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15-3.レイカはメンバにヒビキと会いに行く

last update Last Updated: 2025-05-30 18:00:58

 ウチらは二人を残して紫キャベツに戻って待ってた。しばらくしてセイラがシオネを置いて戻ってきた。

「ウチらね、こうやってシオネやココロに血をあげてるの」

そうだったんだ。

「怖くないの?」

セイラの首、血がついてるよ。

「友だちだもん。それに、ネズミやカエルとか襲ったりしないで、少しは人間らしい生活して欲しいもん。……死んじゃってるのに、可笑しいよね」

セイラ泣き笑いしてる。オカシクないよ。それと、セイラの首、血がついてる。

駐車場にシオネのユニホーム姿はもうなかった。

「シオネ、どこに行ったの?」

「戻るところ? シオネには戻るところがないの、家が火事になったから」

ウチ、それ知らなかった。

「空き家とか、森の中の暗いところとか探して隠れてる。でも、どうにもならない時は土に潜ってるみたい」

「シオネの髪の毛、パサパサだったのって」

「あ、あれは、もともとだよ」

「リンスとかしないでいつも洗いっぱなしだったじゃん」

そうだった。試合相手から辻女のトロール人形って言われてた。

「一度、死んじゃうと、その後は何をしても体は変わらないって」

そうなの?

「レイカはどう思った?」

セイラ息が苦しそう。それと首に血がついてる。

「なんか、悲しかった」

セイラは血がついてる。

「それだけ?」

「ウチ、じっと見ていられなかったから」

セイラの血が気になって。

「セイラだってそうだったよ。でも何回も何回も、ミルク、あ、ごめん。セイラたち、これのことミルクタイムって言ってるんだ」

「ココロもシオネも、ウチらにすがってくる感じが、赤ちゃんみたいなんだ」

カリン照れてる。わかるよ、ゾンビの姿してても二人にとってははそうなんだね。それなら二人は、ココロとシオネのおかーさんじゃん。ウチも欲しいな。セイラの血。なーんかあちーな。この車はよ。話題変えよ。

「なんで金髪にしたの?」

「これ? これは、セイラだってすぐわかるように」

「声をかけても、通りすぎちゃうことあるから、どうしたらすぐ気付いて
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    ギー。ロッカータンスが開く音。そこから出て来たのは通学靴。グレイのプリーツのスカート。赤黒い血のついた辻女の夏服。顔面蒼白で金色の瞳、四本の銀牙が唇を突き破ってその先から血の色のよだれが滴っている。でもそれは、たしかにココロだった。「子ネコ」は名前を口にしないためだったかも。屍人は名前を呼ぶと襲って来るから。「カリン。ココロだよ。ウチのことすき?」「すきだよ。生きてるとき言ってあげなくてゴメンね」 ココロがカリンに近づいて、少し体をかがめてカリンの首筋にゆっくりと口を持って行く。歯を立てているように見えないのはなぜかな。カリンが鼻をすすった。カリンがココロの制服の襟首を少し開いて、二つの穴を見せてくれる。シオンのと同じ二つの穴。ココロがくねくねしだした。「ココロ、脇の下弱点だったでしょ。今は他の場所は何しても感じないんだけど、脇の下だけはこうなんだ。かわいいでしょ」 うん。ココロかわいい。喉が小さく上下してるのも赤ちゃんみたい。「おかしいな。いつもはこれくらいで自分から放すんだけどな」「カリン。ココロってこんなミルクの飲み方?」 そういえばシオネの時とずいぶん違うように見えた。「ほんとだ。目を開けてる。今までこんなことなかった」 ココロは焦点の定まらない目できょろきょろと、あちらこちらに視線を飛ばして落ち着かない様子。「入口に何かいる? 音がするみたい。レイカ見える?」 うん。いるよ。改・ドラキュラが。ココロあいつが分かったんだ。改・ドラキュラ、近づいてきた。こっち降りて来る。くそ、ウチだって、ザ・デイ・ウォーカー。って、何ができるんだっけ。いいや、適当に戦えば、何とかなるっしょ。あれ、逃げてくよ。この間は、ぐいぐい迫ってきたのに。変なの。カーミラ・亜種じゃないから?「セイラ、ゴマすって」 セイラがゴリ……。え? セイラ倒れた。限界だったんだ。「レイカお願い。ウチもたないかも」 スリ鉢、割れちゃってる。どうしよう。そうだ、スマフォ。セイラのスマフォにゴマスリの音が。どこ? ポケット。カバン。あった。あれ? こ

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     御仕度中。(ヒビキ)カリンと(ユサ)セイラから呼び出されたから。体育館裏に。じゃなくて、モールの駐車場に来てって。よかったよ、ヴァンパイアでも鏡映るって。本性現した時だけ映んなくなるんだって。〈保護色のごときものか。肉食獣が獲物を狙った時に対象の視界から消えてなくなるような〉あー、うっさい。あんた少し黙ってくんない? トリマ、メイクできてよかった。でも、ネイルだけはちょっと困ってる。なっが、この爪。尖ってるし。これじゃ、せっかく買った新製品、キラキラ黒曜石ブラックもすぐなくなっちゃうね。困るな。ヴァンパイア用のネイルって売ってんのかな。今何時? あー、いよいよこのスマフォだめだね。ガラケー、ガラケー。 モール遠かった。カリンの紫キャベツは。あった。タンクトップの肩が見えているのはセイラ。ゴッ、ゴゴッ。来たよ。セイラ驚かしちゃった? ゴメンゴメン。ウイィ。車の窓、もちっと開けてくれないと話しづらい。「レイカ、ウチら友だちだよね」なに! そぃう展開?「ウチらのこと、襲わないでよ」何だ、そぃうことか。「襲うわけないじゃん」後ろ、失礼します。あれ? バスケのボールがゴロンって。もっふもふのシートカバーは? 「血だらけだったから、捨てた」そ、なんだ。カリンがバックミラーで何かを探すようにしてから、こっち向いて、「大丈夫なのかな」こっち見てたセイラが、わざわざバックミラーをのぞいてからまたこっち見て、「うーん。わかんない」なに? このアウェー感。「カリンたち、いつから気付いてたの?」「レイカがヴァンパイアってこと?」「『R』ゲットした日あたりかな」そういえば「この人たち」とかって言ってた。「でもこの間はまだ鏡に映ってた」「じゃあ、青墓の杜でカレー☆パンマン被せたのは?」「映んないかもって」「あの時は助かった。カーミラ・亜種一撃だった」「そうそう」そうそう、じゃないしょ。「レイカ。ヴァンパイアになるってどんな気

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