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第2話

Author: 川辺の夕映え
玲司の目に一瞬だけ動揺が走った。けれど彼はすぐに取り繕い、わけが分からないという顔をした。

「俺を疑ってるのか?俺と紗良は小さい頃から一緒に育ったんだ。気を許しすぎて、つい距離感が近くなることくらいある。でもお前が考えているようなことじゃない」

彼はそれでも認めようとしなかった。

よく考えてみれば、すべてはとっくに兆しがあった。

玲司と付き合うようになってから、どこへ行くにも三人一緒だった。

彼は私の誕生日を覚えていないくせに、紗良には日付が変わった瞬間に誕生日のメッセージを送っていた。

私は辛いものが食べられないのに、彼は料理を頼むたび全部辛口にした。

紗良が好きだから。

紗良が生理でつらそうにしていると、彼はいつも彼女に休みを取らせた。

私が痛みで壁に頭を打ちつけたくなるほど苦しんでいても、彼は「少し我慢すれば治まる」と言い、会議に遅れないようにと念を押した。

私と紗良は、玲司の起業を一緒に支えた。

会社が上場してからというもの、紗良の給料は私の倍になった。

私だって、何も言わなかったわけじゃない。嫉妬しなかったわけでもない。

けれどそのたびに、玲司は決まって同じ言葉で私を黙らせた。

「紗良とは昔からの付き合いだし、お前の大事な友達でもある。彼女を粗末に扱うわけにはいかないだろ」

友達?

けれど彼が彼女を見る目は、私に向けたどの瞬間よりも優しかった。

玲司は私に先に家へ帰って頭を冷やせと言い、私の腕を引いてその場を離れた。

けれど私をマンションまで送り届けると、彼はすぐ車で去っていった。

去り際、玲司はこう言った。

「紗良は式の当日に新郎に逃げられて、ただでさえ参ってるんだ。さっきのお前の言葉でかなりショックを受けたみたいで、お腹の子にも響いたかもしれない。お前の代わりに、俺が様子を見てくる」

彼の頭の中は紗良のことでいっぱいだった。

今の私の気持ちなど、考えもしなかった。

家に戻った私は、何気なく一冊の日記を見つけた。

日記のページには一枚ずつ、玲司が紗良のいる国へ向かった航空券が貼られていた。

その下には彼のメモもあった。

【紗良が海外支社へ行った。会いに行かないと、どうしても心配でたまらない】

【海外出張で三日間滞在。本当はただ、紗良に会いたかっただけだ】

日記は、私たちの交際三周年記念日の日付まで進んだ。

そこに書かれた内容を見た瞬間、私はもう涙をこらえられなかった。

【ずっと迷っていたけれど、やっぱり告白した。紗良も俺を好きだったなんて。もう逃したくない】

【紗良は琴音が傷つくのを見るのがつらいから、別れないでほしいと言った。俺は同意した】

【紗良がようやく俺を受け入れてくれた。琴音より、俺の体は紗良を求めている気がする】

その日、私は玲司に十数回電話をかけた。

彼は全部切った。

最後に送られてきたのは、冷たい一通のメッセージだった。

【忙しい。邪魔するな】

彼が「忙しい」と言っていた時間、彼は私の親友を抱いていた。ただの友達だと言い張っていた、あの女を。

日記は最後のページにたどり着いた。

書かれたのは、ほんの数日前だった。

【紗良が妊娠した。よくも適当な男と結婚しようなんて思えたものだ。俺は絶対に手放さない】

日記には、妊娠に関する検査結果の書類も一枚挟まっていた。

父親の欄には、玲司の名前が記入されていた。

私はその紙を握りしめ、指先を震わせた。

紗良の妊娠を知ったその日、玲司はすぐに海外へ飛んだ。

彼はわざわざ私に休暇まで取らせ、この国へついて来て紗良の世話をし、彼女の結婚式を手伝わせた。

結婚式から逃げたあの「最低な男」も、玲司がわざと追い払ったのだ。

彼は「夫」という名目を借りて、紗良を妻にしたかったのだ。

スマホが鳴った。

母からまた結婚の催促だった。

「琴音ちゃん、あなたと玲司くんはいつ帰ってこられるの?家族みんな、披露宴を楽しみに待っているのよ!」

「お母さん、私は玲司とは結婚しない」

母が怒り出す前に、私は続けた。

「安心して。結婚式は予定どおり挙げるから」

ただし、私の新郎は別の人に替わる。

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