LOGIN「お父様は出掛ける前に、ダンジョン調査に行ってくると言っていたのよ。ほら、ダンジョンって魔獣が出たり罠があったりするらしいじゃない?だから心配で」 ルヴィの言葉に、だから少数精鋭で向かう必要が有るのかと納得したレイ。 ダンジョン内なら、大人数で向かったとしても寧ろ動き辛くなる。 そう判断しての采配かと、感心していたのだが。「嘘……」 そう言って、思わず立ち上がったのはフィオ。 ランシュの方も、珍しく驚きの表情を浮かべていた。「ど、どうしたの2人共?ダンジョンに行くのが、そんな不自然な事?」 レイが宥める様に言うが、フィオは聞こえていないのかルヴィに詰め寄る。「ダンジョン?ダンジョンって言ってたの!?本当に!?」 その気迫に押されながら、ルヴィは答える。「え、えぇ……確かにそう言って……」「嘘だよ!だってこの大陸に、ダンジョンが有る筈が無い!」「え?」「フィオ?それってどういう……」 困惑するルヴィとレイを目の当たりにして、ようやく落ち着きを取り戻したフィオ。 座り直して深呼吸し、混乱している2人に語り出す。「2人は勘違いしているかもだけど、実はダンジョンってそんなに数は多くないの。だから私達もここ、北大陸に来た事は無かった」「そうなの?」 レイの問いに頷くフィオ。 そこで今度はルヴィが疑問を投げ掛けた。「で、でも……ダンジョンって誰がいつ作ったか分からないんでしょ?一説には、この星が生み出してるんじゃないかっていう説もある位だし。いつの間にか出来てるなんて事も有るんじゃない?」 しかし、今度は首を横に振り否定するフィオ。「ダンジョンはそんなん|
話は纏まったという事で、早速場所を移動するレイ達。 道中でもルヴィは沢山の住民に声を掛けられていた。 本当に、住民からの人気は高いのだろう。「ここが私の家よ」 そして歩いてほんの少しの距離。 船を降りた直後からでも見えていた、一際大きい屋敷へと案内される一行。 そこで何人かの召使いに出迎えられた。「おかえりなさいませ、お嬢様。そちらの方々は?」「ただいま、こちらは私の友人達よ。例の件はこの人達に手伝ってもらうから、もてなしてあげてちょうだい」 そうしてルヴィは数人に指示を出した後、レイ達に屋敷内の案内を始めた。「3人ならここの部屋を使ってちょうだい?それとも1人1部屋にした方が良いかしら?」「いえ、このままで良いわ。ありがとう」「そう?何かあれば屋敷の者に遠慮なく言って。必要な物とかも可能な限り用意するから」 案内された部屋はかなりの大きさを誇っており、3人が過ごすには十分な広さを有していた。 信用していない訳では無いが、バラバラにされると有事の際に動き辛くなる。 レイはルヴィの提案を断り、その部屋に荷物を置くのだった。「じゃあお互い急いでいる様だし、早速で悪いけど話をしましょうか。付いてきて」 それを確認したルヴィはそのままそう言い残し、部屋を後にする。 レイ達も疲れは残っているが、悠長にしていられる訳では無い。 特に反論することも無くルヴィに従い、部屋を出た。「ここよ。まずは座って?今お茶を用意するわ」 通されたのは、とある大部屋。 内装を見る限り、どうやら応接室として使っている部屋だろう。 そこに、先程の召使い達数人が控えていた。 各々が用意された椅子に腰掛けすぐ、部屋がノックされ召使いがお茶を持って現れる。 全員に行き渡り一息ついたところで、改めてルヴィが話を切り出した。「実は人探しを手伝ってほしいのよ。もちろんさっき言った通り、協力してくれるならこちらも援助はするし、報酬だって支払うわ」
「レイ!本当にレイなのね!?久しぶり!なんでこんな所に?」 お互い予想出来なかった再会に、レイの手を握り大はしゃぎするルヴィーネことルヴィ。 レイも同じく内心では歓喜していたが、それと同じ位に困惑しており、思わず口を開いた。「確かに久しぶりね。一目見た時分からなかった……」 そう言いながら改めてルヴィを見ると、ここ数年でかなり大人びた様に思える。 顔立ちは大人の女性という感じに育ちつつ、以前からあった可愛らしさはしっかりと残っている。 どちらかと言うと、綺麗というより可愛いという表現が似合う、そんな印象を受けた。 レイが可愛いよりも綺麗という印象を受けがちな顔立ち故に、それが少し羨ましく感じるのだった。 しかし何よりも羨ましい、いや、寧ろ妬ましく感じるのはその豊満に育った胸だ。 レイも決して小さくは無いのだが、ルヴィと比べると明らかに格差が見受けられる。(でも常に彼女達を見てるからか、そこまで驚きはしないわね) 内心でそう独り言ちて、横目でランシュとフィオを見るレイ。 族獣人だからか、ランシュはレイが出会った女性の中で2番目にスタイルが良く、フィオは人族森故に顔立ちがとても良い。 お陰で、美少女に対する耐性が付いていると自負していた。 まぁ、レイ自身もその美少女の内に入っているのだが……「レイ?」「あ、あぁごめんなさい。あまりに綺麗になってたから思わず見惚れちゃったわ」 しかし自分には無い物には目を惹かれるのが、人間の性というものだろう。 思わず胸に視線が釘付けになっていたレイが、ルヴィの声で我へと帰る。「と、突然何言い出すのよ。美少女が言ったところで皮肉にしか聞こえないわ」 いきなりの賛辞に思わず照れつつ、レイをジト目で見つめ返すルヴィ。 隣の芝生は青いという事だろう。 ルヴィもレイに対して、嫉妬の感情を抱いていたのだった。 そんな些細な事に少し嬉しくなりつつ
最悪の想像に反して、3日後。 天気は今までの荒れ模様が嘘の様に晴れ渡り、無事に北への船が出港した。 レイ達3人は予定通り早朝の便に乗り込み、その日の夕方頃、セプテリオ大陸へと辿り着いたのだった。 現在は北の玄関口と言われる唯一の港町、そこに存在するギルドに居た。「えっと……今居るこの港町を含む、北の大部分を治めているのがノスエラ王国なのよね?そしてその周囲に数か国が存在しているという状況が、今の北の情勢と」「そうだね。だからアタシ達はとりあえず、ノスエラ王国の王都を目指す形になるかな」 ギルドに備え付けられているセプテリオ大陸の地図を眺めながらレイが言い、フィオがそれに同意する。 ノスエラ王国。 遥か昔に北のほぼ全てを掌握し、今尚その統治が続いている大国。 この港町を含め、北の主要な場所はほぼノスエラ王国が支配していた。 更に北のほぼ全ての小国とも良好な関係を築いており、実質セプテリオ大陸の全てを手中に治めていると言っても過言では無い程の王国である。「という事は、あの遠くに見えたお城まで行かなきゃいけないという訳ね……この雪の中だと、結構時間が掛かりそうね」 そう言ってレイは、船から降りた直後の事を思い出す。 目の前に広がったのは港町の喧騒。 そして、その遥か後方に立派に聳え立つ王城が見て取れる。 更にその背を守る様に、城よりも遥かに大きな山脈が並んでいた。(この地図を見る限り、あの山々が北大陸の最北端なんでしょうね。なるほど。確かにあの天然の防壁があれば、後方からの奇襲を警戒する必要も無い訳ね) 地形を利用しながら、最適な場所に王都を置く。 過去のノスエラ王は、確かに賢王だったのだろうとレイは想像する。 しかし、今はそれが仇となった。 現在、レイ達が居る港町は北大陸の南端。 そこからほぼ北端まで縦断するとなると、かなりの時間を要するのは一目瞭然。 幸い、目視出来る事から、北大陸の面積はそれ程大きくは無い。
アーゼストには大小様々な大陸や島が存在する。 その中でも中央に位置し、最大の大きさを誇るメディン大陸を基点とし。 1番西がズィーア大陸だとするなら、今レイ達が目指している大陸は1番北の大陸であった。 名をセプテリオ大陸。 通称、北や北大陸と呼ばれる地である。 特徴としては、人類が生活している中で最北端の場所であり、更に大陸の北側は険しい山々が連なっているという点が挙げられる。 しかし最大の特徴は、常に雪が降り続けるという所だろうか。 その所為で、昔から他の大陸との交易は薄くなり、更に大陸内でも閉鎖的になりがちだった。 だが、今では1つの大きな国がこの北大陸をほぼ掌握し、他大陸の国々とも国交も進んでいる為、船の行き来は定期的に行われている。 しかしそれも通常の時であれば、という但し書きが付く。 だからこそ、レイ達はここで立ち往生を余儀なくされたのであった。「まさか2日間も船を出せないなんてね」 少し意気消沈した面持ちでそう言うレイ。 それに苦笑いしながらフィオが答える。「しょうがないよ、こんな天気じゃね……」 フィオの目線を追いレイも窓の外を見ると、そこは吹雪に覆われた景色が広がっていた。 強風で窓は揺れ、視界はほんの少し先も見えない程に悪い。 レイ達は今、中央から北へ渡る為の船を出している、港町に来ていた。 猛吹雪の中ようやく辿り着き、受付をしようとした所、2日は出せないと言われたのだ。 どうやら運悪く、雪が激しくなる時期に着いてしまったらしい。 まさか北大陸だけでなく、この中央まで影響が及んでいるとは、レイは想像もしていなかった。 毎年の事なので、周りの人々は慣れた様子で受付しているが、初めてのレイには何もかもが驚きの連続である。 そもそも嫌な予感はしていたのだ。 この港町に近付くにつれ、気温はどんどん下がり、終いには雪が降ってくるようになった。 始めは、雪を初めて見るレイもはしゃいでいたのだが、ここに辿り着く頃には、疲労困憊とし
デミーラ共和国での祭りを終えて、翌日早朝。 まだ日も登りきらぬ時間に、街を歩くレイ達4人の姿があった。 旅支度終えた一行が、次なる目的地へと移動していた為である。 何故一行がこんな朝早くから行動しているのか、それには訳が有る。 それは祭りでの事。 レイ達が再び旅に出ると、ディードが国民に口を滑らせてしまったのだ。 これに国民が猛反発。 国を救った英雄が早々に国を発つと聞き、祭りは一時騒然。 ディードの説得の甲斐あって反発は鎮静化したが、それでも見送りはさせて欲しいと多数の声が上がった。 これに、目立つのを嫌うニイルが難色を示した結果である。 流石に見送られるのは恥ずかしいとレイも反対した事から、逃げる様にデミーラ共和国を後にする事となった。 それを予期していたのか、ディードと腹心のベスタだけは見送りに来たのだったが。「それでも、ここまで徹底して逃げる様に去ると……何だか悪い事をしているみたいね」 「そもそも『柒翼』の存在そのものが裏社会の存在。それを追っているとなれば必然、私達も大手を振って旅をするのは難しいでしょう」 苦笑しつつ言うレイに、ニイルが答える。 確かにニイルの言っている事は一理有るが、事情を知らない者達からすればそんな事は関係無い。 国民一同が迎い入れてくれるだろうし、ディードも歓迎するだろう。 理由を上手くすり替えたな、と内心で呆れるレイ。 それを察知したのか、ニイルが半眼でレイを見る。 「どこにルエルの目が有るかも分かりませんし、時間を掛ければ奴が回復する機会を与える事になります。最初は貴女も焦っていたでしょう?」 「そうなのだけれど……だからってこんな風に居なくなっては少し可愛そうじゃない。それに、まだ船だって動いていない時間なのよ?これじゃどちらにしろ、時間に変わりは無いんじゃないかしら?」 ニイルの言葉に、レイも自身の考えをぶつける。 この国を気に入り、もう少し観光したい気持ちは確かに有った。 それ故にレイにしては珍しく、のんびりとした提案だったのだが、しかしそれだけが理由では無い。 レイの言う通り、まだ船が動いていないのだ。 これではどちらにせよ、船場で立ち往生を食らうのは目に見えている。 せめてもう少し遅い時間でも良かったのでは、と思わざるを得なかっ
遅れてやってきたニイル達一同が目にした光景、それは正しく死闘と呼ぶに相応しいモノだった。 レイとディード、両者共に満身創痍であり、最初の頃の高速戦闘では無くなっている。 しかし一瞬一瞬の鋭さ、瞬間的な速度は寧ろ増しており、少しの判断ミスが敗北に繋がる、そんな様相を呈していた。(まるで『前剣聖』を彷彿とさせるな。流石弟子だっただけある) その光景に、かつて出会った老人を思い出すニイル。 全盛をとうに過ぎた身体であった筈なのに、彼の振るう剣筋はニイルですら見切るのが困難だった程。 刹那に込め
段々と近付いてくる港の景色に、思わずため息を吐くレイ。 頭では理解していても、やはり無事に辿り着くまでは無意識に緊張していたのだろう。 心身共に、力が抜けていくのを感じるのだった。「あん?なんか騒がしくねぇか?」 しかし見慣れた風景だからこそ、ディードが1番に気付く。 港に居る人数と停泊してある船の数が普段より多く、そして慌ただしい。 急いでどこかに出立しようとしている、そんな雰囲気を感じられた。 何か問題が発生したのだろうか。 気が逸りそうになるレイだったが、呆れを滲ませたニイルの
「ハア……ハア……あっ……」 ケートスが完全に消滅したのを認識した瞬間、レイの意識は闇へと引きずり込まれた。 当然だろう。 ケートスからの攻撃に晒され続け、更に『神威賦与』、『雷装』、『電磁加速魔弾』、そしてその改良までも同時に行ったのだ。 いくらゾーン状態だったとはいえ、脳の処理限界はとっくに超えている。 当然ながら魔力も枯渇寸前で、体の内外全てで悲鳴を上げていた。 そんな状態で意識が有ったのは、ひとえに
「本当にそんな魔法あんのか?俺は魔法には詳しくねぇが、そんなのがあるならあの『傲慢』野郎が黙ってねぇぞ?」「残念ながら、その『傲慢』を追い詰めたのがこの魔法よ。だから威力も保証するわ」 ニイルから作戦内容を聞き、にわかには信じがたいと言うディードに、レイが反論する。 序列大会の時を思い出しながらレイが語ると、それに思わずといった様子でディードが吹き出す。「うはは!マジかよ!?そりゃあの腹黒もテンパったろうなぁ!その時の奴の顔を拝みたかったぜ!」 その様子に、ルエルの嫌われようを垣間見て笑みが溢れそうになるレイ。