「職場体験一日目どうだった?」

「めちゃくちゃ楽しかったよ。山田さんって美容師さんも優しくて面白い人だったし。愛は保育園どうだった?」

「う~ん。やっぱり子供って難しいよね。予想外の動きをするし変なこと言ってくるし、途中いらってくることもあったけど、さくらからなだめられて落ち着いたよ」

「それはよかった」

「愛の先生姿みてみたいけどな」

「それなら今度みっちゃんの先生になってあげる」

「それは恥ずかしいな」

「みっちゃんの美容室で働いている姿をみてみたい」

「それこそ後ろに立っているだけだよ」

「いいのいいの」

なぜか上機嫌の愛に違和感を覚えながらも、お互いの近況報告を終えてその日は早めに寝た

~職場体験2日目~

2日目も1日目と同様に朝から二人のお客さんの予約が入っていて、昼から2人のお客さんが同時に入っているらしい。

普段はマンツーマンスタイルでやっているから2人同時に予約を入れることはないそうだが、家族や友達でくる場合は2人同時にすることもあるそうだ。

だから今日は俺も敬都も2人組が終わるまではいてほしいといわれた。

それでも夜までというわけではないから喜んで了承した。

朝のお客さんを終えて昼休憩に入ろうとしたタイミングでお店に女性が入ってきて

「「いらしゃいませ」」

「私はお客さんじゃないからきにしなくていいわよ」

「????」

「お~。来たか。2人とも昨日話したけど俺の奥さんの山田美春だ」

「山田美春です。よろしくお願いします。あなたたちが瑞樹と敬都ね。昨日の夜2人のことをこの人ずっと話していたから覚えちゃった」

「はい。松岡瑞樹です」

「中村敬都です」

「じゃぁ俺は今からお客さんしてくるから美春が買ってきたデザートでも食べて休憩していていいぞ」

「「はい」」

「2人ともB&Cはどう?楽しんでる?」

「山田さんが予想以上に接しやすくて楽しんで体験できています」

「僕も人見知りな方なんですが、山田さんは人見知りな僕でも話やすい環境を作ってくれるから助かります」

「まぁあの人の長所だからね。今でこそあんな感じだけど最初の方は不安でいっぱいだったんだよ」

「今の山田さんみていたらポジティブな印象しかなないので、ネガティブ山田さんを想像できないです」

「そりゃそうよね。私たちが結婚したのはこのお店がオープンして1年後だったの。だからオープンした時はまだ付き合っていたときだね。今は同じ家に住んでいるから少しの変化もわかるけど、当時はまだお互い実家に住んでいたから私も二人と同じで、ポジティブな大輔しか想像していなかった。だから本当は不安でいっぱいだったとか悩んでいたことにきづかなかった」

美容師を言えば独立してお店を出す人が多いとは聞いたことがある。前に調べたときも全国に美容室は25万件ぐらいあるほどお店を出している人は多い。それでも独立してお店を出すとなると当然お金もかかるし、お客さんお来てくれるかもわからない。他にもお店を出すとなるといろいろな不安があるんだろう。山田さんはその不安な時期を乗り越えて今があるといった感じなのは想像ができる。

「だから不安を抱えていることを知ってからは、できるだけこの人のことを支えようと思っていた。でも、いつの間にか不安を感じさせないぐらいになっていて、数年たったら今みたいにポジティブ山田ができあがっていた。オープンして1周年のタイミングでプロポーズされて現在って感じ。でもこのお店は人に恵まれていたと思う。もちろん大輔の力が大きいのは認めるけど、美容業界って名店から独立した人でも閉店してしまうぐらい競争率の激しい業界なの。その中でここまでやれているのはお客さんに恵まれて、その期待に大輔が応え続けているからで、私は普段は言わないけど大輔のことを本当に尊敬しているし応援しているし一番のファンなの。ってなんか語ってしまってごめんね」

美春さんは本当に素敵な奥さんだなと率直に思った。

隣では敬都が少し泣いているのは多分気のせいだと思う

前にテレビで旦那にしたくない職業で美容師はランクインしていたし、自営業はサラリーマンや公務員に比べても旦那に選びたくない人が多いらしい。

その中で美春さんは山田さんを支えて応援している。山田さんは美春がいたからこそ今も山田さんがあるんだろう。

将来のことはわからないけど、俺にとっては愛がそうあってほしいし、愛にとって俺がそうゆう存在であればいいなと思う。

「ちょっと敬都。なんで泣いているの?」

「なんか山田さんと美春さんの関係が素敵すぎて」

「嬉しいけど、泣くほど???」

「すいません。僕もいつか美春さんみたいな方と結婚したいです」

「あらそれは嬉しい。なら私は大輔と別れて敬都と結婚しようかな。最近扱いが雑になってきているし」

「おいおい。誰が誰の扱いが雑になっているって?」

「あら大輔。お客さん終わったの?」

「終わったから裏に来たんだ。なんで敬都泣いているの?」

「なんか美春さんに山田さんとの昔話を聞いて涙腺が崩壊しているらしいです」

「何を話したらこんな泣くの?」

「いや、私と大輔のことをそのまま話しただけなんだけど。。。」

「まぁこいつは感受性が豊なだけなんです」

「それならいいけど」

それから美春さんは差し入れを置いて先に帰宅した。

帰宅する際に「今度は家に遊びにおいで」と言ってくれた

敬都を泣き止ませたところで2人組のお客さんが来店した。

急いで表に出て挨拶をした

「いらっしゃいませ」

「こんにちは~~」

なんか聞き覚えのある声だった

急いで顔をあげるとそこには愛とさくらさんがたっていた

「えっ?」

裏からでてきた敬都も愛とさくさらんの登場に驚いて声がでなくなっている

「きちゃった」