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第3話

Auteur: 金色の沈黙
竜也はずっと黙っていた。

理恵の白いワンピースに滲む血痕を、じっと見つめていた。

しかし、佳奈の言葉を聞くと、嫌悪感を露わにして理恵の顔を睨みつけ、反射的に佳奈を背中に隠した。

大学時代の4年間、理恵が正しかろうが間違っていようが、竜也は常に理恵を守ろうとしていた。

しかし今は、彼が守っているのは佳奈だった。

「田村さん、あの時は田村グループが毒入り材料を使ってお菓子を作ったせいで、私の父と叔父が亡くなったのよ。うちは仕方なく、告発したのよ!」

佳奈は竜也の手首を強く握りしめ、全身が震えているようだった。

「それに……」

彼女は竜也をちらりと見て、わざと悲しげな表情をした。

「あの時、あなたは竜也に学費を出してあげて、彼と付き合うように仕向けた。でも、それはお嬢様気取りで、彼を辱めていたんじゃないの?もう結婚して子供もいるのに、どうして彼の前に現れて、彼を傷つけるの?

それに……子供を甘やかして、私の赤ちゃんに八つ当たりさせるなんて!」

竜也は一瞬驚いたが、すぐに無表情に戻った。

竜也は頭がいい。これが言いがかりだと分かっているはずだ。

それでも、彼は言った。「理恵、相変わらず卑怯だな」

二人の関係のように、最初から歪んでいて、卑怯なものだった。

竜也は佳奈を支えながらエレベーターに乗り込み、周りの人々も理恵に罵声を浴びせながら散っていった。

理恵の心は凍りついた。

耳を塞がれていた結衣は泣きじゃくり、理恵の指を握りしめながら、何度も謝った。

「ママ、ごめんなさい。私が悪かったの」

「結衣、いいのよ。結衣のせいじゃない。結衣は、ママの大切な宝物よ」

結衣は顔を上げ、泣き腫らした目で理恵を見つめた。「あの人、パパだよね?」

理恵の胸に、重く、鈍い痛みが走った。

言葉が出ず、ただ涙が溢れ出た。

「パパが欲しい。でも、パパには他の子供ができたんだよね」

理恵は結衣を寝かしつけ、一人で検査に行った。

「田村さん、もう手術を先延ばしにするのは危険です。今の薬はあと5日分しかありません。5日以内に手術しないと、助かりませんよ。

こんなに可愛い娘さんと、もっと一緒にいたいと思いませんか?

手術費用は全部で1000万円です。何とか工面できるはずでしょう」

医者は真剣な口調で言った。

理恵はスマホで残高と訴状を見ながら、しばらく悩んでいた。

全財産は、たった1000万円だった。

「伊藤先生、もう少し考えさせてください」

病院を出ると、一台の高級車が理恵の行く手を遮った。

竜也はスーツのジャケットを脱ぎ、シャツ姿で車の前に立ち、静かにタバコに火をつけた。

「理恵、話がある」

竜也は助手席のドアを開けたが、理恵は軽く会釈して後部座席に座った。

彼は少し驚いた様子だったが、それ以上何も言わなかった。

ダッシュボードには竜也と佳奈の大きな写真が飾られ、後部座席のクッションにも、キスをしている二人の写真がプリントされていた。

理恵は昔、こっそり竜也の財布に二人の写真を入れたことを思い出した。しかし、竜也はその写真を取り出し、ゴミ箱に捨てたのだ。

彼はツーショット写真が嫌いだと言った。まるで誰かの所有物であるかのようなレッテルを貼られているみたいで、嫌だと。

なのに今は、佳奈のために、見えるところに二人の写真が飾られている。

「佳奈は妊娠中で、感情的にも不安定なところがあるんだ。田村家のせいで彼女のお父さんと叔父さんが死んだこと、やっぱり、まだ根に持ってる」

「だから?」理恵は胸騒ぎを覚えた。

竜也は冷たく言った。

「理屈で言えば、君の両親の代わりに佳奈に謝るべきだ。これは君が彼女に負っていることだ」

理恵は6年前のあの夜を思い出した。田村家が提出した証拠は次々と握りつぶされ、父は再起を諦めて自殺した。そして母は、父の遺体の前で後を追った。

田村家の罪は、全て他人が決めたことだ。どうして、両親の罪を認めなければならない?

そして自分は、癌の初期に妊娠した体で荷物を運び、棚から落ちて、母子共に危ないところだった。

誰が守ってくれた?誰が自分のことを考えてくれた?

「あの事件で、私の両親も命を落とした。誰が彼らに謝罪してくれたの?

竜也、あなたには申し訳ないと思っている。でも、あの女には何も負っていない!」

車内は恐ろしいほど静まり返った。

「理恵、君の元夫の件、娘まで失うのが怖くないのか?この裁判で、昔の君と同じように卑怯な手を使うこともできるんだ」

理恵は息を呑んだ。

まさか、正義感の強い弁護士が、愛のためにここまで原則を曲げるとは。

確かに、彼と争う力はなかった。「竜也、誰にも娘を脅させない。誠のお母さんへの1000万円は払う。でも、娘は絶対に渡さない!」

竜也は息を吐き出し、絞り出すように言った。

「君の娘は今年5歳。俺たちが別れて6年。年齢も目の下のほくろも一致する。彼女は俺の子供なのか?」

理恵の喉に、再び生臭い味がこみ上げてきた。

彼女は驚き、胸元を抑え、目に涙が浮かんだ。「竜也、娘のことなんて、あなたに知る資格はない!

あの子の父親が、卑劣な人間であるはずがない」

理恵は慌てて逃げ出し、路地の角に身を隠した。

竜也に見つからない場所に隠れてから、彼女はついに血を吐いた。

竜也に娘を奪われることが、怖くてたまらなかった。
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