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第14話

Author: 六花
結婚式当日、私はスモークブルーのワンピースを着た。わざわざ新調したものではなく、手持ちの1着だ。

化粧はごく薄く、普段仕事へ行く時よりも控えめにした。花嫁より目立ちたいわけではないけれど、自分が惨めに見えるのも嫌だった。

実際のところ、私はとても順調にやっている。厚化粧をしたり、ブランド物のバッグを持ったりして、自分を誇示する必要などないのだ。

結婚式は郊外のリゾートホテルで行われ、ガーデンでの挙式と屋外での披露宴が予定されていた。到着した時には招待客の半数以上がすでに集まっており、ほとんどが珠希の新しい職場での同僚や友人、あとは親族の姿もちらほら見えた。

伯母が先に私に気づき、私の手を取って言った。

「亜依里、来てくれたのね。少し痩せた?お仕事、無理してない?」

「大丈夫、最近プロジェクトが忙しくて」

「忙しいのはいいことよ、充実してる証拠だもの」

伯母は声を落とした。

「珠希の結婚相手のこと、聞いてる?条件のいい人らしいわよ。銀行員で、ご両親も教師ですって。ただ、珠希の昔のこと、相手は知ってるのかしらね……」

「それは珠希の問題だから。自分のことは自分で何とかす
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    私は披露宴会場を後にした。外に出ると風が出ていて、芝生の上の風船が右に左に揺れていた。リゾートホテルの夜景は美しかった。人工池に映る灯りが、まるで金粉を散らしたように煌めいていた。池のほとりに立ち、深く息を吸い込む。空気には芝生と土の匂い、それから遠くのバーベキューコンロから漂う煙の匂いが混じっていた。スマホが鳴った。知夏からだった。「亜依里さん!初期データが出たよ!リリースから8時間で、ユーザー継続率87%!予想より12ポイントも高い!ねえ聞いて!うちのレコメンドアルゴリズム、競合の大手を完全に引き離したよ!」スピーカーにしなくても聞こえるくらいの大声だった。「ふふ、よかった」私は笑った。今回は本物の笑顔だった。誰かに体裁を取り繕うためでも、誰かへの気遣いでもなく、ただ純粋に嬉しかった。「結婚式にいるんだよね?どうだった?花嫁より目立っちゃった?」「まさか。控えめな格好で行ったから」「イケメンとの出会いはあったりした?」私は少し考えて答えた。「ひとりいた」「誰誰?どんな人?」「新郎の同僚で、篠田渉さんって人」「いい名前ね。顔は?」「まあまあ。目元が綺麗だった」「電話番号は聞いた?」「聞いてない」「亜依里さん!」知夏が電話の向こうで叫んだ。「正気なの!?こういう場で知り合う独身男性って優良物件なのよ!なんで番号聞かないの!」「向こうが連絡したいなら、方法は見つけるでしょ」「ドラマの見すぎだよ!現実にそんな展開、あるわけないじゃない!」私は笑っただけで、何も答えなかった。電話を切り、駐車場へ向かった。夜風に髪が乱れる。ホテルのロビーを通り過ぎたところで、後ろから誰かが追いかけてきた。「亜依里さん!」振り向くと渉だった。少し息を切らして走ってきたらしく、ジャケットを脱ぎ、シャツの袖を肘まで捲り上げていた。「まだ帰ってなかったんですか?」彼は膝に手をついて荒い息を二度ほど吐き、それから顔を上げて私を見た。「妹さんに、頼まれたんです」「珠希が、渉さんに?」「ひとりで車で来たんですよね。帰りは1時間以上かかるからって、ちゃんと無事に車に乗るか見てきてくれって」珠希が……今日会ったばかりの男性に私を追わせた?眉をひそめた。珠希らしくない

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    結婚式当日、私はスモークブルーのワンピースを着た。わざわざ新調したものではなく、手持ちの1着だ。化粧はごく薄く、普段仕事へ行く時よりも控えめにした。花嫁より目立ちたいわけではないけれど、自分が惨めに見えるのも嫌だった。実際のところ、私はとても順調にやっている。厚化粧をしたり、ブランド物のバッグを持ったりして、自分を誇示する必要などないのだ。結婚式は郊外のリゾートホテルで行われ、ガーデンでの挙式と屋外での披露宴が予定されていた。到着した時には招待客の半数以上がすでに集まっており、ほとんどが珠希の新しい職場での同僚や友人、あとは親族の姿もちらほら見えた。伯母が先に私に気づき、私の手を取って言った。「亜依里、来てくれたのね。少し痩せた?お仕事、無理してない?」「大丈夫、最近プロジェクトが忙しくて」「忙しいのはいいことよ、充実してる証拠だもの」伯母は声を落とした。「珠希の結婚相手のこと、聞いてる?条件のいい人らしいわよ。銀行員で、ご両親も教師ですって。ただ、珠希の昔のこと、相手は知ってるのかしらね……」「それは珠希の問題だから。自分のことは自分で何とかするでしょ」伯母は私をちらりと見て、言いかけてやめ、最後にため息をついた。「あなたは本当に、昔から物分かりが良すぎるのよね」物分かりが良すぎる。その言葉を聞いても、心は波立たなかった。以前は「物分かりが良い」と言われると褒め言葉だと思っていた。今はわかる。「物分かりが良い」の別の言い方は、「ただの都合のいい人間」だということに。挙式が始まる頃、私はガーデンの後方の席に腰を下ろした。あまり目立ちたくなかった。音楽が流れ、珠希が父の腕に手をかけてバージンロードを歩いてきた。あのマーメイドラインのドレスを身にまとい、長いベールが風に揺れて薄い霧のようだった。丁寧に施された化粧、きらめく瞳、口元はわずかに上がっている。上品でいて甘さも失わない、計算し尽くされた笑み。父の表情は複雑だった。口元は笑っているのに、目には何か潤んだものがある。父は大勢の招待客の向こうにいる私へ、そっと視線を向けた。その一瞬の視線には、たくさんの言葉が込められていた。すまない。来てくれてありがとう。それでもあの子は、お前の妹だから。そんな思いが伝わってきた。私はかすかに頷い

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