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第2話

Autor: キララ
海斗は、私たちの関係をちゃんと示してくれようとはしなかった。結婚指輪でさえ、私が一人で選んだものだ。

私がどれだけ頑張っても、海斗は少しも本気になってくれなかった。結婚生活は、一人だけでは最後まで続けられないものだ。

私たちの関係は、きっと壁に飾られたままの、あの結婚写真みたいなものだったのかも。もうとっくに外すべきだった。

それから、両親が残してくれたマンションへ向かった。その日の夜は、今までで一番安心して眠ることができた。

次の日の朝、けたたましく鳴り響くスマホの着信音で目が覚めた。

スマホを手に取ると、海斗から何件も着信が残っていた。

電話に出ると、海斗はイライラした様子で問い詰めてきた。「また何を怒ってるんだ?医局を空っぽにしたって、どういうことだ?

結婚記念日は一緒にお祝いする約束だっただろ?プレゼントもわざわざ用意したのに、どこにいるんだ?」

海斗の高圧的な態度にはうんざりした。私は電話を切って、スマホをそばに放り投げた。

こういうことには、もうとっくに慣れていた。

私が救急で働きづめの時も、私の誕生日も、そばにいてほしい時にいつも、海斗は瑠衣からの電話一本でいなくなってしまう。

そして次の日には、何事もなかったかのようにプレゼントを手に現れる。そのうえ、偉そうな態度で私を問い詰め、責め立てるのだ。

それでも私が何も言わないでいると、今度は態度を和らげて少しだけ機嫌を取ろうとしてくる。

いつもこうだった。海斗が少し優しくしてくれると、私はまたプライドを捨ててしまう。そして、彼の後ろをついて回るだけの存在に戻ってしまう。

でも、今回は本当に疲れてしまった。

……

夜、仕事が終わって帰ろうとすると、病院の正面玄関でずっと待っていた海斗が目に入った。

海斗は濃いグレーのスーツに着替えていた。背が高くてすらりとしているので、夕暮れの中でひときわ目を引く。通りすがりの若い看護師たちが、思わず何度も振り返って何かを囁きあっていた。

以前の私なら、他の誰かに見られるのが嫌で、すぐに駆け寄っていたでしょ。

海斗はもともと、人を惹きつけるオーラをまとっている。だから誰かに取られてしまうんじゃないかと、いつも不安だった。今思えばその心配は無駄じゃなかったのだが、警戒する相手を間違えていただけだった。

だが今となっては、海斗を見ても、もう何の感情も湧いてこない。

私はまっすぐ前を向いて家に帰ろうとした。でも、海斗に突然呼び止められた。

「美優、今夜は池田先生が食事に誘ってくれたんだ。一緒に行こう」

なぜだか、私は何かに取り憑かれたように頷いてしまった。たぶん、本当にお腹が空いていたからでしょ。

車に乗っている間、海斗からふんわりと香水の匂いがすることに気がついた。

それは、瑠衣がいつもつけている香水だった。

「いつから香水なんてつけるようになったの?」

私が不意に尋ねると、海斗は少し間を置いた。

「香水は使ってない」

私はそれ以上何も言わなかった。もし海斗の言うことが本当なら、もっと皮肉な話だ。

二人はもう、匂いが移ってしまうほど、片時も離れずに一緒にいるということなのでしょ?

その後は無言のまま、私たちはレストランに着いた。

池田克哉(いけだ かつや)は海斗の顔を見るなり、満面の笑みになった。

「海斗さん、やっと来ましたか」

でも私の姿を見ると、克哉の顔から笑顔がすっと消えた。

「なんで……」

克哉は言葉を濁したが、言いたいことは分かった。

個室では、克哉の友人たちも私の方を見ていた。その表情は様々だ。

だが例外なく、その目には私が来たことへの不満が浮かんでいた。

克哉と瑠衣は大学の医学部で同級生で、とても仲がいいのだ。

海斗が私を彼らの前に連れて行って、付き合っていると紹介した日からずっと、克哉は私のことが気に入らなかった。

克哉は、私が海斗にふさわしくないと思っていた。一介の医者でしかない私が、青葉市で最も若い心臓外科のエースと付き合うなんて、足を引っ張るだけだと考えていたのだった。

これまでは、海斗のためを思って、克哉とも良い関係を築こうと頑張っていた。

いつも笑顔で接して機嫌を取ろうとしてきたが、効果はほとんどなかった。

私はずっと、自分に何か至らない点があるんだと考えていた。でも今見ると、彼らはとっくの昔に、海斗に一番ふさわしいのは瑠衣だと決めつけていただけなのだ。

それなら、もう私が良い顔をする必要もない。私はさっさと隅の席に座ると、スマホを取り出してカルテを確認し始めた。

「副院長、こちらへどうぞ」

克哉は私を一番隅っこの席に押し込めると、向き直って海斗を瑠衣の隣へと案内した。

わざとだと分かっていた。
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