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第512話

Author: 木憐青
秘書が慎重に部屋に入り、書類を差し出した。

「社長、こちらが最新の財務状況です......ご覧ください」

静雄は苛立たしげに手を振り、秘書の言葉を遮った。

「もういい。見たくない」

今の彼にとって、会社の財務に関する書類は、目にしただけで頭が割れるような苦痛を伴うものだった。

秘書は困ったように小さく息をつき、書類を机の上に置くと、何も言わずに部屋を後にした。

オフィスは再び、重苦しい静寂に包まれた。

静雄は目を閉じた。

すると脳裏に、深雪と延浩が肩を並べて歩く姿が浮かび上がった。

二人は眩いほどに輝き、今の自分の没落ぶりと、あまりにも鮮烈な対比をなしている。

嫉妬と後悔が、毒蛇のように心を噛み締めた。

かつての深雪を、彼は思い出した。

優しく、気配りができ、いつも彼の気持ちを察してくれた。

あの頃の彼女の瞳には、彼しか映っていなかった。

そのすべてがまさに愛だった。

もしあの時、あれほど傲慢でなければ。

あれほど冷酷でなければ。

芽衣の言葉を、疑いもせず信じ込まなければ。

自分と深雪の未来は、まったく違うものになっていたのではないか。

そんな思い
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