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21.*****

Auteur: よつば 綴
last update Dernière mise à jour: 2025-06-08 17:00:00

 僕は半ば諦めて、芯を解放する覚悟を始めた。

 こうなってしまっては、芯は離れてゆくだろうから仕方ない。大切なものを失った時は、また僕がどこかで泥に塗《まみ》れればいいだけ。

 芯との日々を思い、後悔よりも泣き顔に熱くなる感覚が蘇る。それももう、二度と湧くことはない。そう思ったけれど、反抗期真っ盛りな芯は、ここで上手く作用してくれた。

「あっそ。アンタのミスくらい、俺がカバーしてやっから。つかもうアンタのじゃねぇんだわ。だからさぁ、馴れ馴れしく俺のに触ってんなよ」

 まさか、芯が僕を取り戻そうとしてくれるなんて、微塵も期待していなかった。僕が流す涙の理由が変わる。

 僕が言うのもアレだが、奏斗さんのイカれた雰囲気に物怖じもせず、対抗できる人が居るなんて思わなかった。

「はぁ? ガキのクセに、口だけは一端だねぇ。ヒーロー気取りかよ。なぁ、お前なんかがコイツ満足させれてんの? コイツ満足させんの、大変だろ」

「あ? 元カレ面ウザイんだけど。ソイツ、もう俺じゃないと満足できなくなってるから。いいからさっさと返せよ。俺のだって言ってんだろ」

 芯は僕の手を引いて、奏斗さんから強引に奪い取った。まだ上手く脚に力が入らず、よろけて芯に抱きつく。

 芯は僕を抱きとめてくれたが、耳元でこう囁いた。

「後で全部聞くからな」

「ま~っ、アツいねぇ。連絡先、変わってないよね? また連絡するから、無視··しないでね」

 口調は穏やかなのに、重くて逆らえない圧が全身を怯えさせる。

 奏斗さんがヒラヒラと手を振るのを、ちらっと盗み見る。不敵な笑みを浮かべているのが怖い。

 震える僕の肩を抱く、芯の手にグッと力が入る。

「うっせぇ! 連絡してくんな」

 芯が悪態をついてくれる。その後は、何も言わずに僕の家まで手を引いてくれた。

 かっこいい芯。けれど、やはりこれで芯に触れるのは最後になるだろう。

 分かっている。芯の言葉の全てが本心ではない事。大丈夫、分かっている。

〜〜〜

 奏斗さんと出会ったのは大学生の時。2つ年上の奏斗さんとは、登山サークルで知り合った。

 出会って半年、山小屋で犯された。僕は、童貞で処女だった。この時の動画をネタに、毎日のようにホテルに連れ込まれ、執拗な調教を受けた。初めの数日は、耐え難いほど苦痛だった。

 しかし、初めこそ怖かったが、奏斗さんは次第に愛を囁いてくれるようになった。僕を可愛いと言い、事の最中には『愛してる』と繰り返した。

 けれど、それは上辺だけの言葉だった。彼には、僕の様な存在が数人居て、僕はその中の1人にすぎなかった。

 愛されてなどいない。既に、彼を愛していた僕は、その真実に打ちのめされた。

 彼の仕打ちは愛の証だ。耐えれば、それこそが愛の証明になる。それが愛の在り方なのだと教えられた。そして、彼は卒業後、一度も連絡を寄越さなかった。

 彼からの連絡を待ち続け、連絡先を変えられないまま。きっとそれも、奏斗さんには見透かされていたのだろう。

 彼からの教えは、今でも僕に深く根付いている。それを信じて、ずっと芯を躾てきた。それが、僕の知っている唯一の愛し方だから。

〜〜〜

 僕の話を聞いて、芯は何も言わずにコーヒーを啜った。何も言ってくれないと不安になる。

 僕も、芯が入れてくれた甘くないコーヒーに口をつける。そして、マグに隠れつつ怖々と芯を覗き見た。

 芯は僕を睨んでいて、その瞳に異様な恐怖を感じる。見た事のない表情だ。

 奏斗さんと再会したからだろうか。僕の身体にも違和感がある。下腹が疼き、酷くされたいと望んでいるようだ。そうして、芯から“愛されている”と勘違いしたい。それでもいいから、安心したいのかもしれない。

 どうにも、あの頃の被虐的な感覚が蘇ってきている。そんな僕を舐めるように見て、芯が口を開いた。

「先生さ、今俺に抱かれたいと思ってる?」

 どうして、こうも察しがいいのだろう。反応に困る。

「残念。俺、絶対先生のこと抱かねぇから」

 これまた予想外だった。チャンスと言わんばかりに、抱き潰される事も想定していた。いや、それは僕が望んでいただけかもしれない。

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     僕は半ば諦めて、芯を解放する覚悟を始めた。 こうなってしまっては、芯は離れてゆくだろうから仕方ない。大切なものを失った時は、また僕がどこかで泥に塗《まみ》れればいいだけ。 芯との日々を思い、後悔よりも泣き顔に熱くなる感覚が蘇る。それももう、二度と湧くことはない。そう思ったけれど、反抗期真っ盛りな芯は、ここで上手く作用してくれた。「あっそ。アンタのミスくらい、俺がカバーしてやっから。つかもうアンタのじゃねぇんだわ。だからさぁ、馴れ馴れしく俺のに触ってんなよ」 まさか、芯が僕を取り戻そうとしてくれるなんて、微塵も期待していなかった。僕が流す涙の理由が変わる。 僕が言うのもアレだが、奏斗さんのイカれた雰囲気に物怖じもせず、対抗できる人が居るなんて思わなかった。「はぁ? ガキのクセに、口だけは一端だねぇ。ヒーロー気取りかよ。なぁ、お前なんかがコイツ満足させれてんの? コイツ満足させんの、大変だろ」「あ? 元カレ面ウザイんだけど。ソイツ、もう俺じゃないと満足できなくなってるから。いいからさっさと返せよ。俺のだって言ってんだろ」 芯は僕の手を引いて、奏斗さんから強引に奪い取った。まだ上手く脚に力が入らず、よろけて芯に抱きつく。 芯は僕を抱きとめてくれたが、耳元でこう囁いた。「後で全部聞くからな」「ま~っ、アツいねぇ。連絡先、変わってないよね? また連絡するから、無視··しないでね」 口調は穏やかなのに、重くて逆らえない圧が全身を怯えさせる。 奏斗さんがヒラヒラと手を振るのを、ちらっと盗み見る。不敵な笑みを浮かべているのが怖い。 震える僕の肩を抱く、芯の手にグッと力が入る。「うっせぇ! 連絡してくんな」 芯が悪態をついてくれる。その後は、何も言わずに僕の家まで手を引いてくれた。 かっこいい芯。けれど、やはりこれで芯に触れるのは最後になるだろう。 分かっている。芯の言葉の全てが本心ではない事。大丈夫、分かっている。〜〜〜 

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