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第329話

Author: ラクオン
「当たり前でしょ!」

桃子は早口でまくし立てながら振り返ったが、そこに立つ気品あふれる彰人の姿を確認すると、自分がなんて愚かなことを口走ったのかと、ハッと気づいた。

三浦家の、政界で絶大な力を持つあのお嬢様も、離婚したばかりではないか。

彼女自身もまた、バツイチの女性なのだ。

梨花の口元に浮かぶ冷ややかな笑みを見て、桃子は怒りを覚えたが、引きつった笑みを浮かべるしかなかった。

彼女は彰人に向き直った。

「彰人社長、誤解しないでください。もちろん、離婚された女性すべてを指しているわけではありません」

そう言いながら、彼女はすかさず梨花を陥れようとした。

「梨花とは長いこと義理の姉妹でしたから、彼女の人間性がどれほど酷いか知っているんです。だから三浦家のことが心配で……」

「その必要はありません!」

彰人は梨花の隣に立ち、明確な態度を示した。

「自分の目で見たものを信じます。梨花先生と接してきて、彼女の人柄も医術も、超一流だと確信しています。

それに、結婚生活が幸せかどうか、あるいは離婚しているかどうかなど、我々三浦家はそれで人を判断する基準には決してなりません」

彰人は一呼吸置くと、淡々とした眼差しを桃子に向けた。

「小林さん、余計なお世話は、今後はご遠慮願います!」

その口調は穏やかだったが、桃子の顔色は青くなったり白くなったりと忙しなく変わった。

梨花の人柄も腕も超一流だと言うなら、自分はどうだと言うの? 自分が劣っているとでも?

しかも余計なお節介だなんて!

噂では、三浦家の次男は温厚で紳士的だと聞いていた。こんなふうに人の面目を潰すような性格ではないはずだ。

間違いなくあの梨花という女が、三浦夫人の治療にかこつけて、あることないこと吹き込んだに決まっている。

だから彼らは自分に偏見を持っているんだ。

梨花は彰人との打ち合わせの後に研究所へ行きたいと思っていたため、桃子とこれ以上関わりたくなかった。

今や桃子と言葉を交わすことすら、吐き気がするほど嫌なのだ。

梨花は彰人を見た。

「彰人さん、行きましょう」

彰人は小さく頷き、二人は並んでエレベーターホールへと歩き出した。

立ち去ろうとする二人を見て、桃子は本来の目的を思い出した。

なりふり構っていられない。彼女は慌てて追いかけた。

「彰人社長!」

彰人も梨
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