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使徒と世界樹⑫

last update Last Updated: 2025-05-09 17:00:20

ギガドラさんが落とした雷は目を開けていられないほどに光を放っていた。

徐々に視界がクリアになってくるとヨハネさんは忌々しそうな顔で突っ立っていたが、その姿に若干の違和感を覚える。

白い服がほんの少しだけ焦げていたのだ。

ギガドラさんの攻撃は結界を多少なりとも貫通したようで、初めてヨハネさんに傷を負わせたらしい。

「ククク、我の一撃は重いであろう?使徒統括といえど生身で受ければ消し飛ぶ威力ぞ」

「雷神獣……確かに貴様の力は他の神獣を凌駕している。だがそれでも所詮は神獣の領域を出んという事を理解しておけ」

「どうした?饒舌に喋るではないか。そんなにも意外だったか?結界を貫通する攻撃手段を持っていたことに」

二人の舌戦は徐々に激しくなってくる。

「少しばかり結界を貫通したというだけでふんぞり返るなど……程度が知れるぞギガドラ」

「ほう?ならば次はもっと火力を上げてやろうか?その余裕そうな顔を歪ませてくれる」

「やってみるといい。所詮は獣だという事を今一度知らしめてやる」

ヨハネさんは片手を突き出し、ギガドラさんは口元に電撃を収束させていく。

今度は二人の攻撃がぶつかり合う事になりそうだ。

僕らは余波を受けぬようまた数歩下がり、防御の態勢を取った。

「これは不味いですね。全員私の後ろに。絶対領域!」

トマスさんが気を利かせてくれたのか僕らを覆うほどの結界を展開した。

これなら余波を心配する事もないだろう。

「我が全力の一撃、その身に受けよ!破軍雷光弾!」

「全ては無に帰す……絶界」

音は消え不意な静寂が訪れる。

僕の目ではもはや何が起きたかすら知覚する事は出来なかった。

突如、耳を劈くほどの轟音を掻き鳴らしたと思えば地面に片膝を突いていたのはヨハネさんであった。

「ぐ……獣如きが……」

「ククク、天辺で胡座をかいているからそういう事になるのだ。神獣だ
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