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14、今日は帰してあげない

last update Última actualización: 2026-01-29 20:00:00

「私に空良補給させて」

「何それ」

「ふふふ、空良を抱きしめたり、結界玉をあげたり、甘やかしたりしたいって事だよ」

 ——何だ、いつもの戯れか。

 ガッカリしたような安心したような何とも言えない気持ちになる。それでもまだその行為たちにも慣れないのだけれど……。

「僕の心臓持つかな」

 諦めにも似たため息が溢れた。

 白月に触れられると心音が上がって落ち着かない気持ちになる。

 座ったまま横抱きの体勢に変えられ、こめかみや頬に唇を落とされた。目が合う度に微笑まれると身体中の血が沸騰しそうだった。

 ——ムリだ。やっぱり慣れそうにない。

 美人は三日で飽きるなんて嘘だと思った。白月の綺麗な顔に微笑まれると何かに心臓を撃ち抜かれたような衝撃がくる。飽きるどころか慣れる気さえしないし、毎日毎日一発で陥落させられている気がした。

「これにも慣れて欲しいな」

「ごめんなさい。ムリです」

 即答していた。

「あーー! また敬語〜。私……今日は特訓しない」

「……え」

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  • ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される   21、なんで……っ

    ——何いまの? 辺りを見渡しても気が付いている人物は誰一人いない。 これって……。白月と初めて出会った時みたいだ。 心臓がドクリと脈打った。 『空良』 耳馴染みの声が聞こえてきて、また周りを見渡した、白月の姿はない。 『空良』 ——え? やっぱり白月!? やはり白月の声が聞こえた気がして周りを見渡す。しかし、どこにも白月の姿はない。もう一度ため息をこぼす。 ——幻聴まで聞こえるなんて、本当にダメだな僕は。 鞄を手にしてタイムカードを切ると、また空気が脈打った。 『空良』 「白、月? 本物?」 思わず声に出してしまい、誤魔化すように口に手を当てる。 『そう。私……』 ——え? 何で? 『ちゃんと話がしたい』 「ごめん。僕には……何も、話す事はないよ」 誰にも聞き取れないくらいの小声で言った。 『一方的でごめんね。空良が来るまでずっと待ってる』 「僕は……会いたくない」 声が震えた。 ——嘘だ。会いたくて会いたくて仕方ない。 『うん、いいよそれでも。どれだけ月日が経っても、会ってもいいって空良が思えるようになるまでずっと待ってる』 脈打っていた妙な空気の捩れがなくなって、いつもと変わらない空間に戻った。ギュッと握り拳を作る。 ——五百年も待ってたのに、何でまた待つなんて言えるの……っ。 不覚にも泣きそうになって、水で膜を張っている視界をどうにかしようと手で瞼ごと押さえつけた。 早歩き気味に会社の出入口に進んで扉を潜った瞬間走った。もう通い慣れた道を行き、白月のいる神社に向かう。 白月に会う事ばかりを考えていて、いつもみたいに誰かに見られていないか確認するのを怠ってしまった。

  • ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される   20、危機

     *** 次の日もそれは続いた。ただ会社の中では素知らぬフリをされたので、不思議に思いながらも仕事をして、他の社員と交流を育む。 今日は充実した日を送れ、アパートに帰ってからも気分よく過ごせた。 こんなのは白月といた時以来だ。そこまで考えて、また白月との時間を思い出していた自分を叱咤するように頭を振る。「ダメダメ、忘れるんだろう?」 自らに言い聞かせるように声に出して言うなり、テーブル席で頭を抱えた。 ピンポンと来客を告げるインターフォンが鳴り響く。最近通販もしていなければ両親から訪問を告げる連絡も来ていない。 訝しげに思いモニターを見ると、そこには配達員の制服を着た男が立っていた。『はい』 応答するとやはり『宅配便です』と言われたので『どこからの配達ですか?』と尋ねてみた。この手の詐欺が多いのを知っていたからだ。『え、と。宛先と同じ月見里となっていますね』『今開けます』 母親が送ってくれたのだと思い、扉を開く。しかしそこには伊藤とその他見た事のない男三人がいるのが分かって、すぐに扉を閉めかけた。扉の隙間に靴をかませられて閉じられない。「何なんですか! 出ていって下さい!」「てめえ、最近マジで目障りでムカつくんだよ! ヘラヘラしやがって気持ち悪ぃ」「ストーカーしてまで張り付いてくる貴方の方が気持ち悪いです!」 ハッキリ告げると取り巻きの三人の男が笑った。「何伊藤、お前こんな奴のストーカーしてたわけ?」「うるせえ」「いかにもな可愛い系じゃなくて、志島尊留みたいな美人ならオレらも大歓迎だったのによ」「つっても山ん中置き去りにしちゃったから今頃もう……、なあ?」 下品な笑い声が響いていく。 ——山? 置き去りって……嘘……何それ……もしかして……。 嫌な想像しか出来なくて怖くて堪らなかった。手が震えてくる。「ほら、お前がいらん事言うから怯えちゃってるじゃん」 自分の部屋に入られてしまっている時点でもう詰んでいる。外に逃げ出そうとした瞬間に捕えられて両手を引き抜かれたベルトで拘束され

  • ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される   19、ちゃんとありがとうとサヨナラを言いたくて……

    *** 平日は仕事に行って、そのまま家に帰宅して……と白月と会う前の生活に戻って一週間が経過した。 もうこのまま会うつもりはない。重い気持ちのまま日々を送っている。想いは膨れ上がるだけで、無くなってくれないものの、どこか納得している自分もいた。下手にもう会わないと決めて、さよならを告げていれば白月を傷付けていたかもしれない。それならまだ自分が傷付いた方が良かった。 ——これで良かったんだ。 仕事から帰ってきてシャワーだけ浴びて食事も採らずに自室に篭る。 ——最後にちゃんとお礼は言っておこう。 そう思って、家を出るなり神社に行った。すっかりと帳の降りた神社は暗闇に包まれている。 周りを見渡して誰もいなくなったのを確認した ポツポツと雨が降り始めてすぐに土砂降りになってしまう。木陰に入り込んで直接の雨の衝撃を幾分か和らげた ——白月と会った時もこんな雨の日だったな。 フッと表情を緩める。 雷鳴と共に稲光が夜空を走り抜けていくのを視線で追いかけた。その中で一本の光だけが天に向けて駆け上って行ったのが分かって、つい視線で追う。その光がどこか白い龍のようにも見えて目を瞬く。 ——白月? どうしてなのか、白月なのではないかと思えたが、白月の本体は見た事がない。 確信も持てなくて視界から光が消えるまで追い続けた。遠くでまた雷鳴が轟く。早くしなければ……。 気が急いてしまうものの、いつものわらべ歌ではなく言葉を発する為に口を開いた。 もしかしたら、わらべ歌を口にしなければ届かないかもしれないけれど、面と向かって泣かずに言う自信がなかった。 「勇気を出すのに……時間がかかっちゃった。まだ顔を見て話が出来る強さが僕にはないから、このまま言わせて。僕は……白月と会えて良かったよ。白月がいなかったら僕は今も会社にいるドムたちにいいように扱われたままだった。白月……今まで本当にありがとう。でももうここへは来ない。サヨナラ」 踵を返して帰路に着く。心は重いままだったけれど、お礼を言う前よりはいくらかスッキリしていた。 ジャリ、と小石を踏む音がして視線を向けると二十メートル離れた後方に男性の影が見えた気がして息を呑む。 ——伊藤? まさかとは思いながら、相容れない雰囲気とシルエットがどうしてもその男は伊藤だと

  • ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される   18、壊れるとき

     ——あれ? そういえば……。 別の疑問が脳裏を掠める。 妖は征服欲が強いと言っていたのに白月は平気なのだろうか? 通常のプレイはあれっきりしていない。 自分が体調に異変をきたしていただけに、白月もそうなんじゃないかと今更ながら気がついてしまった。 これが最後になるかもしれないのだ。せめて最後くらいは白月の役に立ちたかった。「ねえ、白月……」「どうかしたの?」「あの、僕……」 一度言葉を止めておおきく深呼吸する。「今日は特訓じゃなくて、白月とまた普通のプレイがしてみたいんだけどダメかな?」 白月が大きく目を見開いたまま固まっていた。 ——あ……しまった。欲張り過ぎたかな? それとも自分から誘うなんてはしたないと思われた? 逃げ出したいくらい恥ずかしくなってきて「ごめん、忘れて欲しい」と慌てて撤回の言葉を口にする。「違うよ、空良。プレイは嫌じゃない。ただ、またプレイしてしまうと自分の衝動を抑え切れる自信がなくて……空良に手を出してしまいそうなんだよね。私はドムだし空良に怖がられるのは堪える」 困ったように白月がはにかんだ。「手を出すって……」 そこまで無知で純情ではない。言葉の指す意味くらいは理解している。性的対象として見られていると知り、気恥ずかしくて顔に熱がこもっていくのが自分でも分かった。「正直に吐露してしまえば、今も触れたくて、空良を家に帰したくなくて必死で堪えているくらいなんだ。特訓の為とは言え、コマンドに耐える空良は余りにも可愛過ぎて……。こう支配欲を煽られるというか。でも気分が高揚した時の私たちの言葉は本当に強いから怖がらせたくない。ドムに慣れるように始めたこの特訓が、私のせいで無意味な物になるかもしれないから今は怖い、かな」 顔が熱い。白月にずっとそんな欲求を抱かれていたというのは今初めて知ったから、返答に困ったのはこちらだった。 ——もしかして今までの触れ合いもそういう意味合いだったのかな。 嬉しいやら恥ずかしいやら照れ臭いやらで思考が回らない。「私以外とはプレイして欲しくないと言ったけれど、空良にはドム嫌いという苦手意識を克服して貰って

  • ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される   17、スイッチとして目覚める

     急激な異次元空間移動についていけなかった。妖によって移動方法が異なるのだと初めて分かり、普段白月がどれだけ自分に優しかったのかを思い知らされてしまい自嘲するようにまた笑んだ。 フラフラする体を懸命に支えるも上手くいかない。完全に目が回っていて、庭先で倒れてしまった。「おい!」「わ、空良!」 目の前でカメラのシャッターを連続できられながら、高速回転機に乗せられたような気分だ。 ——ダメ……気持ち悪い。 意識が飛んでいった。「う……ん」 気がつくと布団に寝かされていて、真っ先に白月の顔が視界に飛び込んでくる。今にも泣き出しそうなくらいに眉根を寄せていた。「空良、気がついた? ごめんね、このバカ獅子が」 白月の背後から神楽が顔を出す。大らかな様子で苦笑される。「ごめんごめん。いつもの癖で……。まさか人の子がこんなに酔いやすいなんて思わなくてよ」「いえ……平気です」 もう気分も落ち着いていて体を起こすと、心配そうにしている白月と目があう。「本当に大丈夫だよ、白月。そんな顔しないで」 微笑んで見せた。 ——まだ決断が出来そうにない。 こんなにも必死になってまで心配してくるこの心優しい妖を手放さなければならないと思うと、直に心臓を握られたように痛くなった。 *** 神楽と白月についての話をしてから二週間は経っていた。未だに答えを出せずにズルズルとここまで来ている。 会社を出てまた白月に会う為に神社へと向かう。 ——僕はどうしたらいいのかな? 道中ずっと自問自答ばかりしていた。 白月の事を考えるのなら離れるべきなのは分かっているけれど、手放す勇気が出ない。いや、手放したくない。何て自分勝手なんだろう。自分の事が嫌いになりそうだ。 神社までもう少しという距離だった。突然膜に包まれたような妙な感覚に陥り、足元に落としていた視線を持ち上げるとそこには跪いたまま足蹴にされている青年がいた。 足蹴にしているのはいつも会社で己に命令していたドムたちだ。鬱憤を晴

  • ドム嫌いの人間サブは妖ドムに盲愛される   16、神楽という男

    「私?」「うん……綺麗。白月……綺麗。瞳の色も綺麗……好き。白月、好き」 意外な答えだったのか白月が目を見開いたまま固まっている。かと思えば微かに頬を染めて袖口で顔を隠してしまった。嫌だったのかな? 気分が急降下してきて、どんどん不安になってきた。「あの……ごめんなさい。もう言わない……から」 拒絶されたのだと思って悲しくなってくる。「違うよ、空良。照れただけだから気にしないで。——ちゃんと言えて偉いね空良」「本当に? 怒ってない?」「うん。私が空良に怒るなんて事はないから安心していいよ」「良かった。白月……あの……」「言っていいんだよ。——教えて?」「もっと……欲しい。白月からのコマンド……もっと欲しい。白月の……気持ちいい」 頭の中がフワフワしていて、訳が分からなくなってきていた。酩酊状態に似た感覚に足元さえ掬われそうになりながら、空良は白月に向けて微笑んでみせる。「私の理性がぶっ飛びそうなくらい可愛いんだけどどうしよう。主語抜かしは危険だよ空良」 目頭に手を当てて白月は俯いた。「しらつき?」 ダメな答えだったのかと、空良の表情が曇っていく。「ううん、こっちの話だよ。——おねだりできて偉いね」 空良の表情が蕩けて、熱と欲を孕んだ。座った状態で体が揺らぎ、畳の上に倒れ込む。少しのコマンドで満足したのか、空良はそのまま寝入ってしまった。「理性が飛ぶ前で良かったかも。久しぶりの空良は格別だった……」 空良の体を横抱きにして、布団の上に寝かせた。その隣にもう一組布団を敷く。普段であれば一緒の布団で寝るが、今日だけは平然と寝られる気がしなかった。 *** それから数日経った頃だった。 神社の鳥居を潜り歩いていると、正面から大学生らしき男が歩いてきて足を止めたのが分かって同じように足を止めた。しかも食い入るように見られている。 ——誰? 知り合いじゃないよね? やたら整った綺麗な顔をした細身の男に瞬きすらせずに見られていた。 ——この人ドムだ。

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