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落ち目女優の誤算/結ばれない運命だった

Penulis: Kaya
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-30 18:39:00

 我妻監督とは以前にも仕事をした事があった。

 と言っても何年も前に、だ。

 監督は今や世界的にも有名な人だ。

 そんな監督にオファーを受けた私は、今は落ちぶれた女優。

 それなのに、どうしてまた私を使ってくれる気になってくれたのかが分からないけれど。

 本来なら他の俳優陣達と同じようにオーデションを受けるのが普通なのだろうが、なぜか個人的にオーデション会場に呼び出された。

 八重樫は仕事があるならなんだっていいと言っていたけれど。

 「久しぶりだな、侑。」

 久しぶりに会った我妻監督は、昔と変わらない接し方で私に話しかけてきた。

 「…お久しぶりです。監督。」

 オーデションを受けるための会場には、私以外に俳優の姿はない。

 しかも鳥飼さんさえ、今回は何の役なのか聞かされてないという。

 そこには我妻監督の他に、数人の有名な映画関係者が座っていた。

 我妻監督は昔から少し変わり者な事で有名だった。

 そのため、手がけたのはいつも普通とはどこか違う異色作だった。

 返ってそれが視聴者の目を惹き、監督は瞬く間に有名になった。

 何年も経っても変わらない顔の我妻監督は、笑顔を崩さずに言った。

 「侑。今回お前に演じて欲しいのは……

 殺人鬼の役だ。

 愛する人に裏切られた女が、殺人鬼になって次々と周囲の人間を殺していく話。

 どうだ。……演じてみる気はないか?」

 「………殺人鬼、ですか?」

 私が一瞬呆けていると、我妻監督はさらにニコッと笑顔を浮かべた。

 正直、戸惑った。

 けれど仕事が全くない今、呑気に仕事を選んでいる場合じゃない。

 それに……

 昴生が今私を避けているのは、私が仕事もせずに家でブラブラと過ごしてることが、いい加減嫌になってきたのかもしれないから。

 このまま彼を失

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     それから暫くして、私もマンションを出た。 周囲にはもう誰もいなかった。 「帰ろう……昴生のところに。」 昴生に会いたい。 きっと、もうすでに深く彼を愛してるいる。 思った以上に深く絡め取られて、甘い罠に完全に嵌ってしまったみたいだ。 もう抜け出せる気がしないし、その気もない。 私を拾い、私を救い、私を生かしてくれる人。 私を決して死なせたりしない人。 それが昴生だ。 これからは昴生と一緒に未来を歩んでいきたい。 あれから昴生のマンションに戻ったのに、彼は電話に出なかった。 いや、それ以前にすごい着信履歴とメールが残されていた。 電話に気づかずに凄く後悔してる。 予定よりだいぶ早く着いたみたいなのに…… 昴生。一体どこに行ったの? 何で電話に出ないの……? * それから昴生と、すれ違いの日々が続いた。 「侑さん……!喜んでください! 仕事です…! あの我妻監督から、侑さんを使いたいってオファーがあったんですっ……!」 「……え?」 ある日鳥飼さんが、いつもの倍以上のテンションで私に仕事の話を持ってきた。  もう自分は何かの役を演じることもないだろうと思っていたのに、本当にびっくりだった。 あれから私は、昴生の帰ってこない家に一人でいる意味をじっくりと考えた。 何の音沙汰もなく昴生からの連絡が途絶えて、家にも帰って来なくなった。 連絡しても返事がない。電話にも出ない。 きっとこれは仕事が忙しいとかいう理由じゃない。 私は間違いなく、避けられてる。 昴生。 ……どうして避けるの? もう私のことが

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     それから聖の言葉は続かなかった。 こうして二人でいるのに、ほとんど荷物のない家の中はあまりにも寂しかった。 アクアリウムが置かれていた場所には、もうその痕跡すらない。 暫く沈黙したあと、私は勇気を出すように深呼吸してから言う。 「貴方が捨てた私を、拾ってくれた人がいた。 私以上に不器用で、凄くおかしな人だけど…… でも、確かに彼の深い愛を感じるから。」 目を閉じて、昴生を思い浮かべた。 「あの人なら例え—————— 世界中が私の敵になったとしても、ずっと私の味方でいてくれると思う。」 きっとそう。 はじめから昴生は不思議な人だった。 時々怖いくらい。 最初は分からなかった。 普段の言動は理解不能な事ばりで、昴生が何を考えてるか、何を思ってるのかなんてまるで分からなかった。 もっと早く渉の弟だって分かっていたら…… 「飼育」だなんて物騒なことを言って、昴生は自分を悪く見せてまで、死にたかった私を生かそうとしてくれた。 口では体目的だと言っておいて、ずっと私を、私の傷を、私の痛みを…… 優しく塞ぐように、ただ側にいてくれた。 私の気持ちが自分に向くまで、大切にしてくれた。それは今も、変わらずに。 だからこそ昴生が、ずっと私を愛してくれるという妙な確信がある。 そしてそれはきっと私も同じ。 実はずっと昔に出会っていた。彼はあの子だった。 あの頃とは違って、だいぶ変わってはいるけれど、それでも私も彼を愛していく自信がある—————— 「それ…が…俳優の綿貫、昴生……?」 そう言った聖の顔はまたくしゃと歪められた。

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