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第455話

Author: ラクオン
この問題について、梨花はこれまで一度も考えたことがなかった。

なにせ、黒川グループは昔から不動産が主力で、ましてや竜也ほどの資産家だ。

住宅の話になると、潮見市で彼が二番手と言われたら、誰も一番を名乗れないだろう。

向かいの部屋だって、ただ彼が借りているだけにすぎない。

それに、彼が以前ずっと暮らしていた霞川御苑なんて、ここから数キロの距離にある。

梨花はぽかんとして、「霞川御苑に戻らないの?」と聞いた。

「戻らない」

竜也は当然のように言った。

「俺に住む所がないんだから、誰に頼ればいいかは決まってるだろ」

「……」

いかにも彼らしい物言いだった。

梨花は手を止め、目に入りそうなシャンプーの泡を拭いながら言った。

「じゃあ、先生夫婦にこっちへ来てもらえば?」

「どうぞご勝手に」

竜也は鼻で笑い、「夜中にそっち行ってあのお二人を起こしてこいよ」

「……」

梨花はようやく、彼の企みがわかった気がした。

先生たちを向かいの部屋に落ち着かせた時点で、こうするつもりだったに違いない。

ほんと、策士。

「今、シャワー浴びてるの

暗証番号は前に送ったやつのままよ」

そう言って、梨花は電話を切り、そのままバスルームでシャワーを続けた。

扉の向こうで、玄関の開閉音がかすかに響くと、胸の奥がよくわからない不安と動揺でざわついた。

これまで、竜也の家に泊まったことがないわけじゃない。

でも、彼がこちら側に来るのは初めてだ。

梨花は頭の泡を流しながら、動揺のあまり、手に取ったボディソープをまた頭にゴシゴシ塗ってしまった。

……

ストップ、ストップ!

もう十代じゃあるまいし、男が扉の向こうにいるだけで、どうしてこんなに落ち着かなくなるのよ。

梨花は深呼吸して気持ちを落ち着かせ、ようやく集中して体を洗い始めた。

その頃、外では竜也が入ってきて、いつものように下駄箱から自分のスリッパを取り出して履き、シャワーの音が響く扉の前へと歩いてきた。

緩んだ姿勢のままドア枠に寄りかかり、幼い頃からそばにいた少女が今まさに中にいると思うと、仕事で荒れた気分が少しずつ和らいだ。

梨花はシャワーを終え、水気を拭こうとタオルを手に取った瞬間、ようやく思い出した。

――服を、持ってきていない。

寝室には専用バスルームがあり、桜丘町を出てからという
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