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55話

last update publish date: 2026-09-11 11:03:31

 バッグから鍋とフライパン、その他諸々を取り出した後、二人してキッチンに並ぶ。

 巨大なワニ足にスパイスを練り込む朧が、中華鍋にドポドポと油を注ぐ東条を横目に見る。

(……何やってんだ、俺)

 強さを求めて遠出してきたのに、いつの間にやら弱みを握られ、今は少女の為に飯を作っている。

 本当に何をやっているのか。

 彼は無心でスパイスを掴み、肉をペチペチした。

 そんな時、

「朧はさ、何で身体強化とか、魔法の使い方仲間に教えないん?」

 沸騰を待つ東条が、椅子に座って彼を見た。

「……別に深い理由はないですね。教えたらあいつは迷わず広めるだろうし、そうしたら治安も崩れる。俺も好き勝手出来なくなる。

 そもそもあそこで過剰な戦力はいらないでしょ」

「死んでほしくない、とかないの?」

「……別にないですね。好きでも嫌いでもないし、そろそろ出ていくつもりだったんで」

「ふーん」

 朧がフライパンにオリーブオイルを垂らす。

「最初からあそこにいたの?」

「自衛隊に拾ってもらおうと渋谷から来ました。でも近づけないわ間に合わないわで、一人で生き延びてた時見つけましたね」

「じゃあ結構恩あんじゃ
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  • Real   87話

      教室に取り残された三人は、遠目からその光景を見ていた。 胡桃は恐怖と焦りにパニックになりながら。 馬場はどうすれば良いのか分からず頭を回転させながら。 そしてノエルは、感情を曝け出した東条を嬉しく思いながら。 ノエルは机に座って足を揺らしながら、新が蹂躙される姿を満足気に眺める。 彼女は単純に、東条があの場で怒らなかった事に不満を抱いていた。 彼の大切なモノは自分の大切なモノ。その為に怒るのは自分も嬉しいし、何より、その引き金が彼女自身ということに、むず痒い喜びを感じていた。(ふーん♪ふーん♪……むふふ) 故に今のノエルは、かなり上機嫌なのである。「ノエル!今すぐまさを止めてくれ!」 馬場が叫ぶ。彼女は分かっているのだ。あの状態の東条を止められるのは、ノエルしかいないということを。「何で?」「新が死んじまうからだよ‼」「じゃあ断る」「――っ」 目も向けずあっけらかんと言ってのけるノエルに、馬場は戦慄する。「ノエルちゃん!お願いします!私がちゃんと謝りますっ、新君にも謝らせますっ、何でもしますからッ、だから、お願い!ひぐっ、うぅ」 涙を流し懇願する胡桃に、流石にノエルも視線を向ける。「……ノエルは胡桃も大事。仲良くしたいと思ってる」「はぃ……」「でもまさの気持ちの方がもっと大事。ノエルはまさの為なら人も生かすし、殺す」「そんな……」 胡桃の表情が絶望に染まる。 ――とそんな所に、一人の男がドアを潜って現れた。「ノエル、あれ流石にマズくないか?」「朧もノエルに頼みに来た?」「そうだけど……、この状況を見るに無理そうだな」「理解が速くて助かる」 彼は絶望する胡桃と、それをあやす馬場を見て察する。「あのままじゃ本当に死ぬぞ?あんた等も大勢の前で殺人を犯すデメリットくらい分かるだろ。下手したら今の生活も出来なくなるぞ」「今ノエル達は理性じゃなくて感情で動いてる。たまにはこういうのもいい」「たまにはって……、あんた等いつも欲望のまま動いてんだろ」「……確かに」 朧がこんな時でも呑気なノエルに溜息を吐く。しかし次の言葉に、彼は戦慄した。「……それにそんなの、バレなきゃいい」「……お前、」 その言葉の真意は、この場ではきっと彼にしか分からなかっただろう。直に彼女の冷たい部分に触れた、彼にしか。 加えて

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