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第46話 かくれんぼサークルの実態⑤

Author: 霞花怜
last update Last Updated: 2025-06-30 19:00:23

「乱交もよくはないけど、薬剤が使われたかもしれない状況は危険だ。オーバードーズで最悪、心停止する懸念は否めない。特にotherの興奮剤は日本では未だ禁忌の薬剤だ。どの程度で副作用が出るかも治験データがない。何より薬事法違反だね」

 冷静に話す理玖に、晴翔が前のめりになった。

「乱交だけなら、酒でも飲ませて好きにヤらせとけばいいでしょ。薬まで使ってセックスさせる状況が、ヤバくないですか?」

 乱交も性犯罪として逮捕される可能性があるので、ヤらせといていいわけでもないが。晴翔の焦りには同意だ。もっとヤバい事実が他にある。

「本当に興奮剤を使ったかは、わからないけど。性交を強要するための集会である事実が、いけない。思考力を低下させる環境を作り、意図的に興奮を煽って性交させる。同意を取っていても強要と呼んでいい状況だ。だからこそ、何か目的があるはずだ。恋人やセフレ探し程度じゃない。もっと深い、何か……」

 晴翔が息を飲んだ。

「その乱交集会の後から、積木君と深津君、白石君とは連絡が取れないんだよね」

 真野が蒼い顔のまま頷いた。

「俺とは、連絡取れないです。けど、祐里の親には、祐里からメッセあったみたいで。友達の所に泊まってるから心配しないでって。でも、それ自体がおかしいんだ。祐里は慣れない奴の所に泊まれるような性格じゃないし、俺に何も言わずに行ったりもしない」

 どうやら深津祐里は内向的な性格らしい。加えて真野祥太にかなり依存した性格をしている。幼馴染というよりは恋人のように聞こえる。

「真野君はさっき、積木君のメッセは本人じゃないと思うと言っていたよね。深津君のメッセも、本人じゃないと思うの?」

 理玖の問いかけに真野がきっぱりと頷いた。

「大和と凌は一人暮らしだから、

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