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第344話

Author: ルーシー
「智也、愛莉がこんな状態なのに......

それでもまだ沙羅を庇うの?」

玲奈の声は震えていた。

怒りと悲しみがないまぜになり、その瞳には怨嗟の色が宿っている。

智也はその視線から逃げるように顔をそむけ、冷えた声で言った。

「俺はただ事実を言ってるだけだ。

愛莉がどこでインフルエンザをもらったか、お前の言葉ひとつで決めつけられることじゃない。

結果はもう出てる。

今さら過去を責めて、何の意味がある?」

玲奈は胸元を押さえた。

そこが、針で突かれたように痛む。

深く息を吸っても、苦しさは少しも和らがなかった。

「......あなた、いつも私に母親失格って言うけど、あなたは父親としてふさわしいの?」

智也の表情がこわばる。

「何が言いたい?」

玲奈は唇の端を震わせながら、かすかに笑った。

「言いたいことなんてないわ。

ただ――これだけは覚えておいて。

あなたがこの子しかいらないって言うなら、せめて少しは良心を持って育てて」

その言葉が空気を裂いた瞬間、病室の扉が開いた。

汗をにじませた若い看護師が、カートを押しながら出てくる。

「点滴の針、入りました。

点滴も始めています。

このままご家族の方が付き添ってください。

あとで体温を測りに来ますね」

玲奈はかすれた声で「ありがとうございます」と答え、病室のドアを押し開けた。

智也もその後に続く。

ベッドの上では、愛莉がぐったりと枕に顔を伏せていた。

泣きすぎて目は真っ赤に腫れ、頬は涙で濡れている。

泣き声はもう止んでいたが、小さな肩がまだ時おり震えていた。

玲奈はベッドの脇に腰を下ろし、汗で濡れた前髪をそっと撫で上げる。

「......少しは楽になった?」

愛莉は母の声を聞くと、ぱちりと目を瞬かせた。

次の瞬間、また涙があふれた。

けれど、何も言わずにただ静かに泣き続ける。

玲奈は何も言わず、小さな手を取って見つめた。

手の甲には、針のあとが二つ。

どちらも赤く腫れ、うっすらと血がにじんでいた。

智也もその手を見て、胸の奥が締めつけられた。

愛莉の血管が細いのは分かっていた。

それでも、ここまで痛々しい跡になるとは――

ちょうどそのとき、看護師が体温計を手に病室へ入ってきた。

それを見た智也の顔が一瞬で険しくなる。

「どういうつもりだ。

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Comments (1)
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maasa16jp
はぁ〜 やっぱりなかなか進みません 少しためてからまたお邪魔しようかな 拓海が可愛いからね
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