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浅ましい女

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-07-03 14:15:00

 まず彼の住んでる場所もぜんぶ秘密にされていたから、思いがけず知る事になれて嬉しい!と、まりかは興奮する。

 数日後、再びまりかとモカはそれぞれ変装して、昴生の住むマンションを訪れていた。

 ただ……当然だが正面玄関で、どうしてもセキリュティの関係で中には入れない。

 奥には警備員の姿も見える。

 「まりかさん、どうします?やっぱり無理かなあ。

 住んでる階《フロア》まで突き止めるのは…」

 「いや。ここまで来たら諦めたくないんだけど。」

 暫くマンションの周りをウロチョロしてると、背後から男に声を掛けられた。

 「ねえ…もしかして浅井まりかちゃん!?」

 知らないサラリーマンだ。中堅といった風貌の。

 「ねえねえ、さっきからマンションの前で一体何してんの?

 えっ…まさかそっちは如月モカちゃん!?」

 興奮気味に男が近寄ってくるので、モカは笑顔を引き攣らせたけれど、対照的にまりかはニコッと笑った。

 「えっと……お兄さんはこのマンションに住んでる方?」

 「うん、そうだよ」

 「良かった……!

 このマンション、綿貫昴生さんが住んでますよね?

 私達、仕事の関係で綿貫さんに呼ばれて家に行くとこなんですけど、スタッフさんとはぐれた上に、住んでる階を忘れちゃって……!

 良かったら教えてくれません?」

 「あー…綿貫さんの?

 でもまあ、そういう事情なら教えても大丈夫だよね。

 本当はここの住人のプライベートは絶対話しちゃいけないって厳しいルールがあるけど。

 まあ、浅井まりかちゃん達と言えば間違いはないよね!」

 「良かった〜まりか達、本当に困ってたんですー。ありがとうお兄さん。」

 「えっとね、彼は確か……あ、

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