「昼休憩に入ろうか」
美容室は病院や整骨院みたいに昼休みがあるわけではなくて、お客さんが途切れた合間などにお昼ご飯を食べるみたいだ、今の時間は13時だが今から1時間ほど間が空いたからお昼ご飯を食べることになった。
「山田さんはいつもお弁当なんですか?」
山田さんの弁当は色合いもよく野菜と肉がバランスよく入っているものだった
「うちは奥さんが毎日作ってくれている愛妻弁当だ。羨ましいだろ」
「羨ましいかはわかりませんがいいですね」
「瑞樹ノリ悪いな」
「すいません」
「山田さん一つ質問良いですか?」
敬都が山田さんに質問をした
「いいぞ」
「B&Cってどうゆう意味があるんですか?美容室っていろんな名前があっておしゃれなものから美容師さんの名字をそのまま使っているところとか様々だと思うんですが、山田さんはなんでB&Cってつけたのかなと思って」
「別に大した理由はないけど聞いちゃう?」
「はい」
「B&Cはな....」
「.....」
山田さんは数秒間をおいた
「ブラックコーヒーって意味だ!!」
「????」
俺と敬都のあまたの中には?しか思い浮かばなかった
「ブラックコーヒーですか?」
「そう。俺がお店を独立したのは25歳の時で、独立というよりは元々あった美容師を居抜きという方で引き継いだというのが正しいかな。さっき敬都がいったように美容室の名前っておしゃれだし個性的なものが多いだろ?だからいろいろな候補をあげてもしっくりこなくて。でもお店のオープンの日は決めていたから店名は決めないといけなかった。この名前をつけたときはカフェでオープン準備の事務作業をしていたときで。その時にマスターが淹れてくれたコーヒーがめちゃくちゃ美味しくて、なんか頭のモヤが晴れたような気がしたんだ」
山田さんは持っていた缶コーヒーを飲んで続けた
「ブラックコーヒーって苦いけど美味しいんだ。最初は苦くて飲めなかったけど徐々に飲み続けていけばブラックしか飲めなくなってしまうぐらい美味しく感じるんだ。美容師は外から見たら煌びらかな印象があるけど実際に働いてみると辛いこと苦しいことはたくさんある。それでも続けていけば美容師が一番いいと思える瞬間があると思う。それに経営も人生も簡単じゃない。こんな美容室になりたいというよりはこの名前は自分に対して「お前の道は甘くないぞ」の意味も込めて付けた感じかな。まぁ最初は思い付きからのほかは後付けの理由だがな」
「思ってた以上に山田さんの理由がかっこよくて戸惑っています」
「僕も瑞樹と同じ気持ちです。山田さんってちゃんといろいろ考えているんですね」
「2人は今日会っただけの人間にどんな印象をもっているのかな」
「適当」
「単純」
「おい、おまえら表に出ろ」
本当は俺も敬都も初めて会って数時間で冗談を言い合えるような空気を作ってくれている山田さんのすごさを尊敬している。
「ついでにもう一つ聞いていいですか?」
「なんだ瑞樹」
「職場体験の職場を決めるときに男子の方がいいと書いてあったのはどうしてですか?クラスでも美容室で体験してみたいって子たちがいたから」
「それは単純に女子高生と2人とかと同じ空間にずっといても話すことがないし、2人でこそこそ話されたら悪口いわれてるんじゃないかと気にするかもしれないだろ」
「悪口を言われるかはわかりませんが」
「普通に男同士の方が気軽で楽しいってことよ」
「なるほどですね」
確かに、今はなしているのが女性の美容師だったら俺と敬都もこんなラフな空気を作れていないかもしれない。陰キャ二人としてはこの空間は大いに助かる。
敬都も同じ気持ちなんだろう。山田さんの話をうなずきながら聞いている。
「さて、昼ご飯も食べたしあと一人お客さんしたら今日は終わりだ」
「「はい」」
次に来るお客さんは中3年生の女の子だった
「こんにちは」
女の子は元気いっぱいで来店した
「いらっしゃい」
「「いらっしゃいませ」」
「.....」
「ごめん西村さん、びっくりしたよね。この二人は青和春歌高校の高校2年生で二日間職場体験できているんだよ。だから普段と違うかもしれないけど気にしなくていいから」
「えっ。青和春歌ですか??」
「そうです」
「え~~~~~~。私今中学3年生なんですが、青春高校を第一希望で受験しようと思っていたんです」
「そうだったの?なら今日はカットの時間二人に聞きたいことがあれば、なんでも質問していいよ」
「いいんですか?なら質問考えます」
西村さんが言った青春高校というのは俺たちが通っている高校の略称だ。他には青高などともいわれるが、青春というワードが高校生にはいいらしく、俺たちが通っている高校はこの辺じゃ人気を誇っている。
「じゃぁなんでお二人は青春高校を選んだんですか?」
「俺は家が近かったからかな」
「僕は男子高よりは共学の方が安全な学生生活を送れるかなと思って」
「2人とも志望動機に説得力がないな」
「でも!学校行事が多いのは楽しそうだなって思ったよ」
うちの学校は他の学校に比べても学校行事の数が多いといわれている。
この職場体験が終わると次は文化祭の準備が始まる。
それから夏休みを挟んで体育祭がある。
だいたい1~2か月に1度はイベントが組み込まれている。
元々青春高校は名前さえ書けば受かるような馬鹿学校で有名だったそうだが、校長先生が変わって学校行事などに重点を置いたり、スポーツに力を入れたりした効果で徐々に学生のレベルが上がり、今では県内で人気の高校になったわけだ。
「そうなんですよ!私もオープンキャンパスで話を聞いたんですが、他の高校に比べて学校行事が楽しそうなんです」
「よかったら今度の文化祭友達とおいでよ。うちの学校外部からくるのOKだから」
「絶対行きます。友達誘っていきます」
「あとは勉強がちょっと不安なんです。勉強が苦手というわけではないんですが、親からは勉強しなさいっていわれているし、塾にも通っているんですが、自分の気持ちがのってこなくて」
「僕もそんなときがあったな。僕はアニメや漫画が好きだから隙あらば趣味の方に走ってしまうから勉強よりも趣味を優先してしまうところがあって、親からはずっと勉強しなさいって言われていたな」
「先輩はどうやってモチベーションあげたんですか?」
「僕の場合は単純で親に勉強しないならあんたの大事なもの捨てるからと本気な感じで言われて頑張った感じかな」
「それはえぐいな」
「そのあと勉強したから捨てられずにすんだんだけど。瑞樹はどうだったの?」
「俺は最後までモチベーション上がらずになんとかギリギリ受かった感じかな」
「天才かよ」
「全然天才とかじゃなくて、要点を抑える勉強していたらそこがちゃんと出た感じかな。あとは塾の先生が言っていたところが結構出たのも大きかったかな」
「それは先輩のポテンシャルがすごいだけで、私にその勉強方法は無理です」
今まで静かに聞いていた山田さんが口をひらいた
「多分それに関してはみんな「同じ」じゃなくてみんな「違う」が正しいんだと思う。敬都にとっては大事なものを捨てられたくない気持ちがモチベーションに繋がった。逆に瑞樹はモチベーションは一定だったからやるべきことをちゃんとやった。西村さんもみんなのようなモチベーションを意識しなくてよくて、自分のペースを見つけていくことがいいんじゃないかな。そっちほうが病まずに済むと思う。受験シーズンのニュースをみていたら、鬱になって自殺する人もいるぐらい、受験勉強は精神的に来るんだと思う。だからまずは健康的に頑張るのが一番だとおっちゃんは思うな」
「自分のペース・・・・」
「あとは目標とかを立てたらいんじゃない」
「目標?」
「この学校でこうゆうことしてみたい。憧れの先輩に会いたいとか。恋愛したいとか。部活を頑張りたいとか。なんでもいいから目標を立てたら具体的に頑張れるかもしれないなと思って」
「それいいですね!!」
「俺たちは西村さんのことを学校で待っているから頑張って」
「あっ。でも僕たち学校では陰キャポジションにいるから近づきにくいかもしれないけど」
「そうなんですか?」
「そうだよ。でも西村さんが学校で見かけたらこっちから話しかけるよ」
「ありがとうございます」
「瑞樹ちょっとタオルとってきて」
「はい」
「先輩」
西村さんは敬都に話しかけた
「?」
「あの先輩って彼女いるんですか?私めちゃくちゃタイプなんですけど」
敬都は西村さんのまさかの質問に驚いた
それと同時にさっき「目標を立てた方がいい」的な話をしていた女の子に
いきなり目標の一つを消すようなことを言っていいのかを考えた
だが、瑞樹と嶋野さんのことは学校に来れば遅かれ早かれわかることだと多い正直に話すことにした
「いるよ」
「そうなんですね」
「彼女は学校では有名な人だから文化祭なんかで学校に来た時にみてみるといいよ」
「はい。ぜひ」
西村さんの目はまったく落ち込んでおらず、逆に輝きに満ちていたことを知る人はこの中にはいなかった
「文化祭絶対いきます」
施術が終わり、帰り際西村さんは元気よく帰っていった
敬都と山田は先ほどの会話を瑞樹には話さなかった
「さて今日はあがっていいぞ」
そして俺たちの職場体験一日目の終わりの時間になり。
キリのいいところまで仕事を手伝い帰宅した。
「明日までよろしくな」
「「はい」」
「今日は夕方予約入っていないから店閉めてラーメン食べに行こう」「お店閉めていいんですか?」「いいのいいの。予約制でしているから予約が入っていなくて予定があるときは少し早めにしめるのは結構多いから。それに時間の融通を利かせることができるのは自営業の特権だから」個人的に自営業の都合はよくわからないが、山田さんがいいというのだからいいんだろう。確かに予約制じゃないお店の場合いつお客さんがくるかわからないから営業時間まであけておかないと文句を言う人がいるかもしれないが、予約制だったらコントロールはしやすいのだろう。「それでラーメン食べに行く?」「「いきます」」「よかった。最近の若い子ってこうゆう誘い嫌がる子多いらしいから」それは俺もテレビやSNSで見たことがある。上司からのご飯の誘いが苦だと感じる人は多いらしい。でもこんだけよくしてもらっている山田さんの誘いを嫌と思うわけなくて喜んでという気持ちが強かった。まぁこれが嫌いな上司だったら嫌だと思うのは当然だと思うが。。。会社の上下関係も大変だな・・・山田さんが閉店の準備をしている間、俺と敬都も掃除などを手伝った。夕方5時のタイミングでお店を閉めて、近所のラーメン屋に入った「好きなの頼んでいいから。今日は俺の奢り」「いいんですか?」「当たり前だろ。俺から誘ったうえに高校生に手出しさせるなんて美春に殺される」なんでだろう。俺たちにお金を出させたことを普通に報告してすごく怒っている美春さんが想像できてしまった。美春さんごめんなさい「じゃぁお言葉に甘えて」「おう」俺も敬都も定番のラーメン+チャーハンセットを注文した。「2人はよく飯にいったりするのか?」「2人ではあまりないかもしれないですね」思い返してみると敬都と2人のご飯はないかもしれない「2人はないんですが、よく3人か4人で一緒にいます」「もしかして今日の2人かな?」「そうです」「でも3人ってもしかして瑞樹と嶋野さんと敬都ってこと?」「そうです」「敬都お疲れ様」「はい・・・」なんで敬都がお疲れ様と言われているのかはわからなかったがなんとなく俺と愛のことなんだろうは思う「実際に美容室で働いてみてどうだった?」「はい。すごくいい経験になりました。俺は髪の毛をセットするのは好きだったけど誰かの髪の毛をという視点はあ
「なんで2人がきているの?」「私たちの職場は2日目は午前中で終わるってわかっていたからネットで予約しました」「なるほど」「ダメだった?」「ダメじゃないよ」「よかった」「なんだ二人の知り合いか。それにしても二人ともかなり美人だな」「知り合いというかクラスが一緒の同級生です」「左の人は瑞樹の彼女です」「おい瑞樹。お前は実はすごい系の男だったりするのか?」初めてみる人からしたら俺みたいな陰キャにあんな美人の彼女がいたら不自然に思うのは当然だろう「しかも瑞樹の彼女は学校でもクラスでもNo1と言われているぐらいの人です」「おい瑞樹。お前実は惚れさせる能力でももっているんじゃないか」「持ってませんよ。本当にたまたまご縁がありましてお付き合いすることになりました」「お見合いか」「ほんとですよね。たまたまあんな美人と付き合えるはラノベの主人公ぐらいですよ」「さっきから敬都くんの言葉に悪意を感じるのは気のせいかな」「気のせいです」「まぁ冗談はさておき、嶋野さんと春乃さんはカットで予約してもらっていたけど一人ずつでいいかな?」「はい。愛ちゃんからしてもらおう」「うん」愛のカットの時は後ろには俺がつくようになり、敬都はさくらさんと話しているなんか最近あの二人仲良くなっていないかな「愛さん。なんかこっちを見ているのは気のせいかな?」「本当だよ。俺のカットをみてほしいのに」「あっすいません。ついみっちゃんがかっこよくて見つめていました」「あ、そう...」恥ずかしがることなくストレートな物言いに山田さんは言葉がでなくなってしまっている「嶋野さんは瑞樹のことが大好きなんだね」「はい。みっちゃん以外に興味がないぐらい好きです」「うん。ちょっとまってね。おい瑞樹。お前の彼女なんかすごくないか」「はい。何もしていなかったら才色兼備なんですが、裏ではだいぶポンコツなんです」「そっか。了解。瑞樹せっかくだから嶋野さんの髪の毛ドライヤーで乾かしてあげたら」「えっ。できますか?」「大丈夫。だいたいでいいからやってあげな。多分俺がするよりも瑞樹がした方が嶋野さん喜ぶと思うよ」愛の方を見ていると嬉しそうに目がキラキラしているようにみるのは多分気のせい俺がドライヤーで愛の髪を乾かしている間に山田さんはさくらさんをカットするらしい。さくらさん
「職場体験一日目どうだった?」「めちゃくちゃ楽しかったよ。山田さんって美容師さんも優しくて面白い人だったし。愛は保育園どうだった?」「う~ん。やっぱり子供って難しいよね。予想外の動きをするし変なこと言ってくるし、途中いらってくることもあったけど、さくらからなだめられて落ち着いたよ」「それはよかった」「愛の先生姿みてみたいけどな」「それなら今度みっちゃんの先生になってあげる」「それは恥ずかしいな」「みっちゃんの美容室で働いている姿をみてみたい」「それこそ後ろに立っているだけだよ」「いいのいいの」なぜか上機嫌の愛に違和感を覚えながらも、お互いの近況報告を終えてその日は早めに寝た~職場体験2日目~2日目も1日目と同様に朝から二人のお客さんの予約が入っていて、昼から2人のお客さんが同時に入っているらしい。普段はマンツーマンスタイルでやっているから2人同時に予約を入れることはないそうだが、家族や友達でくる場合は2人同時にすることもあるそうだ。だから今日は俺も敬都も2人組が終わるまではいてほしいといわれた。それでも夜までというわけではないから喜んで了承した。朝のお客さんを終えて昼休憩に入ろうとしたタイミングでお店に女性が入ってきて「「いらしゃいませ」」「私はお客さんじゃないからきにしなくていいわよ」「????」「お~。来たか。2人とも昨日話したけど俺の奥さんの山田美春だ」「山田美春です。よろしくお願いします。あなたたちが瑞樹と敬都ね。昨日の夜2人のことをこの人ずっと話していたから覚えちゃった」「はい。松岡瑞樹です」「中村敬都です」「じゃぁ俺は今からお客さんしてくるから美春が買ってきたデザートでも食べて休憩していていいぞ」「「はい」」「2人ともB&Cはどう?楽しんでる?」「山田さんが予想以上に接しやすくて楽しんで体験できています」「僕も人見知りな方なんですが、山田さんは人見知りな僕でも話やすい環境を作ってくれるから助かります」「まぁあの人の長所だからね。今でこそあんな感じだけど最初の方は不安でいっぱいだったんだよ」「今の山田さんみていたらポジティブな印象しかなないので、ネガティブ山田さんを想像できないです」「そりゃそうよね。私たちが結婚したのはこのお店がオープンして1年後だったの。だからオープンした時はまだ付き合ってい
「昼休憩に入ろうか」美容室は病院や整骨院みたいに昼休みがあるわけではなくて、お客さんが途切れた合間などにお昼ご飯を食べるみたいだ、今の時間は13時だが今から1時間ほど間が空いたからお昼ご飯を食べることになった。「山田さんはいつもお弁当なんですか?」山田さんの弁当は色合いもよく野菜と肉がバランスよく入っているものだった「うちは奥さんが毎日作ってくれている愛妻弁当だ。羨ましいだろ」「羨ましいかはわかりませんがいいですね」「瑞樹ノリ悪いな」「すいません」「山田さん一つ質問良いですか?」敬都が山田さんに質問をした「いいぞ」「B&Cってどうゆう意味があるんですか?美容室っていろんな名前があっておしゃれなものから美容師さんの名字をそのまま使っているところとか様々だと思うんですが、山田さんはなんでB&Cってつけたのかなと思って」「別に大した理由はないけど聞いちゃう?」「はい」「B&Cはな....」「.....」山田さんは数秒間をおいた「ブラックコーヒーって意味だ!!」「????」俺と敬都のあまたの中には?しか思い浮かばなかった「ブラックコーヒーですか?」「そう。俺がお店を独立したのは25歳の時で、独立というよりは元々あった美容師を居抜きという方で引き継いだというのが正しいかな。さっき敬都がいったように美容室の名前っておしゃれだし個性的なものが多いだろ?だからいろいろな候補をあげてもしっくりこなくて。でもお店のオープンの日は決めていたから店名は決めないといけなかった。この名前をつけたときはカフェでオープン準備の事務作業をしていたときで。その時にマスターが淹れてくれたコーヒーがめちゃくちゃ美味しくて、なんか頭のモヤが晴れたような気がしたんだ」山田さんは持っていた缶コーヒーを飲んで続けた「ブラックコーヒーって苦いけど美味しいんだ。最初は苦くて飲めなかったけど徐々に飲み続けていけばブラックしか飲めなくなってしまうぐらい美味しく感じるんだ。美容師は外から見たら煌びらかな印象があるけど実際に働いてみると辛いこと苦しいことはたくさんある。それでも続けていけば美容師が一番いいと思える瞬間があると思う。それに経営も人生も簡単じゃない。こんな美容室になりたいというよりはこの名前は自分に対して「お前の道は甘くないぞ」の意味も込めて付けた感じかな。まぁ最初
「一人目のお客さんは谷口さんっていって30代の女性の方で、メニューはカットとカラーだから敬都はカットの後の掃除やカラーの準備の手伝い、瑞樹は飲み物の準備をお願いするから準備してて」「「はい」」山田さんのやり方は事前にやることを教えてくれるスタイルみたいだ。これは俺と敬都みたいな陰キャにとってはすごく助かる。陽キャにあって陰キャにないもの、それは「コミュ力」である。コミュ力が弱いということは急な展開にも弱いということだ。だからお客さんがきて急に飲み物準備してといわれてもすぐに動くことができない。しかし事前に教えてくれれば気持ち面でも準備することができる。おそらく敬都も同じ気持ちだろ。山田さんの話を真剣に聞いている。早速予約の時間に合わせて谷口さんが来店してきた「「いらっしゃいませ」」事前に言われた通り、お客さんが入ってきたら元気に「いらっしゃいませ」という。元気にいえたかはわからないが俺も敬都も無事にいうことができた「えっ新しいスタッフ雇ったの?」谷口さんはいつも通っている美容室で2人の若者に迎えられて驚いている様子だ「違います違います。この子たちは高校生で職場体験で今日から2日間うちで働いてもらうんです」「なるほど。流石に2人も雇う余裕はないか」「本気出せばいけるっすよ」「いつ本気出すか楽しみだね~~」今の会話だけでも山田さんがお客さんによく思われているのが伝わった席に座ると山田さんは谷口さんに要望などを聞いて髪を切りだした。髪の毛を切っているときの山田さんはさっきまでののほほんとした雰囲気から一転してプロの美容師って感じがしてかっこよかった「ねぇ山田君。いつもよりちょっとかっこつけてない?」「なんでいうんですか。高校生の前だからかっこつけていたのに」「だっていつももっとへらへらしているじゃない」思っていたイメージとは違ったみたいだただ、山田さんの手際の良さは流石の一言で話しながらも素早くカットを終えた「あとはカラーが終わってから仕上げのときに切りますね」「はぁい」敬都は山田さんの切った髪の毛を掃除し、俺は谷口さんに飲みたい飲み物をきき飲み物の準備をしている。たった飲み物を聞くだけの簡単作業ですら緊張してしまっている陰キャですいません。山田さんは話しながらも手早くカラーを塗り終えた。俺も卒業したらカラー
俺と敬都はB&Cという美容室に決めた。B&Cは男性が一人で経営している美容室で、男子生徒が希望ということと家から近かったのもあり、この美容室に決めた。今日は2日間の職場体験の1日目である。職場体験は職場に合わせた服装でいいということで、B&Kの方に電話すると「私服でいいよ」といってもらえたので、今日は愛とデートしたときに着た洋服といつものように髪の毛をセットしてお店に向かった。途中で敬都と合流したが、敬都も最初に出会った時とは見違えるほど髪の毛のセットが上達している。あれからも続けて練習しているのだろう。「こんにちは」「あ~君たちが職場体験の子たちだね」「はい。今日から二日間よろしくお願いします」「君たち2人さ、そのセットは自分でやってきたの?」「はい!ダメでしたか?」「う~~~ん.....めちゃくちゃいけてるじゃん」「はぁ...」「最近子たちはセットが上手だとは思っていたけど二人ともすごく上手だね」「ありがとうございます」「まず自己紹介からだね。俺の名前は山田大輔です。名字でも名前でも好きな方で呼んでくれていいから」「はい。松岡瑞樹です。二日間よろしくお願いします」「僕は中村敬都と申します。よろしくお願いします」「了解。瑞樹と敬都だね。二日間よろしく」流石美容師さん。初めて会って数分で会話の主導権は握りつつ俺たちの緊張をほぐしながら喋りやすい空間を作ってくれている。俺も敬都も人見知り気質があるからこそ、このような方はありがたい「それで今日から二日間体験してもらうんだけど、ざっとうちの店のことについて説明するね。うちの店は見ての通り俺が一人で経営しているお店でスタッフも雇っていないから、カットからシャンプーからドライヤーで仕上げまで全部一人でやっていて、マンツーマンスタイルでやっているから同じ時間帯にお客さんが重なることは基本的にない。それに予約制だから飛び込みで入ってくる人も少ないからある程度余裕をもって体験してもらえるかなと思