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第14話

Author: 弦音
彼は踵を返して立ち去った。

背後から侑香の泣き叫ぶ声が響いた。追いすがってきた彼女が後ろから抱きつき、顔を彼の背中に強く押しつける。涙が彼のシャツにじわじわと染み込んでいった。

「謙人、行かないで!私が悪かったわ、本当に悪かったの!愛してる、あなたなしじゃ生きられない……」

彼は彼女の指を一本ずつ引き剝がした。爪が手の甲に食い込み、皮膚が裂けて血が滲んでも、彼は止めなかった。

「君は俺なしでも生きていける」

彼は静かに言った。まるで自分自身に言い聞かせるように。

「彼女もそうだ。俺のほうが……彼女なしでは生きられないんだ」

彼は去った。

背後で扉が閉まり、侑香の泣き声を向こう側に閉じ込めた。

彼は廊下に立ち、冷たい壁に寄りかかって天井を仰ぎ見た。

天井の蛍光灯が青白い光を放ち、ジージーと無機質な音を立てている。

人感センサーの照明が何度も消えては、彼のわずかな動きを感知して再び灯るほど、長い間そこに立ち尽くしていた。

スマホが鳴った。智央からだった。

「まだ彼女を捜すつもりか」

謙人は答えなかった。

「どうして彼女を捜したいのか、考えたことはあるか」

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