FAZER LOGIN気まぐれな猫のように、夜な夜な男から男へと渡り歩く"天ヶ瀬 夜斗"。 ある日の夜の事だった。夜斗はいつものように酒場で今夜の相手を探していた夜斗は、一人の男に声をかけられる。しかし、その出会いは罠であった。薬を盛られ、路地裏で暴漢達に襲われた夜斗を救ったのは高級なスーツを身に纏った謎の男ーー"京極 玲央"だった。 いきなり現れた彼は夜斗に「僕の所で飼われないか」と話しを持ちかける。 そうして始まった奇妙な同居生活。けれど、玲央には夜斗にだけは知られてはいけない秘密があった。 それは彼が夜斗を探し求め続けていたという事ーー。
Ver mais「やっと見つけた...僕だけの夜。」
まるで猫のようにあっちの男に行っては、次はこっちの男。そうやって男は、"天ヶ瀬 夜斗"は生きてきた。今日も今日とて行きつけの酒場へと行き、男どもを見定める。そうしていると、一人の男が近づいてきた。「君、綺麗な顔をしているね。良かったらご馳走させてくれないかい?」
そしてコッソリと耳打ちしてきた。「いい夢見させてあげるよ?」と。夜斗は「今夜の宿確保」と軽い気持ちで男の誘いに乗った。そして手渡された酒を一気に煽ると、男を誘うかのように腕へと絡みつく。しかし次の瞬間、夜斗の視界はぐにゃりと歪む。男はニヤリと笑う。そして夜斗を路地裏へと連れ出すと、仲間の男達が姿をみせる。
「兄貴ィ、今日は珍しく男なんスね。」
「あぁ。下手な女どもより綺麗だからな。その顔が歪む瞬間が...たまらないよっ!!」男はそう言うと夜斗の顔を思い切り殴りつけた。口の中は血の味で充満している。生憎ケンカはからっきしなのでされるがままだ。これのどこが"いい夢"なのだろうか。夜斗が抵抗しないのをいい事のように男達は夜斗の服を脱がせようとする。「ダメだ。今日はハズレか。」と諦めようとしたその時だった。覆いかぶさっていた男達が吹き飛ばされたのだ。
「テメェ!何しやがる!」
「それは此方のセリフだよ。せっかく見つけたと言うのに...」"見つけた"?突如神のように現れた男に疑問を持ちながら目をやると、男は高そうな綺麗なスリーピーススーツに身を包んでいた。「金持ちそうだな。」そんな感想を抱いているうちに男は暴漢達を一掃すると、夜斗に手を差し伸べてきた。
「大丈夫かい?」
「無事か無事じゃないかと言われれば、後者かな。口の中が血の味でいっぱいだ。」 「...君、家は?送っていくよ。」そう言う男の言葉に、夜斗は「待ってました!」と言わんばかりに男に撓垂れかかる。
「オレ、家が無いんだ。毎日男の家を転々としているんだ。」
「...そうか。それなら一つ、提案をさせてはくれないかい?」 「?」男は夜斗を引き寄せこう言った。
「僕が君の飼い主になろう。だから"僕だけの猫チャン"になってはくれないかい?」
男の背後で月が笑ったような気がした。
あれから2人は甘い一夜を過ごした。幾度も幾度も戯れ合い気が付けば夜が明けていた。「んン...もう朝になるじゃねえか...。アンタ元気すぎ(笑)」「それだけヨルが魅力的すぎるんだよ?まだまだ足りないくらいに...」「ストップ。あんまりガッツクと飽きが来ちまうかも知んねえだろ?今夜まで我慢。な?」「それにアンタ仕事だろ?」そう言われてしまえば玲央も手が出せない。「仕方がない。今のところは我慢しよう。その代わり...また今夜僕のためだけに可愛く鳴いてくれるかい?」「フハッ。欲張り坊ちゃんだな。...いいぜ?お前のテクも気に入ったし...オレ達相性バツグンみたいだし?」「そう言ってもらえると嬉しいよ。...愛してるよ、ヨル。」玲央がそう言った瞬間、夜斗の顔が暗く曇り、下を向く。そんな夜斗を不審に思った玲央は「ヨル?」と声をかける。「...オレは愛だの恋だのする気はねぇよ。ただ、生きていく術が"コレ"だっただけ。この顔に産んでくれた親には感謝してるがそれだけ。オレは"野良猫"の前に"捨て猫"なんだよ。...誰も本気でオレを愛さない。それに、オレも誰も信じない。」「ヨル...」「だから、オレにそんな言葉をかけるな。求めるな。...いいな?」夜斗の闇を宿した瞳に見つめられ、玲央はゾクリとし、一筋の冷たい汗が背中をつたう。「いいんだぜ?オレの事は"都合のいい猫"とでも思ってくれれば。それならオレも気が楽だ。」言葉は軽々しいものなのに、玲央は自分の愛が伝わっていない事を悲しく思った。そして、それと同時に"愛を教えたい"そう思ったのだった。「ヨル。今はそれでいい。だけれど僕は本気だ。本気で君を愛したい。君が信じられないというなら信じられるまで何度でも、なんでもする。「フハッ。...アンタ結構重いな?」「...褒め言葉としてとっておこう。さあ、それより今は朝食をとる事にしよう。トーストと目玉焼きでいいかい?」「アンタが作るのか?」夜斗は驚きの声を上げる。こんな坊ちゃんが目玉焼きとは言え料理をするとは...。そう思ったのが顔に出ていたのか、玲央は「フフッ」と笑う。「こう見えて料理は得意だよ?誰かさんに食べてもらえるのなら、何でも作るよ?」やはりこの男の愛は大きく、重い。自分が押しつぶされてしまうかと思うほどに。
ー浴室での行為も悪くない。そんな感想を抱いた夜はその疲れをとるようにジャグジーに浸かる。「お前、手馴れてるな。男とヤった事あんの?」「いや?女性からは嫌という程お誘いはあるけれど、男性の相手はヨルが初めてだよ。」「...今サラッとモテ自慢したな?」「コノヤロー!」と夜斗は浴槽の中で玲央に戯れつく。玲央はそれを嬉しそうに受け止めると、夜斗に「コッチを向いて?」と言い深い口づけをした。浴室に響くは蜂蜜のように甘ったるい吐息に玲央は満足気だ。「あぁ...こんなにも幸せでいいんだろうか?」「なんだ?急に。もしかしてオレとヤって天国見れたかよ?」「ソッチは自信あるんだぜ?」そう言う夜斗は猫というよりまるで女豹のようだった。「アンタのテクも悪くなかった。いや?寧ろオレの方が天国見たかも。」そう言うと誘うように、絡みつくように怜央に抱きついた。夜斗は思った。コイツが何を企んでいてもいい。この男を手離すのはもったいない、と。「レオ。決めた。アンタを正式に飼い主だとみとめてやる。拾ったんだ。ちゃんと最後まで責任とって面倒みてくれよ?」夜斗の言葉に玲央は満面の笑みを浮かべた。「もちろんさ!ヨル。大事にするよ。君は僕の宝だ...!」「...宝って。野良猫相手に大袈裟だな。」口ではそう言いつつも満更でもない夜斗であった。「さぁ、そろそろ上がろうか。のぼせてしまうよ。」「それもそうだな。...な。ベッドで続き、しようぜ?」「ヨルが望むのなら、望むままに。」玲央はそう言うと夜斗の手を取りそっと口づけを落とす。その様子に夜斗はゾクリと欲が身体を駆け巡った。"あぁ、この男は自分のモノなのだ"、と。果たして溺れたのは玲央?ーそれとも...。
夜斗と玲央はフレンチを楽しんだ後、直ぐさまタワマンへとトンボ帰りをした。夜斗はリムジンの中で、酔い醒ましに買った水をゴクリと飲んだ。酒に酔って火照った身体に冷たい水はよく沁みる。「ハァ...食べたし飲んだなぁ...」「満足してくれたかい?」「飼い主初日としては合格!アンタ一体何者なんだ?それくらい教えてくれよ。こうして専属の運転手がいるくらいだし、さぞ良いとこの坊ちゃんなんだろ??」夜斗がそう言うと玲央は少し考え込むように黙った。なんて答えようか。そう考えているようである。「...何処にでもいる会社経営者の息子だよ。他のところよりは大きい会社だけどね。」「てことは次期社長?!オレとそんなに歳変わらなそうなのに。てかアンタ今いくつ?」「28才だよ。」夜斗は驚いた。まさか自分より2つ年下だったとは...。「オレは年下に猫扱いされてるのか...」「はは。君は年上に見えないから大丈夫だよ。」「...ディスってんのかよ?」「人聞きの悪いこと言うなぁ。ホラ、着いたよ。僕らの家に。」喋っているうちにタワマンへとたどり着いたようだ。そうだ。あのジャクジーを楽しむんだった。「なぁなぁ!ジャクジー!ジャクジー入りたい!」「...ホント、ヨルは猫のようにコロコロと気分を変えるね。見てて飽きないよ。」「早く早く!」と玲央を急かす夜斗に玲央はクスリと笑う。そして最上階の部屋に着くとそこら中にポイポイと服を脱いでいく。パンツ一丁になった所で浴槽にお湯をはる。待っている間あの無駄にでかいベッドに飛び込もう。そう考えていると夜斗は玲央に手を引かれ抱きしめられる。「お、おい...?どうした?」「ヨル...君はいつまでも変わらないでおくれ。」「?どういう事だ?...まさかあれくらいのワインで酔ったか?」「酔った...そうだね、僕は君という存在に酔っているかもしれないな。」そう言いながら玲央は夜斗の頬に手を添えて口付けを交わした。酒の味がするキスは何度もしてきたので慣れている。酒臭いはずなのに、自然と嫌な気はしない。あぁ、気持ちいいな。そう思いながら夜斗は玲央のスーツを脱がしていく。「...一緒に入るか?」「魅力的なお誘いだ。...断るはずが無いだろう?」そうして二人は浴室へときえていった。
夜斗は野良猫の様に警戒心を静かに持ちながら玲央の後に着いてタワマンの外へと出た。そしてここへ来た時に乗っていたリムジンに再び乗り込む。「さぁ、ヨル。約束通りフレンチを食べに行こうか。」「!フレンチ...!!」...警戒心は何処へやら。"フレンチ"の言葉に釣られて夜斗は涎を垂らした。そんな夜斗の様子に玲央は微笑ましいものを見る目を向けた。そしてリムジンを走らせると、いつもの酒場の前を通り過ぎ、高級フレンチ店へと辿り着く。店内に入ると玲央は店員に何やらカードを手渡していた。「?なんだ、そのカード。」「ここは完全会員制なんだよ。だから予約なしでも来れるんだ。」「...今までにも高級店に連れてって貰ったことは多かったけど、ここまでスゴい所は...初めてだ...。」夜斗はキラキラと目を輝かせながらこれから食べる料理に心を踊らせ席に着く。そして、アミューズ、オードブル、スープ、メインディッシュ...と次々と料理が運ばれてくる。それを慣れた手つきで口へと運ぶ夜斗に玲央は感心した。「驚いたな...。ここまで手慣れているなんて。作法がとても綺麗だ。」「パパや男どもの中には金持ちが多かったからな。こういう場所でのマナーは一通り身につけてある。」「...気に食わないな。」「え?何?」ボソリと呟く玲央に夜斗は聞き返すと、玲央は笑みを顔に貼り付け「何でもないよ」と答えた。「あぁ、そうだ。これを渡しておこうと思って。」そう言う玲央の手には黒いカードが。「?なんだ...ってコレ...ブラックカード...」「これで好きなだけ買い物していいよ。あ、勿論ネットでね?外に出る時は僕と一緒の時だけ。」「ヨルは僕の飼い猫なんだから、分かるよね?」とサラリと軟禁宣言をしたのである。オレはもう自由気ままな野良猫には戻る事は許されないのだろう。そう悟った夜斗なのだった。「...まぁいいぜ?アンタがオレを満足させてくれるような男であるのなら、な?」そう言うと夜斗はワインを口に含む。その様子に玲央は満足気にニコニコと笑うと、「君を満足させられる男になれるよう、努力しよう。野良出身の猫が逃げないようにするのが飼い主の役目だからね。」と言う。ワイングラス越しに夜斗を見つめながら。