LOGIN私は八チームの陣地が記された地図を睨みながら、それぞれのチームについて思考を巡らせていた。 さて、ここで整理しておきたいのは、八チームそれぞれの特徴だと思う。 1、ブライド・スレイヤー・ハーケンスとは、どのような人なのか? 彼は自分が強いことを知っている。その上で、能力がある者を取り立てて、強い帝国を作ろうとしている。 小説の中でも、帝国の絶対主義を唱えながら、能力のある者ならば、どんな種族の者でも取り立てて出世させていた。 新しい発想や奇抜なことでも受け止める柔軟性を持ち合わせた、支配者として優秀な人物だ。 2、アイス・ディフェ・ミンティとは? ブライド皇子に対して、アイス王子は子供の頃から病弱で、人に対して劣等感を持つと共に、自分が弱く、できないことがあることも知っている。そのため、弱者であろうと様々な人材を手元に置いて、補い合うことを信条にしている。 そのため、各々の個性を重視しており、能力の高さだけで人を見ない。 また、それぞれに事情があると考え、大陸を無理に制覇しなくても良いという考えを持っている。 3、ロガン・ゴルドフェング 獣人たちは戦闘での優劣を好み、強い者が正しいと考える。また、自分自身も強くあろうとする。 ただ、群れのことも大切に思っており、弱くても強い者が守ればいいという考えを持っている。そのため、強い者を好きであると同時に、弱い者に対しても慈悲の心を持つ。 だからこそ、弱い立場の奴隷や同胞が虐げられていることを見過ごすことができない。 4、アクアリス・ネプチューナ 一見、他者との関わりを持たないようにしているが、彼女は人を愛し、海と大地を愛する研究者でもある。 同胞という意識は薄く、自由な気質であると同時に、仲間がピンチになれば全力で助ける義侠心も持ち合わせている。 戦闘面でも獣人や竜人に匹敵する強さを持つと言われているが、主に魔法の強さだとも言われる。 5、セシリア・ローズ・アーリントン 商人と協
雲一つなく、真っ青な空が広がっている。 競技が始まる日は、奇妙な緊張感と期待が入り混じる独特の空気を感じる。 それは、競技選手に選ばれた者たちの緊張が、空気を重くしているからだ。「クラウン・バトルロイヤル」 その名が示す通り、これは王冠を司る王を巡る熾烈な戦い。 八つのチームがそれぞれ陣地を与えられ、互いのクラウンを奪い合う。勝者となるのは、たった一つのクラウンを守り抜いたチームだけだ。 セシリアがクラウンを務めるローズガーデン陣営は、二十名の編成を終えている。 私の奴隷たち七名。それに加えて、エリザベート、アイリーン、ノクス、バクザンに声をかけた。 私を入れて十二名がセシリアの陣営に参加した。 残りの八名はセシリアが用意した者たちだ。 彼女の護衛である女騎士リリアさん。 そして、セシリアの取り巻き数名を加えて、二十名を揃えた。 私たちに与えられたフィールドは、広大な森林地帯だった。 鬱蒼と茂る木々が視界を遮り、小川がところどころを流れている。森の中には簡素な建物がいくつか設置されており、そこには食料や水、野営用のテントが用意されていた。 だが、それらはあくまで最低限のもので、必要な物は事前に陣営から学園都市の運営に連絡を入れ、取り寄せてもらっている。 ここから先は自分たちで一週間を生き残り、他の陣営を打倒して優勝を目指すことになる。一週間の時間制限がある以上、様々なイベントも用意されていて、ゲームが開始されれば、考えることはどんどん増えていくことになる。「ここが俺たちの陣地か。いい場所だな」 バクザンが森の中を見回しながら楽しそうにしていた。彼は傭兵として戦場を巡ってきた。どんな状況でも適応するだろうから、調査はバクザンとシーバに任せる。 川辺にはモムモを配置して、敵からの襲撃に備えてもらう。 伝令役はメムが空を飛んで行ってくれる。「フライ様、ここは防御に向いていますわね。この森を利用すれば、外敵の侵入を阻むことができるで
《side フライ・エルトール》 ああ、仕方ない。本当にどうしようもないね。私の本質はゲーム好きだ。 道楽貴族として、第二の人生を謳歌して、自由気ままな生き様をただ楽しめれば良いと思っていました。 実際に、自分の好きなことをして、人々から道楽息子と言われたとしても、一向に構うことなく、自分の楽しいと思う道を歩んできたのです。 それなのに、どうしても運命というものは私に挑戦権を与えてくる。 本当の戦闘なら、必死に逃げれば生き残ることはできると自負しています。 ですが、これはあくまで学園のゲーム。 そして、ゲームをするなら勝ちたいと頭で考えることは、とても楽しいことです。「クラウン・バトルロイヤル」 それは、学園都市が誇るチーム競技であり、戦術と戦略、そして個々の力が試される大規模なイベントです。 参加していないときは、みんなが楽しそうにしているのを見ているだけで満足でした。 ですが、参加するなら、負けたくはないですよね。 ルールは一見単純です。 各チームには「クラウン=王」と呼ばれる一人が決められ、王を守りつつ、他のチームのクラウンを奪うのが目的になります。 クラウンを失えば敗北。最後にクラウンを保持しているチームが勝者となります。 これは一種の国取りゲーム。 王を奪い合う騙し合い。殺し合い。ただし、とても奥が深い。この競技はフラッグ奪取に似ていますが、いくつかの点で異なる特徴を持つ。 基本ルール 1、チーム編成 各チームは最大二十名までという縛りがある。少数精鋭を選ぶか、バランスを重視するか。ここで指揮官のセンスが問われる。 2、クラウンの役割 チームの象徴であるクラウンは、王だ。 クラウンが倒されれば全てが終わる。もちろん、王が戦うこともできるが、制約が用意されている。王を倒せるのは革命家と裏切り者だけ。 つまり、二十名の選ばれた者には役割が与えられ、それぞれの相性によ
《side セシリア・ローズ・アーリントン》 決して後悔をしない生き方を、私は選んでみせる。 そう心に誓いながら、私は学園都市にやってきた。 それは、今この場でも変わらない。 フライ・エルトール様の屋敷の扉をくぐった。 アーリントン公国の未来のため、そして私自身の想いを叶えるため、ここに来ることを決めました。 クラウン・バトルロイヤルのパートナーとして、フライ様を説得すること。それが私の目的です。 ですが、胸の奥で静かに高鳴る鼓動は、別の感情も含んでいます。 それが何であるかは、自分でも分かっているのです。けれど、それを表に出すわけにはいきません。 今の私は、アーリントン公国の公女として、フライ様の力を借りるためにここにいるのです。 クラウン・バトルロイヤルは、他国の勇者たちが競い合う場でもあります。 そこで力を示すことで、公国はここにあると他国に示すことができるのです。 メイドに案内されて客間に通されると、紅茶が差し出されました。優雅に香る紅茶の湯気を見つめながら、私は深呼吸をします。「大丈夫、私はできるわ……」 そう自分に言い聞かせた直後、客間の扉が静かに開きました。「エリザベート様?」「よくぞおいでくださいました。セシリア様」「どうしてあなたが?」「当然です。我々ユーハイム家と、エルトール家は家族のようなものですから、フライ様が来るまでのお相手は、わたくしがさせていただきますわ」 彼女はエリック様の婚約者だというのに、フライ様との関係を何かと邪魔してくるので、少しだけ苦手に思っています。 お茶会でも、彼女と私はライバルのような関係になってしまう。 目立つ花は二輪あると、目移りしてしまうのです。「それで? どういうつもりでこちらに? 事と次第によっては、フライ様にお会いする前にお帰りいただくかもしれません」「……クラウン・バトルロイヤルで
《side アイス・ディフェ・ミンティ》 一人で歩く夜の学園都市は、静かだった。 酒場の喧騒が嘘のように、路地裏に入れば闇が広がっている。 いつもそうだ。本当に欲しい。 掴みたいと思ったものほど手に入らない。 フライ・エルトールからの明確な拒絶を受けた。彼は学園都市の中では、不真面目な生徒に分類される。 だが、不思議と彼の周りには人が集まっていく。 そして、私もその一人だ。 酒場を後にした私は、石畳を一人で歩いていた。風が冷たく頬を撫でるが、その寒さよりも、胸の奥に広がる冷え切った感覚の方が、はるかに鋭かった。「断られた、か……」 私は自嘲気味に呟いた。 フライのあの柔らかな笑顔、周囲を和ませる空気。その裏に隠された、揺るぎない意志。彼が私の誘いを断った理由も、そして彼が何を思っているのかも、理解しているつもりだった。 同類だと思う節があった。それも嫌悪するのではなく、同調できる。同志だと、どこかで思っている。「貴族でありながら、貴族らしくない。平凡だと言いながら、誰よりも特別な存在……」 それは王子でありながら、病弱で王子らしくない。平凡になりたくなくて、必死に特別になろうとした自分と、どこか似ているように思えた。 フライという男は、私にとって興味深い存在だ。 彼の持つ強さは、単なる剣術や魔法の力量ではない。それ以上に、人を引きつけ、まとめ上げる特別な力がある。 だからこそ、彼が必要だった。 彼のような人材がいれば、私の陣営はより強固なものになる。いや、彼がいることで自然に強固になっていく。だが、それはあくまで理想にすぎない。「支配者に理想は不要か……」 自嘲混じりに笑う。 王族に生まれた以上、理想だけでは世界を動かすことはできない。とうの昔に理解していた。 それでも私はどこかで、「理想」を追い求めてい
昼間の陽光が屋敷の窓から差し込み、暖かな光が部屋を包んでいた。 学園都市全体がお祭り騒ぎの一ヶ月。 どうしてもそんな喧騒から離れて、ゆっくり家で過ごしたい時もある。書斎で本を開きながら、穏やかな時間を楽しんでいると、ノックの音が静かに響いた。「フライ様、公女セシリア・ローズ・アーリントン様がお見えです」 メイドが告げる声に、少し眉をひそめた。セシリア公女とは、お茶会やエドガーの一件以来、お誘いはあるが、挨拶程度に留めていた。 そんな彼女が屋敷にまで押しかけてくるのは、何事だろう。「案内してくれ」 そう言うと、私は書斎を出て客間へ向かった。 客間の扉を開けると、そこには上品で可憐な姿のセシリア公女が立っていた。淡いピンク色の髪と制服が、彼女の華やかな美しさを引き立てている。 微笑を浮かべる彼女は、まさに完璧な貴族のレディーだった。「お待たせしました、セシリア様。突然の訪問とは珍しいですね」「いえ、エリザベート様が話し相手になってくださっておりましたので、待っている時間など苦になりません。こちらこそ、突然の訪問をお許しください」「いや、とんでもない。エリザベート、ありがとう」「どういたしまして、フライ様」「それにしても、どうしたんだい?」 エリザベートは私が話し始めると、自ら紅茶を淹れるために動き始める。 私はセシリア嬢に座るように席を勧めた。セシリアは優雅に腰掛けると、すでにエリザベートが淹れたのであろう紅茶を一口飲み、微笑みながら切り出した。「フライ様、本日はあるお願いがあって参りました」「お願い……ですか? 内容によりますが、できる限りお力になりたいと思います」「さすがフライ様。お優しいお言葉をいただけて安心しましたわ。実は――」 セシリアは一息つき、真剣な目で私を見つめた。「フライ様に、クラウン・バトルロイヤルで私のパートナーとなっていただきたいのです」 その申し出に、思わず目を見開いた。まさか、彼女がこんな申し出をしてくるとは思わなかった。 何よりも、ブライド皇子の参加表明。アイス王子からのスカウトに続いて、セシリア公女からパートナーの申し出とは、随分と大物揃いだ。「クラウン・バトルロイヤル……ですか? あれは学園の催しのようなものですよね。わざわざ公女であるあなたが参加する理由があるのですか?」「ええ







