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第1053話

Author: 落流蛍
広報部長は言った。「了解しました」

華恋はようやく電話を切った。

広報部長はスマホを握りしめ、しみじみとため息をついた。

前回の奈々の件のときから、彼女は華恋が情に厚く義理堅い人だと感じていた。

今回の栄子の件で、その思いはさらに強まった。

彼女は華恋の友人ではないが、友人にここまで誠実な上司なら、部下にも決して冷たくはしないだろう。

運転手は、華恋が電話を切ってしばらくしてから、おずおずと声をかけた。

「社長」

華恋はこめかみを押さえ、「もう一本電話をかけるわ」と言った。

そう言って、彼女は時也に電話をかけた。

すぐに相手が出た。

「時也、今時間ある?一緒に買い物しない?」

椅子の背にもたれかかる華恋の声には、深い疲れがにじんでいた。

彼女は誰を頼ればいいのか分からなかったが、頭の中にはすでにひとつの答えが浮かんでいた。

時也はすぐに、その声の疲れを聞き取った。

「分かった。今どこ?迎えに行く」

「私は……」華恋は窓の外の高層ビルを見つめながら、少し黙って、それから小さく笑った。

「私が迎えに行くわ。あなたはどこ?」

時也が場所を伝えると、華恋はその場所を運転手に渡した。

車は静かに動き出し、彼のもとへ向かった。

一時間ほどして、二人は合流した。

華恋の顔には、いつものように明るい笑みが浮かんでいた。

しかし時也の鋭い目は、その笑顔の奥にある疲労を見逃さなかった。

彼はすでに、小早川を通して栄子と港の件を知っていた。

だが、何も言わなかった。

穏やかな足取りで華恋に近づき、「行こう」とだけ言った。

華恋は彼の仮面を見つめた。

「その格好のままで一緒に買い物するの?」

「うん」

「でもそれ、すごく目立つわよ。きっとみんな見るわ」

時也はもともと際立った容姿の男だ。

そこに仮面までつければ、注目度は二百パーセントだろう。

華恋は、そんなに目立つ買い物なんて絶対にしたくなかった。

時也は少し考え、静かに言った。

「街の人と関わらなければ、誰も見ない」

華恋は瞬きをして、「どういう意味?」と首をかしげた。

時也は微笑を浮かべ、「行こう、車に乗って」と言った。

そう言うと、運転手に視線を向けて車から降りるよう示した。

運転手はきょとんとしながらも、言われた通り車を降りた。

数秒後、目の前の車がその
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