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未来の為に④

last update Dernière mise à jour: 2025-03-18 17:00:47

「行ったな……」

静かになった異世界ゲートの前に佇む三人。

黒川紅蓮、城ヶ崎紫音、斎藤茜はずっとゲートを見つめている。

「さあ俺の最後の仕事だ」

紅蓮は、爆薬をゲートに仕掛け距離を取る。

「お前らも全員離れろ。巻き込まれるぞ」

ゲート前で呆然と立ち尽くす茜と紫音に問いかけるが反応がない。

「おい!さっさと下がれ!死にてぇのか?」

怒鳴られてやっと反応した二人は顔に生気がない。

無理もないだろう、茜は彼方の事を弟のように可愛がり、紫音に限っては生まれたときからずっと一緒に生きてきた。

もう会えないと思うと、立ち尽くす気持ちも理解できる。

「あいつの事信じてるなら、さっさと下がって来い」

「……すみません」

二人共ゲートから距離を取り紅蓮の元に来る。

「あの……紅蓮さん……」

紫音が話しかけてくる。

「なんだ?」

「その爆弾の起爆スイッチ……私に押させてもらえませんか?」

彼方との最後の繋がりはゲートのみ。

だからこそ自分で押したいのだろう。

そう思った紅蓮は彼女にスイッチを手渡す。

「この爆弾は時限式だ。スイッチを押して5秒後に爆破する」

「分かりました」

紫音の手に起爆スイッチを置くと、紅蓮は少し離れた。

最後のお別れくらいは、自分のタイミングがいいだろう。

そう思い、紅蓮は押すタイミングは紫音に任せた。

「茜さんも紅蓮さんのとこまで離れてていいですよ」

「……うん、紫音ちゃん、大丈夫?押せる?」

「はい……どうしても私が押したいんです……」

「わかったわ、貴方のタイミングで押したらいいからね」

そう言って茜も離れていく。

紫音の頭の中には、彼方と過ごした日々が走馬灯のように流れている。<

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