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53.グリージオへの疑心暗鬼

last update Last Updated: 2025-07-16 16:00:00

「どいつもこいつも勝手に ! 」

 戦えない者が旅なんか出来ない ! リコに任せてたらいつか死ぬわ。わたしは自由に出てこれないし……。

「リラ、レイの事はすまない」

「もういいわよ」

 夕刻。

 昨夜と同じ宿しかプラムにはない。昨夜コデに襲われた部屋とは、違う部屋へ通された。どこからどう広まるのか、宿屋も昨日とわたしたちの扱いが格別。夕食は……普通だったわね。まあいいけれど。

 宿に来るまで村の通りを眺めたけれど、人里と変わらない。果物や山菜、それを喜んでかぶりつく子供たち。

 定期的に血を飲まないと、ヴァンパイアの力が失われてしまうなんて難儀だわ。ヴァンパイアの血には魔王から授かった、陽光の下でも生きられる力も入っている。それらを失ったら一個の村として生計して生きていくのは難しいだろうし、昼夜逆転した村など気味が悪いと噂も広まるだろうし。

 そう考えれば、DIVAストーンだけを持ったわたしは苦労がない。これは感謝するべきことなの ? 

 わたしはハーフだったはず。それが分裂するって、本来有り得るわけが無い。

「レイが……わたしをグリージオに連れて帰らなかった意味が分からない」

「俺が思うに……気を使ったんじゃないか ? お前と会えると思って来たら、中身がリコだったんだ。彼も困惑したんだろう」

「……それは……そうかもしれないけど……」

「とにかく、レイとはまた話したいところだが、リラが魔族の気配しかせずこの村で安全に過ごせるなら、今のうちに食べ、睡眠もとって欲しい」

「所有物の管理ってわけ ? 」

「そんなんじゃない。貴女が女王本人だとしたら、俺にとっても伝説で憧れだ。女性は苦手だが、性別云々じゃない。貴女だけは特別な人間だと敬うが ? 」

 まぁ〜た始まった !! 

 こいつ流れるように持ち上げてくる ! 

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