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第10話

作者: アスカ
「違うの、涼太!」

美津はたちまち涙をこぼし、その場へ崩れ落ちるようにひざまずいた。

「涼太が好きすぎただけなの!青里に奪われるのが怖くて、つい間違ったことをしてしまったの。お願い、見捨てないで!」

泣き崩れながら、彼女は涼太の足へすがろうと手を伸ばした。

だが、彼は嫌悪をあらわにして、その手を振り払った。

「触るな!」

涼太は疲れ切ったように目を閉じた。

「……もう二度と、俺の前に現れるな」

そう言い残し、彼はふらつく足取りで店を出ていった。

私の前まで来ると、足を止めて静かに顔を上げた。

けれど私はもう視線を外し、そのまま背を向けた。

最初に言ったとおり、涼太という男の隣に座るドライブは、私にとって、とっくにゴールに着いていた。

会社を出る頃には、空が夕闇に染まり始めていた。

入り口を抜けると、涼太が一台の車にもたれかかって立っていた。私を見つけた途端、その目がぱっと明るくなった。

急いで駆け寄り、私のカバンを持とうと手を伸ばした。

私は身をかわして避けた。

「青里、見てくれ」

彼は車のドアを開け、助手席脇のボタンを押すと、シートが静かに後ろへ動き
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    「違うの、涼太!」美津はたちまち涙をこぼし、その場へ崩れ落ちるようにひざまずいた。「涼太が好きすぎただけなの!青里に奪われるのが怖くて、つい間違ったことをしてしまったの。お願い、見捨てないで!」泣き崩れながら、彼女は涼太の足へすがろうと手を伸ばした。だが、彼は嫌悪をあらわにして、その手を振り払った。「触るな!」涼太は疲れ切ったように目を閉じた。「……もう二度と、俺の前に現れるな」そう言い残し、彼はふらつく足取りで店を出ていった。私の前まで来ると、足を止めて静かに顔を上げた。けれど私はもう視線を外し、そのまま背を向けた。最初に言ったとおり、涼太という男の隣に座るドライブは、私にとって、とっくにゴールに着いていた。会社を出る頃には、空が夕闇に染まり始めていた。入り口を抜けると、涼太が一台の車にもたれかかって立っていた。私を見つけた途端、その目がぱっと明るくなった。急いで駆け寄り、私のカバンを持とうと手を伸ばした。私は身をかわして避けた。「青里、見てくれ」彼は車のドアを開け、助手席脇のボタンを押すと、シートが静かに後ろへ動き、ぴたりと決まった位置で止まった。「同じ車を買い直したんだ。シートも、青里が一番座りやすかった角度に合わせてある。ボタン一つで調整できる」そう言って、恐る恐る私の表情をうかがった。「前は俺が馬鹿だった。青里専用のポジションメモリーを設定するのを忘れてた。今からでも遅くない。これからは助手席はずっと青里だけの場所だ。誰にも座らせない」そう言うと、ポケットから小さな指輪の箱を取り出し、ゆっくりと開いて私へ差し出した。その声は震えている。「婚約式の会場をもう一度予約した。本当に悪かった。やり直すチャンスをくれ。昔みたいに戻れないか?」夕風が枯れ葉を巻き上げ、私たちの足元をかすめていく。新しい車。見慣れた助手席の角度。それを見つめながら、ふと6年前のことを思い出した。大学を卒業したばかりの頃、一緒に駅から20分以上も離れた狭いアパートで暮らし、彼は毎日駅まで仕事帰りの私を迎えに来てくれた。あの夜、彼はまっすぐな目で言った。「いつか車を買ったらさ。助手席のポジションメモリー、青里専用に設定しておく。座るだけで一番楽な位置になるように。あれこれ動かさ

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