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日記09:喫茶店で過ごす日常

Penulis: 久遠遼
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-22 19:00:02

教室で起きたクリアファイル事件の翌日。

俺たちはアンサンブルに集まっていた。

その一階席。お客さんのいない店内の、日当たりのいい席で、俺たちは昨日の出来事を振り返っていた。

「どうなることかと思ってヒヤヒヤしたけど、無事仲直りできて良かったわよね」

茉莉花がテーブルに肘をつきながら、顔を両手で支えるようにしてうなずく。

「んで、謎解き部? なんだそりゃ。よく思いついたな、エリカらしいっていうか……」

真司はソファにふんぞり返りながら、腕を組んで感心したような、呆れたような、微妙なトーンでつぶやいた。

「エリカの思いつきにしては、まあいつも通りというか。いったんやるって決めたら、止まらないタイプだからな。

それに、今のところなんの進展もないんだ。なにか新しいことをしてみるのもいいかもしれないと思って」

俺がそう言うと、真司が怪訝そうな顔でこちらを見てきた。

「その活動で、あれか……きっかけをって考えてんのか?」

それに俺は、無言でうなずいてみせる。

「へぇ〜……そっか」

俺の反応に、真司は今度こそ納得したようにうなずく。さっきとは違って、妙に含みのある表情だった。

俺、茉莉花、真司。三人の間に、一瞬だけ気まずいような、でもどこか温かい空気が漂う。

だが、それをあっさりぶち壊してくるのが、やっぱりこの子だった。

「そういうわけで! ふたりとも、部活に入ってくれないかなっ? 今ならまだ正式に申請できるんだよ、部員四人でギリギリ!」

キラキラした目でエリカが身を乗り出してくる。必死というより、楽しげでワクワクがあふれている。

俺たちは顔を見合わる。

そして、そろって少しだけ眉間にシワをよせて笑った。

まったく、彼女には敵わない。

「悪ぃ、サッカー部の練習はサボれねぇんだわ」

真司が苦笑いを浮かべつつ、軽く頭を下げる。

エリカはすぐさま、今度は茉莉花に期待の視線を向けた。

「ねえ、茉莉花ちゃん……」

「うっ……ごめん、エリカ。私も部活が……その……」

言いにくそうに目をそらす茉莉花。けれど、エリカは引かない。

「茉莉花ちゃ〜ん……」

潤んだ瞳、下唇を噛みしめてこちらを見上げるその表情は──まるで捨てられた子犬。

守ってあげたくなるような、罪悪感をくすぐる視線に、茉莉花は顔をぎゅっと歪めて……。

「ううう……ホントにごめん! 無理なものは無理なのっ!」

エリカの懇願と、何より茉莉花が惹かれていたのだろう。

その思いを理性で振り払うかのように全力で、拒否した。

「む〜ふたりともケチぃ!」

エリカはぷくーっと頬を膨らませて、不貞腐れたようにテーブルに突っ伏した。

そんな姿すら、正直、かわいくてしかたがないと思ってしまう自分の感情に、ひとりで苦笑いする。

「……ところで、みんな部活で忙しいのは分かるが、もうすぐ期末テストだぞ? 大丈夫なのか?」

現実を直視せざるを得ない俺の言葉に、三人は一斉に固まった。

茉莉花とエリカは「うわ〜」と嫌そうな顔。

そして真司はというと……もはや、魂が抜けたような表情で天井を見上げていた。

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