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第3話

Author: キャッサバ
辰也は確かに広い心を持っている。

バレてからは、隠す手間さえ惜しむようになり、私の目など一切気にしなくなった。

彼は堂々と、安芸母娘への償いを始めた。

川沿いの高級マンションを買い与え、専属の運転手もつけた。

二歳になったばかりの娘のために、一生困らないほどの多額の信託基金を設立した。

彼は母娘を連れてディズニーランドへ行き、花火が最も美しく上がる瞬間、一枚一枚家族写真を撮った。

それらの光景はすべて、安芸がこれ見よがしに送りつけてくるものだった。

【奥さん。男の愛は、使った金額に比例するの。あなたはもう、ただの過去の人なのよ】

私はスマホの画面を消し、返信はしなかった。

心が死んでしまうと、かえって奇妙なほど穏やかになれる。

私は立ち上がり、使用人に命じた。

「彼の私物を全部捨てなさい」

辰也に属するすべてを、容赦なくゴミ袋へと放り込む。

彼に別の家があるのなら、ここに残されたものは、自分を欺くためのただの虚像に過ぎない。

聞きつけた安芸が、わざわざ嘲笑いにやってきた。

執事が門前で止めようとしたが、彼女は余裕の笑みで辰也のカードキーを見せた。

「私を止めるつもり?

誰に付くべきか考えなさい。クビになりたくないならね」

「通してあげて」

私の声は平板だった。

「満足?辰也はあなたのものよ」

安芸は鼻で笑った。

「そんな端金、大塚夫人の座に比べればゴミみたいなものよ。

本当に不思議。どうしてまだ耐えられるの?

ここまで追い詰められて、まだ離婚もしないでしがみつくなんて」

彼女は私の膨らんだお腹に視線を走らせ、口元に悪意の笑みを浮かべた。

「ねぇ……この子もいなくなっちゃったら、奥様としてのあなたの価値、一体どこに残るのかしらね?」

禍々しい悪寒が走り、必死に理性を保ちながら言った。

「……出て行って」

「出て行くべきはあなたでしょ?

自分の息子すら守れなかった母親が、どうして夫を繋ぎ止められると思うの?」

私が思わず手を上げようとした瞬間、彼女に手首を強く掴まれた!

「なに、手を出すつもり?」

彼女は力を込めて私の腹部を強く押した!

不意を突かれ、私は後ろに激しく倒れ込み、腰を家具に激しく打ちつけた。

下腹部に焼けるような激痛が走り、私は床にうずくまって冷や汗を流した。

安芸が這い寄るように耳元で囁いた。

「ねえ奥さん。一人目を『うまく』処理できたんだから、二人目だって簡単よ」

彼女は突然金切り声を上げ、泣き叫びながら人を呼んだ。

そこへ顔を強張らせた辰也が駆けつけ、私を抱き上げると車へと運び込んだ。

処置を終え、医師が厳しい表情で告げる。

「……峠は越えましたが、胎児の状態は極めて不安定です。絶対安静が必要です」

辰也は安堵のため息をつき、珍しく私に優しく接した。

「遥、ゆっくり休め。この数日は俺が付き添うから」

ベッドに横たわったまま、私は枯れた声で絞り出した。

「……秘書さんだった。彼女が、私を突き飛ばしたわ」

リンゴを剥いていた彼の手が止まった。

顔には心配も怒りもなく、ただうんざりしたような苛立ちがあった。

「遥」

彼は私を遮り、温度のない冷たい口調で言った。

「安芸からすべて聞いたよ。お前が嫉妬に狂って、彼女を陥れるために自作自演をしたんだってな。

子供の命まで利用して嘘をつくなんて……お前はどこまで冷酷なんだ?」

沈黙の後、辰也は残酷なトドメを刺した。

「……なるほど。

道理で、一人目は守れなかったわけだ」

そう言い捨てると、彼はドアを叩きつけるようにして去っていった。

私は声を失い、最後の希望が完全に消え去った。

突然、先ほどよりも強い激痛が走った。医療スタッフが慌てて駆け寄り、最後に無力そうに首を振った。

「……胎児の心音は……止まっています」

震える手で、そっとお腹に触れた。

あまりに巨大な悲しみが心の堤防を壊し、私は声を上げて泣き崩れた。

「ごめんね……ごめんね……

ママが守ってあげられなくて……」

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