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たかがキスごときで離婚するなんて大げさじゃないか

たかがキスごときで離婚するなんて大げさじゃないか

By:  香帰硯Completed
Language: Japanese
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川村月子がSNSに動画を投稿した。 私の夫である鈴木誠と彼女が映っている。 トランプを口移しするゲームをしているところ。 カードを落としたとたん、二人の唇が重なり、そのまま夢中で深いキスを交わした。 丸一分間も続けた。 「私って相変わらずドジだね♡ 誠くんのキステク、昔と変わらないよ」 私は黙って「いいね」を押し、「おめでとう」とコメントした。 すぐに誠から怒鳴り声の電話がかかってきた。 「お前みたいな面倒くさい女はいないよ。月子とただゲームしてただけだろう。いちいち意地悪するな!」 7年の愛も、所詮は儚い夢だったんだと、その時悟った。 もう、私が身を引く時なのだ。

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Chapter 1

第1話

お腹に手を当てた。流産してから、まだ鈍い痛みが残っている。

ごめんね、赤ちゃん。あなたを守れなくて、ごめんね。

体と心の痛みを抱えながら、もう一度川村月子の投稿した動画を開いた。

画面の中の川村月子は頬を桜色に染め、艶やかな瞳で鈴木誠を見つめ、幸せに満ちた表情を浮かべていた。

コメント欄はすでに盛り上がっていた。

「私、現場にいたけど!誠さんと月子ちゃんのディープキス間違いなし!」

「マジ最高!誠さんやばすぎ!あのキステクで落ちない女なんていないでしょ!月子ちゃんの顔見てよ、真っ赤になってる!」

「やっぱり妻より外の女がいいでしょ......」

一分後、二人は名残惜しそうに唇を離した。動画はそこで終わった。

友達たちの茶化すようなコメントに、川村月子は選りすぐって返信していた。

「もう、そんなこと言わないで!誠くんとは親友同士だよ!」

「そんなこと言ったら、デブ姉が怒っちゃうよ!」

彼女の言うデブ姉、それは私のこと。

子供の頃、病気の治療でステロイドを使って60キロまで太ってしまった。今では45キロをキープしているのに。川村月子より細いくらいなのに。

それなのに、彼女は特に鈴木誠の前では必ず私のことをデブ姉と呼ぶの。

胸が押しつぶされそうで、息もできないほどだった。

なるほど。鈴木誠が何年も連絡を取っていなかった同級生の結婚式で、億単位の商談を断ってまで付添人を引き受けた理由が、やっと分かった。

最初は親友だからだと思い込んでいた。

でも今なら分かる。鈴木誠の初恋の人、川村月子がブライズメイドだったから。

結局、私が一番の馬鹿だったんだ。

もう、この関係に区切りをつけるべきなんだ。

夜になって、誠は酒臭い体で帰ってきた。白いワイシャツには、目障りな口紅の跡がいくつも付いていた。

私の名前を何度か呼んだけど、ベッドで横になったまま動かなかった。

鈴木誠は私の胸に顔を埋めて、甘えるように謝った。

「ごめんね。月子とただゲームしてただけだよ。僕は付添人で、彼女はブライズメイドで。仕方なかったんだ」

本当に仕方なかったの?キスしてる時の鈴木誠の目は、嬉しさと得意気な表情を隠せていなかったのに。

私が黙っていると、鈴木誠はさらに胸元に擦り寄ってきた。

「ねぇ、許してよ」

昔なら、この様子を見ただけで怒りが消えていただろう。

でも今は、二人の濃厚なキスを思い出すと、吐き気がする。

鈴木誠の顔を押しのけて、ベッドの端に身を寄せた。

私の拒絶に、鈴木誠は急に怒り出した。

「もう謝っただろう!これ以上何が望みなんだ!

結婚式なんてそんなもんだよ!真に受けすぎだ。付添人で疲れてんだから、そんな些細なことで拗ねるな!

どうして月子みたいに気が利かないんだ?

俺たちはもう結婚してるんだぞ。それでも不満なのか?」
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