コッコちゃんの部屋で一行は、ジュースで乾杯をすると、お菓子を開けてプチパーティーを始めます。おいしいジュースとお菓子、そして楽しい会話に花を咲かせていると、ふとカラスの子が思いついたように尋ねました。
「そういえばコッコちゃんとアヒルさんはどんなふうに出会ったのかあ?」
「ぴよ? そうあれはアヒル帝国で夜ごはんをさがしていたとき……」
◆◆◆
その日、コッコちゃんは森を歩いていたぴよ。
そうしたらおいしそうなにおいがしたのぴよ!
コッコちゃん走ったぴよ!
そうしたらアヒルさんのおうちがあったぴよ!
アヒルさんがお庭でカレー作ってたのぴよ!
「おいしそうなカレーぴよね!」
アヒルさんはコッコちゃんに見向きもしなかったぴよ。だからアヒルさんの周囲をぐるぐる回ってやったぴよ。
「なんの用ぐわ」
「そのカレーわけてぴよ!」
「いやぐわ」
「わけてぴよ!!」
コッコちゃんはまたアヒルさんの周りで騒ぎまくったぴよ。
「……っ。わかったくわ。皿をもってくるくわ」
「わーいぴよ」
コッコちゃんはさっそくアヒルさんの家から皿をもってきて一緒にカレーをたべたのぴよ。
◆◆◆
「これがコッコちゃんとアヒルさんの出会いぴよー。なつかしぴよー」
そのとき部屋の扉がノックされ、扉が小さく開きました。
「こけ……カラス王様、一応夕飯を用意いたしましたこけが……」
「かあ。それはありがたいかあ。ごちそうになってもよいのかあ?」
「こけ……。粗末なものしかありませんこけがどうぞこちらにこけ」
「ぴよー! ごはんぴよー! いくぴよ!」
コッコちゃんは2人を引っ張って食卓に向かいます。食卓にはホカホカのパンケーキが1人10枚重ねで用意されおり、たっぷりのバターとメープルシロップがかけられておりました。さらにベーコンとポテトも添えてあります。
「わーい! いただきますぴよ! うん、うまい!」
コッコちゃんがガツガツ食べるのを見て、カラスの子とアヒルもフォークとナイフを持ち、「いただきます」をしました。そして一口。
「甘くておいしいかあ」
「くわ!」
3人は美味しくパンケーキを食べるのでした。
お花見からしばらく経って……完全復活を果たしたアヒルさんはにわとりのこっこちゃん、カラスの王様ノワールと共に王宮の庭でお茶をしていました。お茶菓子は八咫烏印のようかんです。そこに槍をもった衛兵カラスが飛んできます。「国王陛下、ご歓談中失礼いたします。部下が怪しい生き物を捕獲いたしました」「変な生き物? 見たい!」 まずはコッコちゃんが食いつきます。「かあも!」 そこにノワールも参戦します。 アヒルさんは、危ない生き物だったらどうするんくわ? と難しい顔をしています。 見たい見たーい! と騒ぐ二人にアヒルさんが困っていると、衛兵カラスが、アヒルさんに耳打ちします。「ひとまず危険はないか検査しておりますし、檻にも入れてあります。ご安心ください」 アヒルさんはため息をつくと、ノワールたちをともなって地下に様子を見に行くことにしました。◆◆◆「だせー! うーちゃんは鳥さんだー!」 檻の中で暴れているのはうさぎさん。アヒルさんははっきりと言いました。「おまえはうさぎ、哺乳類くわ。鳥じゃないくわ」「ちがう! ぼくらは鳥! 一羽二羽って数えるでしょ!」「へえ、こんな鳥さんもいるんかあねえ」 ノワールはすっかり信じてしまい、アヒルさんは自分の額を押さえました。「うさぎさんがカラスの国でなにしてるの?」 コッコちゃんが尋ねます。「うーちゃんも鳥さんの一員として、カラスさんたちと友達になりたいぴょん!」 アヒルさんはなんだかあざとそうなうさぎくわなあと思いましたが、ノワールは違いました。「ありがとうかあ! ぜひお茶会に参加してってかあ」 ノワールのカラスの一声で、うーちゃんの釈放がきまりました。
永い永い夢の中をまどろんでいたアヒルさん。でもずっとずっとずっと、だれかに呼ばれている気がしました。だからアヒルさんはがんばって目を開きました。するとそこには泣きながらも笑う、カラスの子とこっこちゃんがいました。「どうして……」 泣いているんくわ? という言葉は声になりませんでした。カラスの子とこっこちゃんに抱き着かれたからです。2人に抱き着かれたアヒルさんは、そのぬくもりにほほえみました。 優しいものがたりは、これからも続きます。 というわけで、カラスの子とコッコちゃんはアヒルさんの回復祝いをすることにしました。 アヒルさんのおうちの庭には、唯一人間界から持ち込みアヒルさんが育てた大きな桜の木がありました。 その木の下にレジャーシートを敷いて、コッコちゃんががんばって用意したごちそうを並べます。 いつもは料理をするアヒルさんも今日はお祝いされる側、しずかに桜の木の下でさくら色をしたジュースを飲んでいました。 アヒルさんにカラスの子が質問します。「アヒルさん、アヒルさん、この桜の木にはどんな想い出があるんですかあ?」「くわ? そうくわなあ。この木はくわが人間界から逃げるとき、助けてくれた存在からもらった小さな木から育てたのくわ。いつの間にかおっきくなったがなあ。くわくわ」「……人間界、やっぱり怖い場所なのかあ?」「……人間にもいろいろいるくわが、凶悪なのが多いくわな」「そうなのかあ」 人間とお友達になってみたいカラスの子はざんねんそうです。「まあまあこけこけ、とりあえずたべましょうこけ」 コッコちゃんがお通夜ムードを盛り上げます。 新鮮な卵を使った野菜の揚げ物をカラスの子に勧めます。「いただきます。……おいしいかあ!」「こういった「料理」をつくったのも人間くわあ」「かあ? 人間って不思議かあ」 カラスの子が首をかしげる中、お花見は続きました。
それからカラスの子と白カラスの盛大な結婚式が開かれました。お后様をえたカラスの子は成長し、立派な王様になりました。そしてたくさんの子宝にも恵まれました。 カラスの子はアヒルさんへの今までの感謝の気持ちを込めて、彼にナイトの称号を与えました。なんとカラス以外がカラスの国のナイトになったのは初めてのことでした。そしてナイトになったアヒルさんはいつまでもカラスの子と一緒にいて、公私ともにカラスの子を支えました。 さてひよこのコッコちゃんも立派なにわとりになりました。そして熱烈な求婚をへてアヒルさんと結婚しました。にわとりになったコッコちゃんは毎日カラスの国に朝を伝えるお仕事をすることになりました。 そんなたいへんながらも楽しい日々は過ぎていき、アヒルさんはかつてカラスの子と過ごしたアヒル帝国の家に帰ってきていました。アヒルさんは重い重い病気になってしまったからです。 アヒルさんはかつてカラスの子と一緒に寝た思い出のベッドで、ぐったりと横になっていました。その周りにはカラスの子とコッコちゃん、そしてアヒルさんとコッコちゃんの子どもがいました。「かあ……死なないでアヒルさん……」「……もう、おまえはひとりぼっちじゃないからだいじょうぶくわ」「そんなこと言わないでかあ……父さん……」 カラスの子はずっと呼びたかった呼び方でアヒルを呼びました。「父さん」と呼ばれたアヒルは少しだけ微笑みました。「……ノワール、コッコ、そしてくわが子よ。楽しかったぞ」 そういってアヒルさんは目を閉じました。カラスの子やコッコちゃんたちが泣いているような気がしましたが、アヒルさんにはもうどうすることもできませんでした。 そしてアヒルさんは永い永い夢をみるのでした。生まれてから、今日までのことを。 カラスの子と過ごした日々。 コッコちゃんと過ごした日々。 すべてがアヒルさんの大切な思い出です。 優しい眠りの中でアヒルさんはとても、幸せでした。
「こほこほ」 にわとりの里からカラスの国の宮殿に帰ってきたアヒルさんは、1人自室で咳をしていました。もともとヒナの頃にひどい環境でそだったアヒルさんはあまり身体が丈夫ではありませんでした。そんな折、部屋の扉がノックされました。「どうぞくわ」「失礼しますか。アヒルさん、相談があるかあ」「どうした?」「実は……」 カラスの子は1枚の写真をアヒルさんに見せました。そこには珍しい白いカラスが写っていました。「かあ、この子にひとめぼれしてしまいましたか! どうすればいいか?」「くわあ?」 アヒルさんもあまり恋愛関係は得意ではありませんでした。とはいえカラスの子の悩みをむげにもできません。「とりあえずラブレターを書くわあ」「かあ!」 さっそくつくえにむかったカラスの子は、アヒルさんの添削を受けながらラブレターを書きました。そうしてラブレターを送ったカラスの子ですが作戦は見事に成功。愛しの白カラスと文通にこぎつけました。しばらくは手紙のやり取りをつづけていましたが、カラスの子はアヒルさんのアドバイスで、お城で開かれる舞踏会に誘ってみることにしました。そして今日は舞踏会の日、カラスの子は朝から緊張していました。「そんなに固くなるなくわあ」「でもおでもおかあ」 そんな状態で舞踏会は始まりました。カラスの子がきょろきょろと白カラスを探すと、舞踏会のはじっこにちょこんといるのを見つけました。カラスの子は急いで駆け寄ります。「か、かあ! はじめましてか!」「はじめまして。カラス王様。この度はお招きいただき誠にありがとうございます」「あ、あの! かあと1曲踊っていただけませんか!」「もちろんです」 2人はしっとりとした曲が流れる中、ゆっくりとダンスを楽しみました。でもカラスの子は白カラスの羽を握ったことでドッキドキでした。2人の長くて短いダンスはやがて終わりを迎えました。でもカラスの子は白カラスの羽を離しません。白カラスは不思議そうにしましたが、カラスの子は意を決したように口を開きました。「……かあと、かあの、お后様になってくれませんかあ」 白カラスは驚きましたが、すぐに優しく微笑みました。「わたくしでよろしければよろこんで」「……え? ほんとにいいかあ?」「はい」「……やったかあ!」 カラスの子はうれしくて白カラスを抱きしめました。そ
コッコちゃんの部屋で一行は、ジュースで乾杯をすると、お菓子を開けてプチパーティーを始めます。おいしいジュースとお菓子、そして楽しい会話に花を咲かせていると、ふとカラスの子が思いついたように尋ねました。「そういえばコッコちゃんとアヒルさんはどんなふうに出会ったのかあ?」「ぴよ? そうあれはアヒル帝国で夜ごはんをさがしていたとき……」◆◆◆ その日、コッコちゃんは森を歩いていたぴよ。 そうしたらおいしそうなにおいがしたのぴよ! コッコちゃん走ったぴよ! そうしたらアヒルさんのおうちがあったぴよ! アヒルさんがお庭でカレー作ってたのぴよ!「おいしそうなカレーぴよね!」 アヒルさんはコッコちゃんに見向きもしなかったぴよ。だからアヒルさんの周囲をぐるぐる回ってやったぴよ。「なんの用ぐわ」「そのカレーわけてぴよ!」「いやぐわ」「わけてぴよ!!」 コッコちゃんはまたアヒルさんの周りで騒ぎまくったぴよ。「……っ。わかったくわ。皿をもってくるくわ」「わーいぴよ」 コッコちゃんはさっそくアヒルさんの家から皿をもってきて一緒にカレーをたべたのぴよ。◆◆◆「これがコッコちゃんとアヒルさんの出会いぴよー。なつかしぴよー」 そのとき部屋の扉がノックされ、扉が小さく開きました。「こけ……カラス王様、一応夕飯を用意いたしましたこけが……」「かあ。それはありがたいかあ。ごちそうになってもよいのかあ?」「こけ……。粗末なものしかありませんこけがどうぞこちらにこけ」「ぴよー! ごはんぴよー! いくぴよ!」 コッコちゃんは2人を引っ張って食卓に向かいます。食卓にはホカホカのパンケーキが1人10枚重ねで用意されおり、たっぷりのバターとメープルシロップがかけられておりました。さらにベーコンとポテトも添えてあります。「わーい! いただきますぴよ! うん、うまい!」 コッコちゃんがガツガツ食べるのを見て、カラスの子とアヒルもフォークとナイフを持ち、「いただきます」をしました。そして一口。「甘くておいしいかあ」「くわ!」 3人は美味しくパンケーキを食べるのでした。
「ぴよの故郷にいこーよぴよ!」 カラスの子が王様の仕事にすこしなれたころ、とつぜんコッコちゃんが言い出しました。カラスの子もアヒルさんも困惑しましたが、コッコちゃんが言い出したら聞かない性格なのを理解しているため、次のお休みの日にお忍びでコッコちゃんの故郷である〝にわとりの里〟に向かうことにしました。 にわとりの里はアヒル帝国から見て東にあり、朝日とともに大きな鳴き声がとどろくことから、朝の里とも呼ばれています。「ついたよついたよ! ここがぴよの故郷!」 コッコちゃんは里の入り口で楽しそうに踊りだします。「くわあ。ここに来るのはひさしぶりくわあ」「アヒルさんはここに来たことがかあ?」「くわ。まあ入り口までだがなあ」「さあ! いくぴよ!」 コッコちゃんはしゃべる二人の羽をつかんでずんずん進みます。まずは商店街をぶらりと散策です。「ここは里でいちばんの商店街ぴよ! そしてこれがあーー!」 コッコちゃんは三人分の飲み物を買ってきます。「ひよこの里名物! 生みたて卵のミルクセーキぴよ!」 ひよこから受け取ったアヒルさんとカラスの子は顔を見合わせてからストローを口にします。「あまい!」 二人は同時に言いました。「ぴよぴよ。それがいーのぴよー!」 コッコちゃんはおいしそうにごくごく飲むのでした。 そうしてひよこたちが歩いていると、ひときわ大きなにわとりに守られた、おしゃれなにわとりの一団をみかけました。「あ、あのにわとりたちはこの里で一番偉いうこっけーさんたちぴよな。ぼでーがーどをしているのは、里で一番つよいしゃもさんぴよ。ぴよもうこっけーさんみたいにきれーなにわとりになりたいぴよ!」 コッコちゃんの説明を聞きながら、アヒルさんとカラスの子は一団を眺めるのでした。◆◆◆ そしてコッコちゃんは自分の巣へ2人を案内しました。元気よく巣の扉を開けます。「ぱぱー! ままー! ただいまぴよー!」「あらあらこけこけコッコちゃん。おかえりなさい。……あら、そちらはこけ?」「ブランとノワールぴよ!」「こけ? ノワール? そういえば最近即位されたカラスの国の王様がそんな名前だったような?」「ぴよ? カラス王本人ぴよよ?」「こ、こ、こけえええええええ!?」「ぴよよ、今日ぴよの巣に泊めるからー」 コッコちゃんはいつでもどこでもマイペースな