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第339話

Author: レイシ大好き
アシスタントはそばで様子を見ていたが、恐ろしくて前に出ることができなかった。

彼女は小さな声で言った。

「ジョンさん、落ち着いてください。何があったんですか?」

秘書の声を聞いて、ジョンの理性がようやく少し戻ってきた。

「お前はどう思う?あのクソ女、一体何を考えてるんだ?」

ジョンは歯ぎしりしながら言った。

「よくもそんな真似を......!」

そう思うだけで、ジョンは胸が詰まる思いだった。

最初は確かに、紗雪は自分のものだったはずなのに。

それなのに、あの女はどうしてあっさり他人のところに行けるんだ?

秘書はスマホを取り出し、今日のニュースのトップを見ながら、内心少し感慨深く思った。

まさか、紗雪がこんなに早く新たな協力相手を見つけるとは思わなかった。

LC社はどうなるのか?

秘書は元々、ジョンにそれを尋ねるつもりだったが、今の彼の様子を見る限り、何も言う気にはなれなかった。

実を言えば、最初から彼女は言いたかったのだ。

明らかにジョン自身が二川さんを突き放したのだから、彼女が他の相手と組むのも、至って普通のことではないかと。

なのに今になって、まるで裏切られたかのように騒ぎ立てて、心が穏やかでないとか言われても。

もし自分が二川さんなら、ジョンはちょっとおかしいと思うはずだ。

とはいえ、それも秘書の心の中にだけ留めておいた。

ジョンは秘書を一瞥すると、すぐ近くの物を手に取り、それを彼女に向かって投げつけた。

「出て行け!ドアを閉めろ!」

「はい」

秘書はおどおどと部屋を出て行った。

外に出た彼女は思わず目をぐるりと回し、心の中で「マジで頭おかしい」と毒づいた。

ジョンはドアが閉まったのを確認すると、再びスマホを取り出してニュースを見た。

紗雪が、なんとあの宿敵・ランドと手を組んでいたのだ!

「ランドのやつ......ほんとに、こういう時に隙を突くのがうまい......」

ジョンは拳をぎゅっと握りしめた。

「いいだろう、紗雪......うちとの契約を切りたいってんなら、私ももう昔の情なんて考えないからな」

自分に稼がせたくないってんなら、誰にも楽はさせない......

ジョンは次の対策を考える暇もなく、会社からメッセージが届いた。

今週、本社で会議が開かれるとのことだった。

最終的に、常務のポストが誰
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