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第7話

Author: 芽吹きの春
1週間後、綾子は青木家と菅原家の人たちに付き添われて退院した。

真司は、そばで看病ができるようにと、綾子を自分の家に連れて帰った。

車が停まると、執事の陣内正人(じんない まさと)がすぐに出迎え、そして、ひそひそ声でこう言った。「真司様、お電話が繋がらなかったこの数日間、物置部屋のことで……」

「綾子がいるんだぞ。なぜ物置部屋の話をするんだ?」真司はすぐに正人の言葉をさえぎり、思わず綾子の方に目をやった。

正人は何か言いたそうに口を動かしたが、結局は言葉を飲み込んだ。

真司はそんな正人を無視して、綾子の肩を抱き寄せた。「しばらく綾子はこの家で休む。気の利く使用人をちゃんと手配しておけ。この子の邪魔になるようなことは、何一つあってはならない。分かったな?」

正人はとうとううなだれた。「かしこまりました」

真司は綾子を抱きかかえるようにして、家の中へ入っていった。

「真司、私たちまだ結婚もしてないのに、ここに住むのはまずいんじゃ……」

「今やお前は、俺の正真正銘の婚約者なんだ。何の問題がある?」真司は愛おしそうに彼女のほっぺを軽くつねると、その赤い唇にキスを落とした。

甘い吐息がもれ、一気に二人の間の空気が熱を帯びる。正人が言いかけた言葉は、完全に居場所を失ってしまった。

深いキスのあと、二人は息を切らしながらソファに身を沈めた。

そこでようやく真司は立ち上がり、さっきから何か言いたそうに控えていた正人のもとへ向かった。

「日和は……何か言っていたか?」

正人は首を横に振った。「真司様、日和様のことでございますが、一度、ご自身の目で確かめられたほうが……日和様は今……」

その言葉を、真司はまたも遮った。「もういい。あいつに反省の色がないなら、家のルールどおりに罰を与えろ。過ちを認めないなら、毎日10回……いや、20回だ!20回棒で叩け!」

正人はその場に立ち尽くしたまま、動かなかった。

真司は苛立ちを隠さずに怒鳴った。「ぼさっと突っ立ってないで、さっさと行け!」

とうとう、正人の目頭が赤く潤んだ。

覚悟を決めたように、震える声で言った。「しかし真司様、日和様は、日和様はもう、おそらくは……」

「おそらく、なんだ?」真司の鋭い目がすっと細められる。その視線には、明らかな警告の色が宿っていた。「まさか、あいつのために命乞いでもするつもりか?お前が長年あいつに仕え、情が移っているのは知っている。だが……」

彼の眼差しは暗く、その口調は断固としていた。「これからは誰がこの家の女主人となるのか、よく覚えておけ!今回ばかりは、日和に骨の髄まで思い知らせてやる。それでようやく、あいつも従順というものを覚えるだろう!」

真司の口調には、一切の反論を許さない響きがあった。

正人は言葉を飲み込むしかなかった。「はい。承知いたしました」

その返事を聞いて、真司は寝室へと戻っていった。

ただ、なぜだか胸にぽっかりと穴が空いたような感覚があった。何か悪いことが起きる前触れのようだ。

真夜中、外から聞こえてくる慌ただしい足音で目を覚まし、不機嫌に部屋を出て様子を見に行った。

すると、家の使用人たちがせわしなく出入りしながら、何かを運び出しているのが見えた。

「綾子には絶対安静が必要だとわかっているだろう!お前たち、何をやっているんだ?」

正人が顔を上げ、真司と視線を合わせた。「真司様、急な事情がございまして、日和様の私物を今夜中に届け……届けなければならなくなりました」

真司は思わず眉をひそめた。「届ける?どこへ?日和は物置部屋に閉じ込めているはずだ。一体いつまで騒ぎを起こすつもりだ!」

正人は数秒間黙り込んだ。そして、一言一言区切るようにして、こう告げた。「斎場です……日和様のご遺体は、今夜、火葬が執り行われます」

その言葉に、真司は正人に掴みかかった。胸ぐらをきつく掴み上げ、今にもそのまま持ち上げんばかりの勢いだ。

「あいつはぴんぴんしているはずだ、遺体だと?誰がそんな縁起でもないことを言うのを許した!俺たちはまだ離婚していない、あいつは今も菅原家の嫁だぞ!誰の許しを得てそんな口をきく!」

正人の目は真っ赤に充血していた。

「事実でございます、真司様。受け入れがたいこととは存じますが、これが現実でございます。日和様は……お腹の子と共に、3日前に、ご逝去されております……」
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