないんですよ ? 会うの二回目が出発当日って ! 魔物がいるような地域で外に放り出されるなんて ! 気まずいじゃないですか ! 」「いやいや。あいつは何回顔合わせても気まずいからさ。どーせ喋らないし。  あいつはそういう……草 ? とか〜……ん〜小動物 ? とか、そんな風に見てればいいでしょ。無害よ無害 ! 」 必要な物は辛うじて揃ってたからいいとして、まだ見ぬ「カイさん」の双剣も持った。でも魔法用の魔石は使い方が思い出せないし、戦闘能力は皆無に等しいわたし。  それから……歌魔法の魔石。  装備の中、胸元に光る青い煌めき。歌った時は確かに金色だったのに。この詳細も全く分からない。「大体、セロの方が歌の旅に出ようってあんたを指名して意気込んでる訳だしさ。  いやぁ〜、あたしもジルも最初はびっくりしたくらいだよ。あいつにそんな自立心あったんだってさぁ〜。  ま、変な下心を持つタイプじゃないと思うよ」「会話も成り

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status